答えのない答え。
「俺は学園にいるべきなんだろうか。」
率直な質問だった。
俺はこの世界にいてはいけない人間だ。
こうして生きてるだけでも、奇跡としか言いようがない。
今でも、指名手配されている。金額も人類史上最高額だろう。
普通なら、冒険者や賞金稼ぎに追われる毎日だろう。
アルラのお陰だ。
一般人が入れない森にかくまってくれた。さらに、カズトのとこを兄として、慕ってくれていた。ガイアに関しては、をちょくちょく貶してはいたが、「森から出て行け!」とは一言も言ってはいない。
ガイアもガイアで、カズトの事を住人として、認めていたようだ。
幸せだった。こんな日がいつでも続けばいいと思っていた。
だが、運命は許すはずがない。こうして、カズトは再び戻ってきたのだ。
決して、アルラが悪いわけではない。彼女には何も教えていないからだ。
恐れていたのだ。秘密を知った時、アルラはカズトの事をどう思うだろうか。
想像したくない。
ポタ……
気がつけば、頬に冷たい何かが通った。
涙だ……
知らないうちに、カズトは泣いていた。
(わからない。なぜ、俺は泣いているのだろうか……)
それを見た、マサトーナも黙ってカズトが泣き止むのを待つ。どうやら気遣ってくるてるらしい。
腕で目を擦る。いつまでもこの姿を見せるのは男として情けないわ、
「悪い。」
「いえ、むしろ安心しました。」
何が安心したのだろうか?今の何処に安心できるのだろうか?
「先ほどの答えですが……」
「ああ。」
先ほどカズトが言ったこと。簡単に言うと、ここにいてもいいのか?ということ。アルラのためを思っての事だ。もしくは、学園生徒が教会に狙われないためだからだ。
「合格です。」
「は?」
合格……ということは、ここにいてもいいということなのだろうか。しかし、理由が分からない。
悩んでいると、マサトーナが理由を述べる。
「答えは、あなた自身がそう言ってましたよ。」
俺自身が答えを………分からない。俺がいつ答えたんだ。マサトーナは何を言っているんだ……俺には分からない。
誰か教えてくれ!何が答え何だ!誰でもいい!
俺の脳内でリピートしていく。頭が割れそうだ……
「答えなんてありません。私は私の判断で貴方が大丈夫なのを確認したんですから。」
「答えがない……」
「私は、沢山の人間を見てきました。そして、この手で何人もの人を殺してきました。私の判断で……」
マサトーナ自身も少し辛そうだった。こんな綺麗な人が人を殺してるなんて誰も思わないだろう。彼女場合は王国の為に沢山の人間を斬ったのだ。俺とは違う。
だが、正義感では乗り越えない壁もある。
「彼女がやったのは人殺しではない。故に、彼女の剣は活人剣。」などと言う輩が多いだろう。
だが、それは、人を殺した事がないものが言うことだ。いくら綺麗事を言っても人を殺したことには変わらない。
故に、人殺しは人殺し。
もう2度と戻ることはできない。永遠に苦しみながら生きなければならないのだ。
それが、神々の光刃団長ても……
「確かに、貴方は危険です。しかし……」
マサトーナはその理由を次のように言った。
「貴方が泣いたからです。」
その答に、俺は放心状態だ。なぜ、泣いただけでセーフなんだろうか?
「もし、貴方が人を止めているならば、涙なんて流すはずがありません。涙を流せるのは人の悲しみがわかる人ですから。」
先人の言葉を思い出した。あまり思い出せないが、マサトーナと同じ言葉を言っていた気がする。
「もとい、貴方はアルラの事を妹のように可愛がっていたじゃないですか。私には、そんな事を言う、貴方が不思議でなりません。」
マサトーナは最初からわかっていたような感じだ。
カズトは、改めてマサトーナに礼を言い、廊下へ出て行く。
「ありがとう。」
出て行く寸前で、カズトは誰にも聞こえないような小さな声で感謝の言葉を言った。
いつか、誰かにありがとうを言ってみたかった。カズトの夢でもあった。
だが、人の目の前では、いざとなると恥ずかしいものだ。
だが、いまはそれでいい。
いつか、また来ると信じて。
「さて、お姫様を迎えに行かないとな。」
今は、お姫様を迎えにいかないと。




