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神聖剣使いの姫騎士と鬼神刀使い  作者: ザウルス
学園編
21/63

動き……

ここは、森林の奥深くの神殿。


我らは毎日、この神殿で精霊王へ祈りを込めている。


我ら教会は一国の独立国家と言ってもいい。

政治は宗教に関与しない。宗教弾圧は許されないのだ。


唯一、教会と敵対していたのは、ユークラシテル帝国だった。お互いに刺客を送り、スパイ合戦を繰り返していた。故に、冷戦状態だったのだ。


たが、なにを間違ったのか、ユークラシテル帝国はアリステル王国へ侵攻した。


教会は、アリステル王国に恩を得るために、影で軍事同盟を結んだ。その甲斐あって、アサルディー帝王は処刑され、ユークラシテル帝国は分断され、東は教会。西はアリステル王国が統治している。


書類上は全部をアリステル王国が支配してることになっている。だが、国民のほとんどは知らないだろう。


「教皇様、そろそろお時間です。」

「うむ、そうか。」


教皇と呼ばれた男の名はビルクテス・アーリア・カルイセス2世。


教会の事実上のトップである。


教壇に上がると端から端まで、大量の信者が教皇に向かっておじぎをしている。


その数、約15万人。赤ん坊から年寄りまで、年齢層が幅広い。


教会のシンボルである短剣を皆が、腰に帯刀している。


教皇が演説を始める。


「諸君!朝早くから呼び出したのは他ではない。」


教皇の声が響くと、信者は立ち上がり、熱狂する。


だが、教皇が右手をあげると一斉に静かになる。


「我らは遂に、全精霊を解放するのに必要な鍵を見つた。」


ここにいる、全員は既に洗脳済みだ。よーく見ると、目が死んでいるかのようだ。命令を待つだけの機械奴隷として。


「だが、皮肉なことに鍵は精霊を道具として扱う国にいる。おお、なんとことであろうか!」


教皇が嘆くと、信者全員が混乱した。だが、それもすぐ治る。


「だが、安心したまえ諸君!我らは必ず鍵を取り戻し、世界は平和になるであろう!」


信者達はこれまでないくらい熱狂した。中には、薬物を打たれたかのように、狂ってる信者もいた。


「全精霊を解放するとこが世界に平和をもたらす事を我はここに宣言する!」


教皇が自らの宝剣を天に掲げると……


信者達も、腰に帯刀してある短剣を天にかざす。


この仕草は、「教皇万歳!」と意味にもなる。我が魂を教皇に捧げんとかなんとか。


教皇は信者達に解散指示を出すと、信者達は波のように神殿から出て行く。


全員がいなくなったのを確認すると、教皇はある人物を呼ぶように、シスターに言い聞かせた。


五分後。


重たい扉がゴゴゴッ!と開き、その奥から人影が見える。


「お待たせいたしました。ビルクテス様。」


その者は、教皇の前で敬礼をしている。長い髪の毛を結び、レイピアを備え、教会専用の甲冑を纏い、決して粗相のないようにしている。


「うむ、よく来たビクトリアよ。」


ビクトリアと呼ばれている少女は、年齢からして、16歳。


教会専属の騎士としては若すぎる。


だが、彼女は実力で騎士長の座についている。


「いえ、私は誇り高き、教皇の聖剣団の団長。その任命を頂いたのはビルクテス様からです。」

「うむ、我はそなたが一番相応しいと思ったが故にだ。」

「いえいえ、そんなことはありません。捨て子だった私をここまで育ててくれたのは教会なのですから。」


教皇は「あの時か。」といい、何かを思い出しているようだった。


「我も覚えておる。あれは寒い冬の頃だった。」

「ビルクテス様。その話は……」


ビクトリアとってはあまり思い出したくもない過去だ。


教皇は「すまぬ。話がずれた」といい。本来の目的に話を戻す。


「この写真を見るがいい。」


教皇は懐から2枚の写真を取り出し、ビクトリアへと投げる。


それを、素早く受け取る。その間わずか、1秒。


伊達に、16歳で団長を任せられたわけじゃないというわけだ。


ビクトリアは写真をみる。そこには、1人の可愛らしい少女と……1人の少年が写っていた。


「ビルクテス様。これは……」


少女は恐らく妖精の類だろう。しかも高位だ。ただ、もう一枚の写真に写っている少年をを見ても……特にどうというわけでもない。強いて言うなら、幼い事ぐらいだ。


「それは、我らが求めていた鍵と言われる少女だ。」

「これが、鍵ですか……」


この少女が教会が求めている鍵だという。ただ、私から見たら少し違う気がする。高位の精霊であることは間違い無いはずなのだが……


だが、ビルクテス様が言うことには間違いない。なにを考えているのだ、私は。きっと、訓練の疲れが出たのだろう。そうだ、それに違いない。


「もう一枚の写真の少年についてだが……」

「この、ちょっとくせっ毛のある少年ですか?」


そう言って、写真に指をさす。こいつも鍵だということだろうか?だが、この少年はどこにでもいそうな悪ガキな印象しか残らない。


「率直に言おう。始末するんだ。」


私は、ビルクテス様の言った言葉に耳を疑った。私に、この幼い少年を殺せと。


そんなこと……できるのか。でも、やらなければ私は……


その考えは、教皇の次の言葉で吹き飛んでしまう。


「この者は5年前に、我が教会へと乗り込んだ。恐らく、ユークラシテル帝国の者だろう。」

「ユークラシテル帝国……」


その言葉を聞いて、怒りが込み上がってくる。


ユークラシテル帝国にはどれだけの同士が殺されたことだろうか。わたしは未熟故に、戦いに参加できなかった。


アサルディー帝王は処刑されたらしいが、出来れば私がその場で首をはねたかった。


ユークラシテル帝国は滅びたが、未だに許すことができない。奴らは人じゃない。人間の皮を被った怪物だからだ。


「その生き残りが鍵と共に、ニュークリアー学園に入学したと情報が入ってきた。」


それは厄介だと思った。教会の監視を逃れたという事は相当な手慣れだろう。


「そこで、お前にはニュークリアー学園に入学してもらうことにした。」

「はは、わかりました。」


ビルクテス様のいう事は絶対。逆らうのは愚かだ。


「すでに、学園へは入学手続きを済ませてある。制服は既に注文済みだ。あとは……」


教皇が指をパチッ!と鳴らすとシスターがひっそりと出てきた。


「例の物をここえ。」

「はは。少々お待ちを。」


そう言ってシスターは音を立てずに、一瞬でその場から消える。


あれこそ、なぜに包まれたビルクテス様専属の護衛だ。名前どころか、顔さえもわからない。わかるのは、教会で一番強い事だ。


なんせ、私をここまで鍛えてくれた師匠だからだ。


ものの数十秒で登場し、何か箱らしきものを手に持っていた。


それをビルクテス様に渡した。かなり長いサイズの箱だが、一体なにが入ってるのだろうか?


教皇は、その箱をビクトリアに向けて投げつけた。突然の事に驚いたが、落とさずにキャッチするとこが出来た。


触ると、木の感触が伝わる。どうやら木箱に入ってるようだ。


どうやら、開けろと言っているようだ。私は、戸惑いつつも慎重に箱の中身をあける。


木箱をあけると中には、復路で包まれた棒状のような物が出てきた。それを剥がすと中から光る物体が出てきた。


「これはまさか……」


私は驚いた。なんせこれは……


「聖剣エウリュアレ。如何なる闇も貫き通す聖なるレイピア。お主にぴったりだとおもったのでな。」


神話級の武器が今、私の目の前にある。それを考えただけでも気絶しそうだ。


ビルクテス様でも、ほとんど触った事がない神聖な物を私なんかが手にしていいのだろうか。


「鍵を入手するには、それが必要不可欠とそなたの師匠が言っておった。」

「はい。存じ上げております。」


実は、師匠からこの事を事前にこっそり聞いていたのだ。普通なら驚くところを驚かなかったのはこれが理由だ。たが、聖剣エウリュアレを授ける事は言われてなかった。


師匠から言われたのは、2つだけだ。学園の教師にはバレるな。そして、マサトーナとは敵対するなという事だ。


私としても、マサトーナとは相見えたくない。でも、学園生活を送る上では、会う気概が必ず会うだろう。


彼方もこちらの情報を掴むはずだ。そして、私にコンタクトをしてくる可能性がある。


その時が来たら、これでなんとかしろという事だろうか。


これを使えば、マサトーナに大傷を負わす事は出来るかもしれないからだ。


ただ、私にもかなりの負担がかかる。


ま、これは切り札としておこう。


「そうか。なら、今すぐ支度をし、アリステル王国へ旅立つがいい。」

「はい!教皇の聖剣団、団長ビクトリア。喜んで任務を遂行します!」


敬礼をし、礼拝堂を後にする。


「これで我らの計画が成功する。」


1人になった教皇は、そのままどこかえ消えていった。



一方、ビクトリアの部屋では……


「これで準備よしと。」


教皇に言われた通り、ものの数分で支度を終えた。後は、旅立つだけだ。


荷物を持ち、部屋を出て行こうとしたら……


「ちょっといいかしら?」


いつの間にか、師匠が後ろに立っていた。流石は師匠。私はまだまだ修行が必要だなと感じた。


しかし、師匠が私の部屋に来るのは珍しい。いつもは、矢文で呼ぶ事がほとんどだったのに。


「はい。なんでしょうか?」


もし、行くなと言われても、師匠であろうともビルクテス様の命令に背くわけにはいかない。


だが、師匠が言った言葉は意外すぎて驚いた。


「鍵を見つけても、直ぐに手を出さない事。」

「それは、存じ上げてますが……」


いくらなんでも、公衆の面前で誘拐なんてしない。せめて、人影がなにところで……


「あまり言いたくはないのだけれど……貴方では鍵を捕まえる事はできない。」

「それはどういう事でしょうか?」


いくら師匠でもその言葉は少しカチン!とくる。私では無理?確かに、マサトーナにはかなわないでしょうけど、そこらへんの教師や生徒よりは次元が違うと思う。


「注意すべきはマサトーナではない。」

「マサトーナではない?」


世界最強とまで言われている彼女よりも注意人物がいると師匠は言っているのだろうか?


まぁ、あそこにはエイリッヒ王女もいると聞いているが……私の敵ではない。


「恐らく、そいつは私でも勝てないでしょう。」

「!?師匠でもですか?」


師匠よりも強い人間がいたとは……まさかそいつは……


「詳しくはわからない……私が思うに……」

「心当たりがあるのですか?」


もしかして、師匠の事を唯一知ってる人物なのだろうか?出来れば会ってみたいと思う。私は師匠の事を知らない。もし、敵対意識がなければ、弟子ですと言って話を聞きたい。


たが、師匠からはそれ以上の答えが返ってきた。


「覇道の四刀のメンバー……」

「覇道の四刀!?あれは、伝説では……」


覇道の四刀はこの世界いるものなら誰もが知っている伝説だ。メンバーの名前は不明。顔もわからない。


わかっている事は1つ。


そいつらに手を出すな、国が滅ぶ。という

伝説だ。


伝説なんて、人々が作り出した夢物語に過ぎない。


特に、覇道の四刀なんて、帝国が他国に責められないために作った話だろう。少なくとも、私はそう信じてきた。


唯一、信用できるのは、ビルクテス様だけだ。あの人こそ、現人神そのものだ。ビルクテス様になら、この肉体を差し出したって構わない。魂もだ。


「伝説なんかじゃない。彼らの事は私がよーく知っているから。」

「詳しく教えてください!」


私は、無我夢中だった。まさか、伝説が本当だったとは。そうなると、マサトーナより厄介なのは確実だ。元ユークラシテル帝国所属部隊の残党は、殆ど始末したはずだ。無論、私自らの手で。彼らは、チームとしては最悪だった。どいつもこいつもが、生き残ろうとして、仲間を売ったからだ。それが、生き残ってるのなら、始末すべきだ。きっと、ビルクテス様もそれをお望みになるはずだ。


「そうね。彼らについて言う事なら……」


師匠は私に、詳しく話してくれた。


ただ、最後に言われた事が妙に気になる。


「とくに、鬼神(きしん)には気をつけたほうがいい。」


鬼神って神話に出てくるアレの事だろうか?鬼神は5人の精霊王によって封印されたはず。


きっと師匠が私をからかうために作ったのだろう。気がつけば師匠はもういない。


私は、荷物を持って、外へと向かった。














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