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神聖剣使いの姫騎士と鬼神刀使い  作者: ザウルス
学園編
36/63

風紀委員登場。

さて、この状況をどう説明したらいいだろうか。


カズトは手錠をかけられ、その上ロープまで巻かれている。決してそういう趣味があってこうなったわけでない。


目の前には、カズトと同じく拘束され、いかにもS系の先輩に顔を足で踏まれながら喜んでいるエドがいる。鞭とロウソクがあれば完璧だ。


極端に言うと気持ち悪いとしか言えないだろう。


「さて、あそこの変態は放っておいて……お前もタダで済むとは思うなよ?」


キラン!


首筋に2メートルはありそうな死神鎌をかけられている。少しでも動いたら首がきれそうだ。


いったいこの鎌で何人の首を切り取ったのだろうか。


「貴様、私が風紀委員だと知ってのことだろうな?」


風紀委員。


文字通り、学園の風紀を守るために編成された委員会だ。風紀を乱すものには容赦なく襲いかかり、抵抗しようものなら完膚無きまでボコボコにされる。


生徒会の次に権限を持つのが風紀委員だ。クラスの平和と秩序を保つのだからある程度の力がないと務まらない。故に風紀委員の多くがSクラスの連中だ。


風紀委員と呼ばれた生徒たちの胸ポケットには金文字で風紀委員と書かれたバッチが貼られている。


「お前たちの狼藉はこの、アークティス=ルナが許さないぞ!」


まるで灼熱の炎を思い浮かばせるかのような赤い髪は綺麗の一言では、すまされないほどの芸術を感じる。この学園に女子にしてはショートヘアもかなりめずらしい。身長も高く、腰もくびれていて、男子からかなり持てそうだ。気になるのは……


2つの大きな巨大兵器を持っているところだろうか。風紀委員て肩書きがあまり似合っていない。むしろ、性を強調しすぎてる気がする。


「ジロジロとみるな!」


完全に視線が胸そっち向けだったが故に頭をぶん殴られてしまった。


言葉遣いといい、性格からすると武闘家出身だろうか。拘束するさえに見せた関節技は完全に出来上がったものだった。ロープの縛り方も完全に解けない仕組みになっている。


「さて、貴様らを異端審問会(ふうきいいんさいばん)に連れて行く。逃げようと思はないことだな。逃げようものなら、この死神釜(デスサイズ)がお前たちの首を狩る。」


そもそもなぜこうなったかと言うと……





2時間前……


「なぁ、食堂って何処にあるんだ?」


昨日、アルラをこっそり泊めた時にカレーを作ったのだが、思ったより多く具材を使ったため、冷蔵庫が空になってしまった。


確か、この学園には食堂があるとマサトーナから聞いている。もともと、自炊するつもりだったがため、詳しく聞いていなかった。


エドなら知っていると思い聞いてみたのだ。


「学食なら、新校舎よの入り口から入ってすぐ右の所にあるよ。すごく目立つから迷うことはないと思うが……」

「なんだ? 随分と消極てきだな。」


新校舎に入り口は確かにここからだと遠いかもしれないが、無理して空腹を誤魔化すよりマシだ。テイクアウトするわけでもないから問題はないはずだ。


「実はな……Fクラスは食堂で食べる事を禁止されてるんだ。」

「使用禁止とはこれまたどんだけ俺らを消したいんだ……」


落ちこぼれを育てる理由があるのかと言う質問にはなんとも言えないが、ここまではしなくてもいいんじゃないだろうか。一応、落ちこぼれでも高い授業料払ってるんだからそれくらいは許してほしい。食堂だってちゃんとお金を払って注文するらしいから。


だが、現実はそんな優しい理由とは違うものだった。


「2年くらい前に落ちこぼれの……俗に言う俺たちFクラスの先輩がな、食堂で昼飯を食べてたらSクラスの連中に下剤を入れられたんだと。怒り狂った先輩はSクラス専用の食堂に50000匹のGを放ち、大パニックになったんだ。それ以降、Fクラスは永久的に食堂を使用禁止になったんだ。なんとも馬鹿らしい話だな。」


確かに言いようが無いほど馬鹿らしい理由だった。しかし、その先輩の気持ちはわからなくも無い。下剤を飲まされた時のあの苦しさはどう表現したらいいかわからない。


だからと言って50000匹のGを放つとかもう少し、大人な対応をして欲しかった。よく、50000匹も用意できたものだ。家で探しても2、3匹が限度で外なんかでは殆ど見かけない。殺虫剤を開発する会社にはG専用の部屋が用意されていると聞いたことがあるが、そこから買ってきたのだろうか。


それは、さておき……


「とりあえず、俺は行くつもりだ。お前もどうだ? 今なら、まだやってると思うが。」

「……お前話聞いてたか?」

「もちろん聞いてたさ。だけど、それはもう過去の話だ。元はといえばそのSクラスの連中が先に仕掛けてきたんだろ? 俺たちにもそれぐらいの権利はあってもいいはずだ。」

「………」


エドは無言ではあったが、「それもそうだな」と納得した様子で俺についてくることになった。他のメンバーも誘ったが全員弁当を持参していたため二人だけになった。


男二人だけの昼食……別に仲が良いではないかと思うだろうがなぜだか、華やかさがない。別にエドが汚いと言っているわけではない。


アルラを誘うことも考えたが、Sクラスの生徒とFクラスの生徒が仲良くしてるところを見られたら影で何か言われそうだ。


まぁ、エドとは二人きり(決してあっちの趣味ではない。)で今後の事を考えたいと思っていた所だから、ちょうどいい。


昼休み終了まで、残り15分。急いでいけば間に合うだろう。


エドとどちらが先に着くか競争する形になり、食堂へと向かった。


5分後……


「へぇ、意外と広いもんだな。」


食堂ときいて、混んでいるかに思えたがそんな事はなかった。1つの厨房に複数のおばちゃんがいて、AセットにするかBセットにするかを決めかねる事を想像したが、料理ごとに違う屋台が出ていて、種類も豊富だ。


男子は唐揚げ定食やハンバーグ定食などカロリーが高いものをはガッツリ食べてる反面、女子はパンケーキなフルーツパフェなど甘いものを好んで食べてるようだ。


悩んだ挙句、カズトは人気No. 1のヤベトンの味噌カツ定食。


エドは豚骨ラーメン大盛りに唐揚げと炒飯セット。


それぞれ別のカウンターへいき、指定の料理を受け取って1番適当な席へと座る。運良く、二人専用の席が空いていたのでそこに座ることにした。


「へぇ、お前はヤベトンか。」

「ああ、前々から食べてみたいと思ってたんだ。」


ヤベトンの味噌カツは王都に来たら、一度は食べるべきだと言われ、秘伝の味噌だれが衣に染み込み、豚肉との相性は抜群なんだとか。行列の絶えない人気店だ。


休みの日に、アルラと食べに行こうかと思っていたが……まさか、この学園に出店していたとは知らなかった。食べ盛りの学生を狙ってのことだろう。


備え付けの辛子をつけて、口にほおばる。


「美味い!」


サクサクとした衣に肉汁たっぷりの豚肉と味噌だれがマッチして無限に食べられそうな気がする。ご飯との相性で抜群だ。タレだけでも5杯はいけそうだ。


なんせ、店名の由来がやっベーほど美味いトンカツを略してヤベトンときているから納得できる。


秘密はどう見てもこの味噌ダレだ。味噌は日ノ本の特産品だ。コクがあって味噌独特の甘みと香りが失われていない。多分これは……


考え事をしていると……


「どけどけ平民ども!」

「貴族様のお通りだ。道を開けたまえ。」

「ふん、相変わらず品のない食べ方だ。これだから、平民は美しくない。真の芸術とは僕の事を指すのだよ。」


食堂にいる全員が箸を止め、食器を持って道を作る。


貴族と見える3人はそれが当たり前かのように通り過ぎて行く。


「ち、なんで、こんな汚いところで食事をしなきゃならんのだ!」


ドカン!


3人の中でも極めて気が短そうな男子生徒が机を蹴り飛ばす。


「仕方ないだろ、俺たちは風紀委員の命令で2ヶ月間Sクラス専用の食堂を使えないんだからな。」

「ち、風紀委員の連中が止めなきゃ俺が勝っていたのに!」

「確かに。今の風紀委員には美しさのかけらもない。」


このまま、ここにいると危険だと感じたのだろう。カズトとエド意外全員食堂から避難してしまった。先程まで、賑やかだったのが嘘のように静かになった。


エドも心配したようで「そろそろ行かないか?」と小さな声で囁いてきたが、まだトンカツが3も枚残っていたため、この場にとどまった。


別に貴族が来たからといって食べるのをやめなければならないなんて法律などどこにもない。折角こんな美味しい食事を残すなんてもったいない。


たが、その3人はカズトたちが堂々と食事しているのが気に入らないのかどんどん近づいてきた。エドはカズトの足を蹴ったり、袖をつかんで逃げようアピールをするが、カズトは全く相手にしないまま、食事を続ける。


「おい、貴様。俺のセリフが聞こえなかったのか?」

「全く、この僕たちがアールデント家の兄弟と知っていてのことなのか?」

「美しくない。君たちにその食事は美しくない。」


アールデント家と言えば、火の魔術を得意とする貴族で王都でもかなり有名だ。まぁ、それ以上にアルラやエイリッヒといった世界有数の大物に出会っているから別に驚くことはない。一応マサトーナも……入れておこう。


アールデント家の三兄弟ていったら確か……


「カール、キーク、クーンだっけ?」

「「「違う!!」」」


結構自信があったがどうやら違うらしい。


「俺はマールだ!」

「シークだ。よく覚えておけ。」

「ムーンだ。月のように夜を照らす美しき光はまさに僕にふさわしい!」


「合わせてマムシか。」

「「「合わすな!!」」」


この3人、からかうと意外と面白い。息もピッタリだし、漫才トリオとして生きてけるんじゃないだろうか。多分お茶の間の有名人になりそうだ。


「てめぇ! いい度胸してるな!!」


マムシ隊で1番気が短いであろうマールがカズトを睨みつける。しかし、カズトは気にするそぶりも見せずに食事を続けている。


それはさらにマールの怒りを買ってしまい……


「へへ、そんなに飯が食いたいなら優しい俺が恵んでやろうじゃないか!」


バン!!


食事をしていたカズト達のテーブルを思いっきり蹴り上げた。


ガッシャンガラガン!!


飛んでいったテーブルが窓ガラスを突き破り、食器は全部地面へと落ちてしまった。床一面にラーメンの汁が広がる。


「平民には地べたで飯を食ってろ。」


3人が甲高い声で笑う。


しかし、その声は今のカズトとエドには届いていない。二人は互いに見つめ合い、無言で合意した。


「へへ、帰ろうぜ。」

「そうだな。」

「地べたで這いつくばる美しい姿が見れなかったのが実に残念だ。今度はちゃんと食べてくれよ平民君。」


満足したのか、帰ろうとする3人。


「「……おい!」」


それを止める二人。二人からドス黒い殺意の塊が漏れ出していた。完全にマムシ隊に向けられたものだ。


「素晴らしい恵みをありがとうございます。お礼に僕たちからはこれを差し上げます!!」

「右に同じく!!」


ドガ!!


二人は互いに、拳を大きく振りかぶって1番恨みがあるマールを殴った。


思いのほか力が入ってしまい、マールは勢いよく飛んで行ってしまい、上半身が壁に埋もれてしまった。


それをみた、シークとムーンは「ひぃ!!」と女々しい声を上げて逃げて行く。


無論逃がすわけがない。カズトがシークを、エドがムーンを追いかけて行く。


やはりSクラスのエリートだけあって逃げ足がとても早い。しかし、そんな速さではカズトから逃げることなんてできない。エドに関しては普段からマサトーナの訓練を受けていたため体力が爆発的に伸びたのだ。


「捕まえたか?」

「ああ、ばっちり。」


交互に獲物を見せ合う。捕まった二人はまるで死んだかのように気絶していた。無論、後で叩きおこすつもりだ。


獲物を捕獲し終えて食堂に戻ろうとしたら……


「止まれ!風紀委員だ!」


突如として、現れた生徒に周りを囲まれてしまった。


それを待ち望んでいたかのように、シークとムーンは制服を脱ぎ捨て、窓ガラスを突き破って逃走した。


「お前達を拘束する!」


関節技を決められ、地べたに押し付けられ、手錠をかけられ俺たちは尋問されることになった。





















































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