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神聖剣使いの姫騎士と鬼神刀使い  作者: ザウルス
学園編
26/63

最後の頼み。

「やばい、遅刻だ!」


サクラと別れた後、深夜だった為に、俺は二度寝をした。そのまま、起きてもよかったのだが、眠気にはかなわなかった。


そのせいで、寝過ごしてしまった。これというのも全部サクラのせいだ。


無論、歯を磨いたり、寝癖を直す暇だってない。


そんでもって、今、俺の目の前にはFクラスの教室の前に立っている。


「失礼しま〜す。」


誰にも聞こえない声で、そっと扉を開ける。

教室には俺以外全員が着席していた。


全員が、教科書を開いて勉強をしている……かと、思いきや全員が寝ていた。


そんな中、唯一、起きていたエドと目があった。


「おお、カズトじゃないか。おそよう。」

「おはよう。てか、先生は?」


今の時間帯なら、授業中のはずだ。なのに、先生がいない。


訳あって先生が来れないから自習ということだろうか。いや、自習でも代わりの先生が1人ぐらいいてもいいはずだ。そうしないと、今のような状態だになるからだ。


「あ、お前知らないのか。Fクラスには担任どころか、先生は来ないんだよ。」

「え!?」


先生がいない? いや、いくら落ちこぼれクラスでも担任がいるはずだ。


「知っての通り、この学園はエリート高校だ。落ちこぼれに相手する暇なんてないんだよ。落ちこぼれはいくら頑張っても落ちこぼれだからな。」


確かに、この学園は超エリート校だ。この学園に入るだけでも相当エリートなはずなんだが、やはり、どんな学園にも落ちこぼれはいる。エリートは挫折しやすいとはよく言うもんだ。


でも、こいつらを俺は落ちこぼれとは思っていない。


ここを建てる際に見せた、エドのリーダーシップぶりや他の生徒の団結力。女子達の料理の腕前や裁縫。どれを取っても、そこらへんの貴族や王族よりも凄い。


みんな、やればできる子なんだ。それを、発掘させるのが教師の仕事だと思う。


故に勿体無い。


家の為、名誉のため、金儲けの為。そんな、汚い理由で聖騎士を目指すものもいる。


でも、Fクラスのメンバーは本当に国を良くしたい、弱いものを助けたいと思っているだろう。


確証なんてない。でも、あの時の様子を見たら誰でも納得する。


誰もが面倒くさがらずに作業をこなし、Fクラスの底力を見せた。


汚い理由で入ったらなら、面倒くさがってやらないはずだ。


「よし、決めた。」

「何がだ?」


ここは学園。落ちこぼれでも、授業を受ける権利があるはずだ。


「俺が、Fクラスを担当する先生を見つけてくる。」

「お前、俺がさっき言ったこと忘れたのか?」

「承知の上だよ。でも、このままだと全員退学だ。それだけは、嫌だからな。」


実は、1ヶ月後に中間テストがある。赤点を1つでも取れば留学、もしくは退学だ。エドいわく、先生がいなくてもテストさえよければ問題ないんだとか。


でも、やはり担任がいた方が心強い。1人で学習するより、みんなでやった方が捗るからだ。それに、楽しいと思う。


俺は、エドに用があるといい、下駄箱から靴を取り出し、外へ出る。


足に力を集中し、一気に加速する。瞬時に、空気が切れる音がする。この速度で走ると普通なら服がちぎれる。たが、この制服はただの生地ではない為、全くその様子を見せない。空気のように軽い。この調子ならまだ加速しても大丈夫だろう。


後に残るのは、風によって生まれた砂埃だけだった。


丁度、この時間帯にSクラスが体育の授業をしていた。


男子達が、どちらが早いかと勝負している中、その間を俺が通り抜ける。無論、男子達には見えてない。


女子達の間を通り抜けると、通り抜けた後にできた風によってスカートがめくれていた。


その様子を男子達がいやらしい目で見ていたことは言うまでもない。


途中、アルラがいないかと思ったが、見当たらなかった。たった2日……いや、2日もあってたない。大丈夫だろうか。


ま、最悪、エイリッヒがなんとかすると言っていたしいいか。


俺の目の前に、校舎が立ち尽くす。俺の目的の場所はここを迂回しなければいけない。


だが、面倒くさい。


俺は、壁に激突する寸前に地面を思いっきり蹴る。


壁に足をかけ、そのまま駆け上がる。その衝撃で、窓ガラスがパリンパリンと割れていく音が聞こえた。


授業を受けていた生徒も突然ガラスが割れたもんだから、驚いたことは言うまでもない。


恐らく、俺が駆け上がったところにあった窓ガラスは全部割れたはずだ。ばれたら反省文かなこりゃ〜。


だが、それも後だ。


「この時間ならいるよな。」


とある人物の元へと向かっているのだ。誰だかはもうわかるだろう。





「あー、退屈ですね。」


書類を見て、目がクラクラする。いっつも書類にサインばかりする仕事にはうんざりだ。


唯一、楽しみだった実技の授業も、私は加減を知らないせいで、貴族から苦情が来て、代わりに、副団長のエリスがやることになっている。


彼女は普段、王国騎士団の育成を任せられてるだけあって教えるのが上手い。それに、裁縫や料理も得意らしく、女子からの人気が高い。


エリスを見てると、教師と生徒の絆みたいなのを見せられて、嫉妬してしまう。


私はというと、理事長と団長という立場である為、下手なことはできない。


服は常に正装。言葉遣いも流暢に話さなくてはならない。王族や貴族のパーティーや晩餐会に頻繁に招待されるが、ダンスを誘われたり、交際を迫られるばかりだ。


私としては、お酒や料理を楽しむ宴会の方が好きだ。


でも、みんなの前では本当の自分を見せられない。なので、いつも理事長室でひっそりと行っている。


それは、寂しいものだ。


それを思うと、前回、精霊の森で行われた祝賀会はとても楽しかった。


沢山の料理を食べれたし、何よりカズトが進めてきたお酒……特に投扇興は本当に美味しかった。


私の引き出しには、大量の投扇興が隠してある。全部が最高ランクの金だ。売れば、ひと財産稼げるだろう。


でも、そんなことはできない。私はこの一杯の為に毎日頑張ってるのだから。


「さて、残りの仕事を終わらせますか!」


疲れた後に飲む、お酒は最高。こんな書類、サインするだけでいいのだから。


メガネをかけ、ペンのインクを補充し、仕事を再開しようと思ったら………


ドカーーン!!


いきなり扉が爆発し、こちらの方へ飛んできた。


私はとっさにレイピアを抜き、突きで扉を真っ二つにした。


「まさか、敵襲!?」


この学園の警備システムはマサトーナであっても見つからずに侵入するのは無理。


それが、警報も鳴らずに……しかも、理事長室まで気配なく。


煙が晴れると同時に、人影が見えてくる。服装からして、ここの生徒だろうか。スカートでは無いところを見ると、男子なのは間違いない。


それなら、納得もいく。


私に上身があるもの。数え切れない。となると、教会のものだろうか。そうなると、あの(アルラ)が危ない!


早く、この男を拘束するか殺さないと誘拐されるかもしれない。そうなっては、由々しき事態だ。


マサトーナはレイピアを構え、相手の出方を見る。


体からオーラを出し、戦闘態勢に入る。


向こうが来ないならこちらから!


飛びかかろうとしたその時……


「俺だよ! マサトーナ。頼むから、物騒なものをしまってくれ。」


聞き覚えのある声がする。


「これが、奇襲なら見事でしたよ。」


はぁー、とため息をついて、レイピアを鞘に収める。知ってる声だったから良かったが、後少しで襲いかかるところだった。


いったい何がどうなったらドアを吹き飛ばす状況になったのかは見当がつかない。彼に限って、変な理由で突き飛ばしたりすることはないだろう。


前回みたいに、クラスが違うなどの状況がなければ話は変わるが……


「いや〜、ちょっと本気を出したら止まらなくてな。ドアにぶつかったんだ。そん時に、丁度止まったというわけだ。」

「ぶつかっただけで、この超合金の扉を吹っ飛ばしたんですね。」


それほど、速かったということである。それを言う、マサトーナ自身も簡単にレイピアで扉を真っ二つにしていた。


この2人がいかに化け物かを語るには十分すぎる。


「あ、そうそう。お前に用があったんだ。」

「またですか。クラスについては一度決まった以上私であっても無理です。その辺に関しては昨日あれだけ謝りましたよ……」


思返せば、自分の罪悪感にとらわれる。約束をし、さらには投扇興を箱ごと貰ったのに、約束を破ったのだ。聖騎士として、最悪の限りであった。


それに関しては、カズトは「作りたいものがある、だから道具が必要なので貸してくれ。それでチャラだ。」と言ったので、私は許可をした。


何を作ったのかは私でも知らない。噂だと、あの後、大量の木を切りに行ったとか。詳しいことはわからない。


「いや、それはもういい。俺はお前に頼みがあるんだ。」


そう言うと、カズトは顔を地面につけた。いわゆる土下座だ。


「Fクラスの担任になってくれ!」


私は戸惑った。伝説と呼ばれていた男が私の目の前で土下座をしているのだ。つい先日とは全く逆の立場だった。


Fクラスと言ったら、学園の落ちこぼれが集まる教室だ。あそこに関しては私も可哀想と思い、担任をつけさせたはずだ。


どうやら、その担任はその責務をほったらかしにしているようだ。その、担任の報告書だと1日の様子だとか、授業内容をいつも提出していた。それが、嘘だったのだ。それも、数年前から。


カズトによると、Fクラスは後者に入ろうにも、上級生や他のクラスに妨害され、入ることすらできないそうだ。


その担任については厳格な処置を下さなくてはならない。


「あいつらはやればできるんだ!俺が保証する!」


カズトの目は真剣だ。私はカズトのとこをよく知っている。それ故に、彼をここまで動かしたFクラスはどんなところなのだろうか。


彼を動かすFクラス。もしかしたら、彼を………


マサトーナは考えた挙句。


「わかりました。引き受けましょう。」

「本当か!」

「その代わり、私は厳しいですから。それでもいいですか?」

「ああ、問題ない。」


カズトはありがとうと私の手を握った。


私としても、エリスのような教師と生徒の絆が欲しかった反面、理事長としての仕事が減るからだ。


今までは、「暇でしょあなた?だから、よろしく。」 みたいな感じで書類を任されていたが、今回は違う。


Fクラス生徒を厚生し、立派な聖騎士を育てたとなれば、他の教師も黙ってないだろう。


落ちこぼれでも、頑張ればできる。そうすれば、学園のPRにもなる。


隠れた才能を見つけるのがいかに大切かも伝わる。


「なら、今すぐ行きましょう。」


マサトーナは立ち上がり、カズトが第二新校舎まで案内する。


案内している最中で、マサトーナに対して、全員が挨拶をし、教師にいたっては敬礼をしていた。


体育をしていたSクラスに限っては


「マサトーナ様だ。」

「ああ、おねい様。今日も美しい……」

「隣のあいつは誰だ?」

「俺知ってる。Fクラスのやつだぞ。」

「そんな奴がマサトーナ様と一緒だと!?腹立たしい!」

「平民のくせに生意気な!」


マサトーナには尊敬の眼差し。俺に関しては殺意のオンパレード。


そんな中、俺は気になっていたことを話しかけた。


アルラのことだ。


Sクラスにいるアルラが体育に参加していないようなのだ。


なにかあったのか。それとも……心配で聞いてみたところ。


「ああ、彼女は実技魔法の授業に出ています。この学園は、授業選択ができますから。Sクラスならこの時間だと体育と実技魔法の授業で分かれますから。」


授業選択については初めて知った。それなら、納得がいく。アルラは「魔法を極めたい」と言っていたし、運動音痴だからだ。


俺としては、体力をつけてほしいところだった。魔法を使うには体力と精神が必定だからだ。


やはり俺はアルラに甘いと思ってしまった。


喋っているうちに、新第二校舎へとたどり着いた。


「なんですかこの建物は!?明らかに新しいですよね!? 」


マサトーナには何も言っていなかったから無理もない。


俺が原因で旧校舎は崩れてしまったんだ。それを、新しく立て直した。それを1日で。しかも、学生だけで。


「そういえば、旧校舎はどうなったんですか?あそこは前々から国王が記念遺産に登録しようかと話が来ていたんですが……」


…………


さて、説明するのが面倒くさくなってしまった。
































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