その頃のアルラ達
カズトが自宅でのんびりしている頃……
校門のすぐそばでおしゃれな格好をしながらある人物を待っている1人の少女。
青い髪を頭の上でひとつにまとめ、凛としたその表情からはクールビューティという言葉がよく似合う。
しばらくすると、グラウンドからある人物が走ってくるのが見えた。
「ごめんアイリ。待った?」
「いや、私も丁度きたところだ。」
「なら、早くいこっか。」
「そうだな。」
2人は、街へと出かけた。
土曜日の今日、アルラはアイリスと一緒にショッピングするのを約束していた。アルラは曰く、王都に来てまだ学園以外から外に出たことがないそうだ。
前々から、カズトと出かける約束をしていたが、向こうも向こうなりの都合があっていけないそうだ。
見かねたアイリスが「今度、買い物に行くが一緒にどうだ?」と誘ったのだ。私としても丁度買いたいものがあるし、せっかく出来た友人との思い出を作りたいと思ったからだ。
2人が向かってるのはここから2キロ程離れた場所に新しく出来たショッピングセンターだ。最新のファッションや高級ブラウンドを扱う店も多く出店しているようだ。
ショッピングセンターまでは無料の送迎馬車があるそうだが、どこも人がいっぱい並んでいた。
しょうがないので、有料の馬車に乗ることにした。片道300レンソと往復合わせると600レンソはする。
少々高いが、背に腹は変えられない。
アイリスが窓口でチケットを買おうとしたらアルラがそれを止めた。
ポケットから黒いカード見たいな物を取り出し、それを係員に見せた。
すると、慌て名た様子で後ろの方へと行き、何やら男の人と話し始めた。
しばらくすると、高級感を漂わせるタキシードを来た中年男性が出てきた。
「失礼しましたお客様。ただいま、場所を用意していまるのでお待ちを。」
丁寧な口調で2人に挨拶すると、指をパチンと鳴らした。
すると、奥から黄金に輝いて周りに宝石を散りばめた馬車が出てきた。
「足元にお気をつけて。」
先ほどの男性が扉を開け、アイリスは何がなんだかわからないまま、馬車へと乗った。
馬車の中は完全防音性で、乗り心地はまるで雲のようにふわふわで、揺れもほとんどない。
「なぁ、さっき何をした?」
アルラが見せたあのカード。あれは明らかに唯のカードじゃない。それでなければ、このような馬車に乗れるわけがない。
少し強い口調で聞いてみた。賄賂……いや、そんな事をアルラがするわけがない。
アイリスが教えるまで、お金の単位がわからなかったのだから。
「あのカード? うーん……なんていったらいいのかな」
どうやら本人もよくわかっていないようだ。
「よくわからないけど、マサトーナさんにこれを見せれば歓迎されるから好きなだけ使って……て言われたの。」
「見せてくれないか?」
そのカードを受け取り、アイリスはじっくりと眺めた。
「こ、これは……ブラックカード!」
ブラックカード。世界でも数十人しか持っていないと言われる伝説のカードだ。このカードで買えないものはないと言われるほど価値があり、それはその者の権力を表す。
マサトーナ団長殿がこれを持っている事は頷ける。しかし、それを学生に貸すのはいささかな者だろうか。
「毎年、送られてくるから後処理が面倒だからあげる……って言ってた」
「………」
それを聞いて黙るしかなかった。辺りにシーンとした空気が漂ったが、それも直ぐに収まる。
「まぁ、これで交通費が浮いたし……ちょっといい物が買えるかも」
「そうだな。ここはマサトーナ殿の恩恵に授かるとしよう。」
ショッピングセンターに着くまではかなり時間がある。なので、2人は備え付けのチェスで遊ぶ事にした。
アルラにチェスは出来るかと聞いたところ、カズトと勝負した事があるから大丈夫だとの事。
チェスは頭を使わなければ勝てない。相手の出方を何百通読むかがコツだ。
ちなみにアイリスが黒、アルラが白の駒で勝負をする事になった。
10分後……
「チェックメイト!」
「ま、まけた……」
勝ったのはアルラだった。まさか、ここでプロモーションを使われるとは思わなかった。
アイリスが女王を中心に攻めていたら、アルラはそれを逆手に取り、兵士を着々と進行させていた。
気付いたら、陣地に入られプロモーションによってクイーンに転換したため敗北となった。
兵士は捨て駒として利用するがアルラはあえてそれを主力としたのだ。兵士でもキングは取れる。天才としか言いようがない。
これでもアイリスはフリーズン王国では1番強いのだ。幼少期から負け無しだったが、改めてみると世界は広いものだ。
「着きました。」
勝負が終わると同時に着いたようだ。悔しいが、今回は私の完敗だ。リベンジは寮に帰ってからやればいい。今は、買い物を楽しもう。
馬車から降り、目の前にある建物に目を奪われる。
ドーム状のガラス張りの天井の下には数百はあろう店舗が連なり、それぞれが割引セールなどの広告を貼りをお客を引き寄せようとしている。
そして、この人の数、おそらく数千人はいるだろう。ここに出店出来たお店は繁盛間違い無しだろう。
目的の店は3階にあるが、折角の休日なのでゆっくり見ていく事にした。
2人が中に入ると男女性別かかわらず様々な視線を向けられた。
男性「すげー美人だな。」
男性「ああ、モデルかな?」
女性「あの小さい子、可愛い!お人形さん見たい」
女性「隣の子もクールでカッコいいわね」
2人は気づいてはいないがずば抜けた美形なのだ。服装もさることながら、特にアルラは神秘的なオーラを発しているため目立っていた。
隣からでもいい匂いがしてくる。
「あ、これ可愛い!」
突然アルラが止まり、何かを見つめている。
それは、水着であった。白を強調とし、フリフリがたくさん付いていて、可愛い者好きにはたまらないだろう。
そろそろ、暑くなってきた頃だからプールの授業も始まるだろう。学園では自由な水着を選べるからその点ではいい時期なのかもしれない。
「確かにそうだな……あ」
アイリスはそれとは別の物に視線が映った。
水着の直ぐそばに置いたある、犬のぬいぐるみ。私を買ってと言わんばかりの目だった。
実はこう見えて、アイリスは可愛い物には目がないのであった。王城では常に相棒の熊のぬいぐるみである、プリスキーと一緒に寝ていたのだ。
今は亡き、母が私の3歳の誕生日プレゼントとして送ってくれた物だ。それ以来、一度も離れたことがない。
寮にベットの下にエロ本を隠すかのように隠してある。毎晩、アルラが寝たのを確認し、こっそり取り出していた。
アイリスがそのぬいぐるみに見惚れていると……
「ねぇ、アイリ。」
「ひゃ! な、なんだ?」
突然声をかけられた者だから驚いた。しかし、落ち着いて深呼吸をし、冷静になる。
「この店……入ってもいい?」
その提案にアイリスは……
「……ま、そろそろ水泳の授業だからな。見るのも悪くはないな。」
この人形が欲しくて入るわけじゃないぞアピールをしっかりした上で店に入ることを承諾した。
店に入ろうとした時、アルラが耳元で優しく囁いた。
「あの、ぬいぐるみ売ってるといいね。」
どうやら、アイリスが何を見ていたのかを完全に知っていたようだ。それを聞いたアイリスは……
「………はぅ###」
顔を真っ赤にし、乙女のように恥ずかっていた。
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