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神聖剣使いの姫騎士と鬼神刀使い  作者: ザウルス
学園編
23/63

なーに!? やっちまったな!!

「ここがFクラス……」


事が順調に運んでいるなら、俺は今頃アルラと一緒にSクラスへ向かうはずだった。マサトーナにも硬く言っておいた。


それが、何を手違いたのか、Fクラス=落ちこぼれのクラスに名前が書いてあった。


Fクラスは、新校舎から200メートルぐらい離れたところの旧校舎にある。


その旧校舎というのが……


ドシャ!


「うわ! 床が抜けた!」


ものすごくボロボロなのだ。この学園は出来たばかりなのにこのオンボロ差は何処から生まれたのだろうか。


ガラスも割れてるし、廊下の床と壁には落書きだらけだ。隙間風を入ってきて少し肌寒い。多分、雨の日とか雨漏りで大変そうだ。


Fクラスは割と簡単に見つかった。Fクラスと書いてある看板が今すぐにでも落ちてしまいそうだ。


扉も、これまたボロい。木でできているようだが、明らかに腐っている。


木の建築って最大でも1000年以上は持つと、建築職人から聞いたことはある。しかも、この木は精霊の守りにある、超高級なやつだ。それが、こんなにも腐るって……白蟻にでもやられたのか?


とりあえず扉を開ける。


だが……


「あれ? 硬いぞ!?」


扉が、開かない。鍵がかかってるどころか、鍵自体もない。ただ、単に立て付けが悪くなってるだけのようだ。


力を入れようにも、逆に破壊しそうで怖い。いや、Fクラスなら問題ないか?


ガタガタガタガタ!


さっきから廊下に響いてうるさい。防音設備もなってない。


こうなったら仕方がない。壊すのを覚悟で開けることにした。最悪、マサトーナになんとかしてもらへばいい。どうせ、Fクラスに洋梨になるからな。


俺は深呼吸をし、両手をドアノブへとかける。


全エネルギーを両手に集中させる。簡単な肉体強化だ。


通常よりも多くの酸素を体内に取り入れる。心臓の鼓動が倍になる。伝わる。心臓の鳴る音が強くなっていくのがわかる。


全身の筋肉が膨らむ。


そう、この感じだ。


久しぶりの肉体強化だが、問題はないようだ。恐らく、これくらいなら開くであろう。あまり、力を入れすぎると、建物が崩壊する恐れがある。


ましては、自分自身が崩壊しかねない。


強くなりたいという願望は、人間の本来ある感情だ。


だが、力を求めすぎるゆえ、自分自身を失っていく。


自身の崩壊で一番怖いのが、精神の崩壊だ。肉体ならまだいい。万が一、精神が崩壊したら……


もう、人ではいられなくなる。敵味方関係なく、強さを求め、殺していく。


強さってのはなんなんだろうな。力こそ全てなのか。それとも……


ま、それはいいとして。今はドアを開けることに専念しよう。


「よし、行くぞ!」


ドーーーン!!!!


俺の全身全霊がこもった両手が、ドアを木っ端微塵に破壊してしまった。


その衝撃で、屋根の一部が崩壊してしまった。上からは、とんでもない量の埃が落ちてくる。掃除もまともにしてないらしい。


「ゴホゴホ! びどいな。」


埃が風によって流され、目の前の光景に唖然とした。


半分に壊れた教室。俺の目の前に落ちている看板。恐らくFクラスのものだ。黒板も、教壇も机も椅子もめちゃくちゃだ。


2億パーセント俺の仕業だ。ちょっと力を使いすぎたかな。


「な、何が起こったんだ!?」


瓦礫の中から、男子生徒が出てくる。折角の制服が汚れている。クリーニング代払えとか言われそうだ。


それと同時に、沢山の生徒が出てきた。全員が何が起こったのかわからないような顔をしている。


だが、それもすぐに全員が納得する。


1人だけ、無事な奴。そして、ドアノブの一部を握りしめている。


完全にあいつの仕業だと。


「おい、何したんだお前は!」


1人の男が俺の方へと向かってくる。髪の毛が埃まみれだ。ありゃー風呂でないと取れないな。


「いや、ドアを普通に開けただけなんだが……」

「普通に開けて、校舎が崩れるわけないだろ!!」


それもそうだよね。初日登校に学園の旧校舎を破壊。理由がドアを開けただけなんて。


「てめー、俺の髪の毛が埃まみれじゃないか!」


そう言って自分の髪を指す。それに関してはすみませんとしか言いようがない。


「お前、ドアをどう開けたんだ?」

「如何って……普通にこうやって……」


自分がやったことを再現する。それを見た、男子生徒は「やっぱりか!」と言わんはわかりの表情だ。


「このドアはドアノブを回して、横に引くんだよ!」


成る程。そりゃー開かないわけだ。でも、ドアノブがついてたら、縦に引くよね。横に引くのなんて聞いたことがない。


「あーあ、これじゃ、全員大学じゃないか。」


退学とは聞きってならない。俺まだ入って1日も経ってない。


「ただでさえ、F(おちこぼれ)クラスな上に、校舎を破壊。退学は免れんだろ。」


そうだった。俺はともかく、こいつらは全員落ちこぼれじゃないか。これって俺のせいでのパターンだよな。


Fクラスの全員を退学させ、自分が居残るのは人間として如何なんだろうか。最低の二文字しか浮かばない。


俺が、こいつらを庇って退学すべきか。いや、アルラとの約束がある以上無理である。


マサトーナに頼み込んで作ってもらうか。でも、マサトーナもFクラスのためなんかに、校舎を建てるのはどうかと思うだろう。他の教師人に反対させるのがオチだ。


何かいいアイデアはないだろうか。他の教室に移動する方法もある。だが、それだと他のクラスの連中になんやかんや言われそうだ。

Fクラスの生徒がSクラスに喧嘩を売りそうで怖い。


「あーあ、最低でもCクラスに入れてればなぁ〜、建てられたばかりで新校舎に入ってみたかったな。」


建てられたばかりの新校舎……そうだ、あの手があるじゃないか。


「全員よく聞くんだ!退学を免れる1つの方法がある!」


その言葉を聞いて、全員が俺の方向へ向きかえる。


ふふ、その方法は……


「今から、この校舎を建て替えるんだ!」


……………………


空気が重くなる。誰もがこいつない言ってんだと思っただろう。


「校舎を建て替える?そんな金があるか!」


誰もが、その答えに頷く。ああ、そうさ、金がないよ。恐らく、マサトーナに頼んでも無理だろう。


それなら……


「俺たちで作ればいい!!」


校舎を建て替える金がない=職人を呼べない=建替え無理。


それなら、自分たちで作ってしまえばいい!!


我ながらナイスアイデアだ!


「校舎を作る!? 俺たちがか!?」

「そうさ、金がないならそうするのが一番だ。」

「だけどよ……周りの奴ら見てみ。」


男子生徒がそういうと。周りを見てみる。


誰もが、俺の話を聞かずに、作業をしている。


荷物をまとめて帰ろうとする者、本を読む者。寝ている者。


だらしないオンリーだ。


「みたろ、全員やる気なしだ。」

「そうか、でもお前はやる気満々みたいだが。」

「当たり前だ。俺の実家は大工やってんだ。ここで退学になったらなんて親に言えばいいか。」

「そうか、ところで名前をなんて言うんだ?」

「俺は、エド=ファンクソン。エドって呼んでくれ。」

「俺は、鬼神カズト。カズトと呼んでくれ。」


互いに握手を交わす。初対面は最悪だったが、どうにか名前を教えてもらうことができた。


「で、如何すんだ? やる気があるのは俺たち2人。素材もない。道具もない。はなっから詰まってるよ。」


校舎を建てるには様々な道具が必要だ。それも、何百個もの道具が。それには、恐らく数百万レンソはかかる。


ある程度の道具ならこの学園にも揃ってるはずだ。マサトーナに許可を借りれば持ち出しも可能だろう。


木はそこらへんの森から切ればいいだろう。多少はなくなっても問題はない……はず。


「その辺については任しておけ。」

「おお、そうか。なら、安心だ。」

「それより、まずは……」


無残にも崩れ落ちた教室全体を見渡す。いつ崩れても、おかしくない状態だ。もともとオンボロだし……これなら……


「この校舎を片っ端からこわすぞ!!」

「お、壊しなら俺の得意の分野だ!」


エドは、ポケットからメリケンサックを取り出し、腕にはめる。構えから見て格闘家だってのか。


「使えそうな者はとっておけよ。それ以外はぶち壊しても構わない。」

「おうよ! 片っ端からやろうぜ!」


俺は、神風を抜刀する。神風は木刀だが、人以外の者なら容赦なく切り捨てる。こんな腐った気なんて空気を切る感じだろう。


「オラオラオラオラオラ!!」

「うおりゃー!!百烈パンチ!!」


シャンシャンシャン!!


ドガドガドガドガドガ!!!


木を切り裂く音と割れる音が交互に響く。


「「破壊は楽しい!!」」


次々と瓦礫が溜まる中、2人の声がシンクロする。


物を壊すってこんなにも楽しい者だろうか。笑いが止まらないよ。人間て作るより壊す方が苦ってていうげど嘘だど思えるよ。


その様子を見ていた、他の生徒も自らの武器を持ち出し、破壊に参加するようになっていった。


その光景は正に異様とも言える。普通なら教師が駆けつけてくるだろうが、ここは新校舎からかなり離れている。ついでに、防音結界と幻覚結果を貼っておいたから、誰も気づかない。


その間に、旧校舎はどんどん崩れていき………


「改めて見ると、すごいな。」


完全に後形もなくなっている。瓦礫の山は使える者と使えない者に区別し、再利用するつもりだ。


クラスで初めての共同作業が、解体作業とは中々クレイジーだと思った。


でも、そのおかげで色んな生徒と仲良くすることができた。


これなら、俺が見つけられなかった物を見つけられるかもしれない。


大空を見上げる。相変わらずいい天気が続いている。こんな日がいつでも続けばいいのに……










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