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神聖剣使いの姫騎士と鬼神刀使い  作者: ザウルス
学園編
30/63

友達できました!

「25番…25番…ここか。」


指定された部屋は直ぐに見つかった。運がいいことに、教室を出て2分の距離だ。これなら、ゆっくりとしていても間に合うし、忘れ物をした時に直ぐに取りに行けるだろう。ま、私に限ってそんなことはないとは思うが。


鍵を差し込み、回す。


ピッ!


施錠魔法が解けた音がする。この寮の鍵は特殊な素材でできていて、専用の鍵を使わないと絶対に開かない。部屋によって形状も異なる。


「失礼する。」


もしかしたら、中に人がいるかもしれない。着替えてたりしたら迷惑がかかるだろう。女同士だから、別に問題わないとは思うが、中には家のしきたりなどで裸を見せれない者もいると聞く。見られたらその人と結婚しなければ成らないらしい。よく、武闘家の家系に見られることが多い。


女同士の結婚はないとは思うが……


返事は無かったが、靴がかけてある。部屋に上がる時には、靴を脱ぐのがこの国ではマナーらしい。私のいたフリーズン王国は靴を脱ぐ習慣があまりない。あまりに寒いため、床が冷たく、霜焼けになるからだ。最近だと、火の魔石で床を温める装置、床暖房が開発され、家で霜焼けになる事はなくなった。


私はこの方、他人に素足を見せたことがない。見せても問題はないが、癖になっているからだ。寝る時にもつけている。


その為年に消費する靴下は軽く3桁は超えている。いつも同じのを履いていると痛むしくさくなるからだ。


部屋の中は真っ暗だった。私は明かりをつけ部屋を見つめる。


「悪くはないな。」


学生寮と聞いて、窮屈なのをイメージしていたが実際は違った。ベットや家具、簡易式なシャワーも付いているし、キッチンも付いている。


無論、Sクラスだからだろう。


食事は朝昼晩と食堂でブュッフェ形式で出されるらしいが、お取り寄せもできるらしい。場合によっては、材料を貰って自分で自炊してもいいとのこと。


ベットは二段ベットで、どちらが上か下で揉めそうだ。私はどちらでもいいが。


「スピ〜………」


上から可愛らしい値引きが聞こえる。どうやら、先客は寝ているらしい。


本当はあまり良くないが、誰だか確認してみることにした。私がドアを叩いたり、声を出しても全然起きない。いったいどれだけ、爆睡してるのだろうか。それでいて、いびきが可愛いらしい音だから余計気になる。


ベットは木でできているため、梯子を渡るとギィギィとしなる音がする。部屋が広いためかなりのひびいてしまう。普通ならこれだけでも起きれてしまう。


「スピ〜………」


それでも、先客はぐっすりだ。


さて、その顔を拝ませてもらうことにしよう。


顔を確認しようとしたその時……


「んんん……」


先客が起きてしまった。ん、見覚えがある顔だ……


そして、私と目があう。


「「…………」」


さて、どう説明すべきだろうか。いま、私は梯子を登って先客が誰かを調べようとしている。そして、目があう。


視点を変えてみよう。起きたら突然、目の前に顔がある。私がその立場ならものすごく驚き、何者であろうとも張り手をしてしまう。


今の私はそうなってもおかしくはない。


張り手を食らう覚悟をしたが……


「…………スピ〜。」


なんとも無かったかのように再度就寝してしまった。


「寝るんかい!!」


まさかの展開に思わず叫んでしまった。


いや、だってまた寝るなんてありえないでしょ普通。私と完全に目があったよね!?赤い瞳がかなりの印象に残ったけど。


「なに!?あなた誰!?」


その大声に、流石の先客も起きてしまった。どうやら、今度こそちゃんと起きたようだ。


その先客が誰なのかはすぐわかった。だって彼女は……


「あなた確かアルラって言ってたな。私の名前はアイリス。脅かしてすまなかった。」


Sクラスで唯一精霊として入学してきた1人なのだから。目立つのは無理もない。それでいて、可愛いのだから。なぜだか、子猫みたいで保護したくなる。


「私はアルラです。初めまして。」


そう言って手を差し伸べてくる。……先程、Sクラスで自己紹介したはずなんだが、どうやら覚えてないらしい。


特に目立った挨拶などしてないので当然と言えるだろう。


私は手を握り返す。私とは違い、綺麗な手をしていてそれでいて柔らかい。いったいどうしたらこんなモチモチな肌になるのであろうか。


アイリスも年頃の女の子だ。普段は慎んでいるが、やはり気になる。特に、ドレスを着てみたいとおもっているようで、彼女のいた国ではドレスなど寒すぎて着ることがない。


最初はフリフリな格好で戸惑ってはいたが、他の貴族の女子たちが着こなしているのを見ると、着てみたいとは思う。


アルラはドレスも似合うだろうが、日ノ本の着物や巫女服の方が似合いそうだ。


(は! なにを思っているのだ。わたしは……)


完全に、着せ替えをさせる気でいた。「人形さん見たい」あの気持ちが良くわかる。


それよりも気になることがある。それを聞くことにしよう。


「アルラは誰と契約しているだ?みたところ、Sクラスにはいないみたいだったが……」

「ん〜………」


少し困っているようだ。なんらかの理由で言えないのだろうか。男子生徒の反応を見ても、アルラの事を横取りするかのようなセリフがしばしば聞こえてきた。無理もない。高位の人形精霊なるて滅多に出会えないのだから。


「安心していい、口は固い方だから。」

「……本当?」

「ああ。」

「わかったわ。」


どうやら信頼できるしてくれたようだ。私は昔から(アイアン)口女(ガール)と不名誉なあだ名で言われたくらい口が固い。どんな拷問を受けたって喋らない。耐えてみせる。


「私はカズトと契約してることになっているけど……」


契約してしていることになっているね。ということは本格的な契約はしてないことになる。こらはものすごく重大な事だ。こらがもしばれたとしたら……学園が内乱状態になる。


「お兄……カズトは訳あってFクラスに行ってるわ。」


今、お兄ちゃんて言おうとしなかっただろか?そのカズトと言う男はアルラにお兄ちゃんと言わせているのか。ただの、変態じゃないか。


それはさて置き、Fクラスと言ったら学園の落ちこぼれが集まるクラスじゃなかっだろうか。


そんな奴が高位の精霊と一緒にいる事も驚きだ。


「契約はしているのよね? 本格的な物はまだみたいだけど。」


仮契約というものがある。いわば、お試し期間みたいなものだ。自分と精霊の波長があうだろうか確かめるのだ。


となると、仮契約の可能性が高い。期限はだいたい1ヶ月が基本だろうか。


だが、彼女から出た言葉は意外なものだった。


「一応、証として神風を渡したから契約は完了しているわ」

「神風?」

「一族に伝わる伝説の武器。風の精霊王の武器の話は知ってる?」

「ああ、だいたいは……」


風の精霊王の武器は唯一存在する伝説である。私の国にも王家の秘宝として厳重に保管している。確か、大地を凍りつくし、生命を奪う聖剣フリーズゲイトって言ったはずだ。


「風の精霊王が自分の作った武器が世界に平和をもたらすと考えてたの。ところが、実際は戦争で使われて、多くの犠牲者が出た……それを気に、2度と武器を作らないと誓った精霊王が最後の願いを込めて作られたのが神風なの。最初で最期に作られた活人剣。」


風の精霊王が作った武器は多くの人を殺し、邪剣とも呼ばれるようになった。最期に作られたのが活人剣とは皮肉なものだ。


公にされなかったのも、この武器をめぐって対立が起きると思ったのだからだろう。ほとんどの戦争が、その武器を求めての戦争だったのだから。


そうなると、カズトは隠されたもう1つの伝説を持っている事になる。風の精霊王の武器は値段がつけられないほどの価値がある。またしても、重大な秘密を知ってしまった。


それ以上にアルラとしては、自分が精霊王の娘である事はカズトとマサトーナしか知らない。その事は絶対にばれてはいけないのだ。

いくら、口が固いアイリスとは言えどそれだけは言えなかった。


「でも、カズトは訳あって精霊と契約出来ない。理由はわからないわ。」


精霊と契約が出来ない? ここに入学する条件の1つに精霊と契約している事と義務づけられている。


「だから、私を契約精霊として、この学園に入学したの。元は私のわがままなんだけど……」

「そうか。お前は寂しくないのか?」

「正直言ってものすごく寂しい。私、人間の知り合いはカズトだけだから……」


アルラは私と境遇が似ている。私も一時期、同年代の知り合いがいなくて毎日ベットの上で泣いていた。


でも、ある人物が私と友達になってくれたおかげで私は救われた。


今となっては遠い遠い過去だが大切な思い出である。


今度は、私がその番だ。


「私と友達になってくれるか?」

「え……」


どストレートに行き過ぎてしまった。今度は慎重に行く事にした。


「その、よかったら私と友達になってくれないか……私も知り合いがいないんだ。」

「……友達?」

「ああ、お前とは気が合いそうだ。」


照れ隠しのつもりだったが私も同年代な友達が欲しかった。これは、もしかしたら運命なのかもしれない。


「うん!ありがとうアイリス!」


アルラは悲しかった表情を一変させて、とても笑顔が素敵な印象になった。私が男だったら惚れるところだだ。


「アイリだ。私の事はアイリと呼んでくれ。」

「アイリ?」

「そう。」


アイリ。私が生まれた時に初めて自分の名前を言う時に、赤ちゃんにしては中々発音が難しかったらしく、「アイリ!アイリ!」と叫んでいたようだ。それ以来、家族からはアイリと呼ばれている。


照れ隠しのつもりだが、いざとなると恥ずかしい。


「よろしく頼むアルラ。」

「うん!アイリ。」


改めて握手をする。


こうして、アルラ、アイリス。どちらにとっても初めての女友人ができたのだ。




















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