表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カンナグァ戦記  作者: 樹 琴葉
第二部 第二次プルミエ侵攻
108/205

スパツェロ、王の怒りを買う

 敵との距離が五十メートルになったころからスパツェロは指示を出す。


「よし!今だ。 狙いはつけるな。遠くへ飛ばせば自然とあたる。槍投げ、斉射ぁ~!」


突進する軽装歩兵が一斉に槍を投げる。


およそ半分も届かず、完全にフライングの指示だったが、半分は想定内だった。


威嚇が目的だったからだ。


先の朝美の投槍は七十メートルと女子最長記録に匹敵するが、改造した槍であり、若干の魔法付与がある。


一般の男性の兵の槍投げは五十メートルくらいが平均だろう。


届かないのも無理はない。


ただ、先の七十メートルが脳裏に焼き付いている敵兵が警戒し、ビビるには十分である。


気持ちと身体が回避運動に走り、矢を射るよりも避けることに集中してしまう。


届かなかったことに安堵し、矢を番える頃には、二本目の槍が飛んでくる。


その頃には立派に射程距離であり、数百を超える槍が弓兵に降り注ぐ。


最後にトドメとばかりに、三本目の槍も投げる。


一人あたり三本持たせていたため、七百の兵により二千本の槍が投げられたことになる。


面白いように軽装歩兵の槍が敵を打ち倒していく。





 スパツェロは作戦通りに動く。


作戦では、本来の接敵ラインに到達した後、第一撃目で届かなかった槍を拾って最後の投槍、あるいは最前列で動揺している敵を討ち取り、すぐに退却という手筈だった。


同士討ちになるため、両翼の弓隊からの矢は可能性として低いが、退路は別である。


また、弓矢隊の奥にはドルディッヒ王がおり、軽装騎馬隊が控え、その奥には主力となった重装歩兵がいるのである。


突出すると、反撃があるため、ほどほどで撤退する予定だったのだ。


無事に作戦通り接敵ラインに到達すると、地面に刺さった不発の槍を取って、投げる。


スパツェロは奥にドルディッヒ王の姿を確認し、王に向かって投槍したのである。


まさか届くともあたるとも思わず・・・・・・


ドルディッヒ王も、目の前で弓矢隊が槍の嵐で無残に散っていくのを見て、怒りのボルテージが上がっていたところに、スパツェロの放った槍が兜をかすめ、弾き飛ばす。


遠目でスパツェロと目が合うと、怒髪衝天。


「おのれ!! ムシケラがぁ!!!」


単騎で駆け出し、スパツェロに襲いかかる。


スパツェロは恐ろしい形相で迫ってくる王に腰を抜かし、尻餅をついて固まる。


かろうじて、声を張り上げ、指示を出す。


「て、撤収! 撤収だぁ」


しかし、腰が抜けて動けない。


回りの部下達が、引きずるように移動させるも、鬼気迫るドルディッヒ王に恐れをなし、皆が一度距離を取る。


馬上から容赦ない槍の斬撃が振り下ろされるが、かろうじて初撃は腰に佩いていた剣ではじく。


駆けつけた周囲の部下達が盾になるも、槍で払われて弾かれていく。


ドルディッヒ王の怒りはすさまじく、激しい槍の突きがスパツェロを襲う。


身体を捻るようにして避けるも、大腿部、ちょうど内股のところに深々と槍が刺さる。


すぐに抜かれ、大量の出血があたりを染める。


ちょうどその時、軽装騎馬の後ろにまたがったアールッシュが来て、王を引き留める。


「ドルディッヒ様、危険です。単騎での突出はおやめください。一度立て直しましょう!」


そういって、怒り治まらぬ王をなだめ、堂々と自陣に戻っていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ