夕刻の決戦の作戦
こうして両陣営とも夕方に向けて準備をするが、心身ともに休みなく動くプルミエ国に対し、フラハー国は形こそ立哨しているが、内面では休んでいる。
何よりも、午前中の戦果が違うため、大きく士気に影響していた。
両軍ともに予定していたとおり、夕方に慌ただしく両陣営が動く。
先に布陣したのはフラハー国である。
両翼に弓隊二百五十ずつ、その後ろに軽装騎兵各百をそれぞれ配置させ、本陣前にシークンド率いる軽装騎兵を百だけ配置し、残りの軽装歩兵を中央全面に配置する。
こちらの配置をみるや、プルミエ国もまた布陣を変える。
両翼にヴィータ国の弓兵を六百五十ずつ、本陣前にドルディッヒ王の軽装騎兵百、残りの重装歩兵五百を中央全面に配置する。
アールッシュ率いる近衛兵団が王の軽装騎兵の後ろを守り、本陣との間に入る。
これは、背後の森から万が一にも王が襲われないようにというアールッシュの希望による配置であった。
本陣には輜重隊、工兵が待機する。
両陣営ともに非常に似ている布陣だが、これにはワケがある。
数で勝るプルミエ軍は、兵科での不利、策略、戦略だけに注意し、相手の布陣を真似たのである。
弓矢には弓矢を当てる。
それぞれ両翼に正面から相対するようにする。
しかし、弓矢を紋章とするほどのヴィータ国弓兵である。
練度が悪かろうが、腐っても鯛であり、フラハー二百五十にヴィータ六百五十と圧倒的である。
フラハーの弓矢隊の前ならともかく、後ろに軽装騎兵が控えていようとも、数では勝る。
中央にしても、軽装騎兵百は同数であるが、フラハーは指揮官がいない軽装歩兵が七百弱、プルミエ国は元は王が率いる予定だった精強な重装歩兵が五百。
数では劣るが、兵科で勝るため、有利である。
近衛兵団を重装歩兵として、戦力として加算するのであれば、二百いるため、数でも負けというわけではない。
単純に、同じ者同士がぶつかるようにして、力技でねじ伏せる戦略なのである。
複雑ではなく、単純化して、足し算引き算を個別に有利に持ち込んでいく。
両翼の弓隊同士は膠着する可能性があるが、中央突破し、本陣を落とせれば関係ない。
この発想は決して間違いではなく、戦略としては正しい。
ただ、布陣は生き物である。
時々刻々と変化していくため、臨機応変に対応することが肝要であることを忘れてはならない。




