待たせたな。
マサトーナとの話し合いが終わり、俺はアルラを迎えに行った。
何と、アルラはエイリッヒに護衛されていた。仲良く楽しそうに話してるのを見ると、どうやら打ち解けたようだ。生徒会長と言ってもやはり女同士の会話は盛り上がる。
一緒にいた時、笑うどころか、鉄壁の要塞みたいだった彼女が嘘のようだった。
カズトが駆けつけると、彼女は出会った時のようになってしまった。打ち解けるにはまだ、早いか。それが、男となっては尚更だ。生徒会長がやすやすと男と親しい姿をみたらどうなる。きっと学園中が騒ぎになる。
アルラには遅いと怒られたが、エイリッヒと別れる際に、互いに手を振っていた。アルラの初めての友達が生徒会長とは……アルラ恐るべし。
多分、クラスが違ってもすぐに友人が出来るだろう。何なら、アルラの事を任せたい。
カズトが出来るのはそれくらいだ。自分で行きたいと言った以上は甘やかしてばかりはいられない。
「どうしたのカズト?」
「いや、何でもない。」
カズトはアルラの頭に手を乗せ、撫でた。小動物を撫でると癒されると聞くが、それ以上だ。
アルラは嫌がるどころか、「えへへ。」と喜んでいた。
女性の髪にいきなり触るのは失礼だが、アルラは気にしてない様子。
それにしても、アルラの髪の毛は柔らかい。カズトのくせっ毛と違ってふわふわしてる。多分、貴族がみたら「何を使ってますの?」とか聞かれそうだ。
遺伝……と言っても分からない。両親の姿なんて見たことはないからだ。
ま、今はいいか。
「とりあえず、昼飯でも食べに行くか。ついでに晩飯の材料を買いに行くか。」
「うん!」
時刻は丁度13時。少し、遅くなったが昼飯でも取ろう。
エイリッヒからオススメされた、安くて美味い大衆食堂が近くにあるみたいだし。この時間なら、空いてる頃だと言っていた。
ついでに、ホテルを出た時に見た、商店街で材料を買おう。
「ねぇ、カズト。」
「なに?」
「手……」
「?」
アルラは左手を出してきた。手を握れと言ってるのだろうか?
少し恥ずかしがってるところは、カズトから見ても可愛い。
カズトはアルラの手を優しく、離すまいと強く握る。
痛くないかと思い、手を緩めたら、アルラの方から力強く握ってきた。
この2人を見ると、どこからどう見ても恋人にしかみえない。だが……
(ま、迷子にはなりたくないだろうからな。)
カズトはそんな事をこれっぽっちも思っていなかった。
その後、昼食を終えた俺たちは先ほどの商店街へと向かった。
店の人から、「やるな、にいちゃん。」や「頑張ってね、アルラちゃん。」など、なぜか、応援のエールを貰った。
アルラにいたっては、その性格ゆえに、サービスしまくられていた。無論、その荷物を運ぶのはカズトだが、これがなかなか大変だった。
買い物が終わると、次は宿だ。今回は特別に、学校のVIP専用の宿舎に泊まらせてくれるそうだ。近くには、調理室もあるらしいから、そこで調理しよう。
今回は入学祝いに、豪華にしようと思っている。アルラの大好物なビーフシチューを作る予定だ。
ついでに、エイリッヒやマサトーナを呼ぼうと思っていたところだ。マサトーナは酒で釣れば、地獄からでも来そうだし、エイリッヒに関しては……マサトーナに何とかしてもらおう。
俺ならともかく、アルラが呼でいるとなれば、来そうな気がする。
明日はついに、学園生活が始まるのだ。
もう、後悔はしない。心に決めて。




