アルラを探して
「ここだな。」
マサトーナに教えてもらった、部屋は案外簡単に見つかった。
本来はSクラスの女子生徒以外、ましてや教職員でさえ、許可がなければ入ることは許されない。
まぁ、理由は、ここに下宿してるのが貴族や王族といった大物の娘だからだろう。
年頃の男女は何が起こるかわからない。小説でよくある、禁断の関係とかお嬢様方は憧れそうだ。
しかし、そんな不名誉な事を許すわけがない。一族の代表として、しっかりしなさいと叩き込まれてるだろう。
でも実際には、戦略結婚の時に有利にする為なのがほとんどなんだが……
彼女らも彼女らなりに大変なのだろう。
ここは、ある意味独房に近い。
そんな中に、放り込まれた一人の狼。酒池肉林のハーレムが出来そうだ。
「……は!? 何考えてんだ俺は……」
いかんいかん、何のためにここに来たのだ。
さっきから、ドアの前で立ってるだけでノックも何もしてないじゃないか。これでは、ただの不審者だ。
コンコン!
「おーい、アルラ!!俺だ、カズトだ。」
…………
扉を叩いても、返事がない。もしかして、部屋にいないのか?
途中であったSクラスの女子生徒にアルラはどこに行ったか尋ねたら、部屋に入っていくのを見たと教えてくれた。
最初は、「何よあんた。」見たいな事を言われたけど、マサトーナさんの使いですと、証拠の書類を見せたら、慌てて教えてくれたのだ。
「おーい、誰かいませんか!!」
ゴンゴンゴン!!
さっきよりも、強めに3回叩いた。
ガチャ
扉の鍵が開く音がした。
そこから出てきたのはアルラ……ではなく、見知らぬ女子生徒だった。
ん、待てよ、どっかで見たことある様な……
「おい。」
考え事していると、いきなり胸ぐらをつかまれた。
その目からは、怒りの表情が見て取れた。
「お前だな、アルラを泣かしたのは」
「………」
「やはり、そうか。」
彼女はそれを確認した後、更に、手に力を込めた。
殴られる。しかし、今の俺はコレを避けられない。いや、受けなければならない。
目をつぶって、覚悟を決めた。
しかし……
胸ぐらを掴んでいた手が徐々にゆるくなって、しまいには、完全に離れた。
しかし、まだ目は怒っていた。
「入れ。」
彼女は、その一言を残して、部屋の奥へ消えていった。
それに続いて、カズトも気まずい中、重い足を動かして入っていった。
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「座れ。」
「ああ。」
部屋の中はとても広く、俺が暮らしてる部屋より広かった。これで、二人部屋だというのだから、贅沢の限りだ。
どこからか持ってきた、紅茶セット。二人は互いに向き合い、お茶会を開いて、お見合いをするかな様だった。
とは言っても、気まずくて何を喋れない。
「飲め。」
「あ、ありがたく頂戴いたします……」
出されたのは、夕焼けの様な綺麗な色をした紅茶……ではなく、濃い緑色の液体だった。
「日ノ本の特産品の抹茶だ。苦いが、癖になる味だ。」
抹茶か。昔、アルラと一緒に飲んだことがある。俺は平気だったが、アルラはちょっと苦手らしく、ガイアに見つからない様に、こっそり砂糖を入れていたな。
無論、後でバレて怒られてたな。
ヤレヤレも思ってた俺も、礼儀作法がなってないと散々しごかれたな。
「茶菓子だ。」
「あ、どうも。」
これも日ノ本の名物だ。中にあんこが入っていてその甘さが抹茶の苦味とよく合うんだよな。
ちなみに俺はこし餡派である。
というか、さっきから何気に和んでるし、普通におもてなしされてる。
そのおかげが、気まずかった空気も少しはまともになった。
「そろそろ、話してもいい頃だろう。」
彼女も抹茶を飲み終えると、コップを置き、真剣な表情になって、カズトに質問した。
「さて、なぜお前はアルラを泣かしたんだ。場合によっては……友として私がお前を潰すことになる。」
おっかない事を言うな。でも、確かに勝手に決めたこっちも悪い。
何て言われても構わない。正直に言おう。
「実は……」




