到着!
久しぶりに書けた。
「ストレート!」
森から王都に向けて、出発している中。俺たちはトランプで遊んでいる。2人で出来るのは限られているので、アルラが得意と言い張っていたポーカーをプレイしている。得意というより、ポーカーはほぼ運だめしなんだが……楽しそうだしいいか。
アルラが勝ち誇ってきたかの様に手札を見せる。ストレートとはこれまた、中々。
しかし……
「残念。フラッシュだ。」
「嘘ー!?」
アルラが捨てた手札からしてやはりストレートできたのは予想通りだった。アルラはこういうゲームは得意と言いつつも、感情が出すぎるからわかりやすい。
当の本にはというと、「どうして?」見たいな顔をしながらカードを配る。ちなみに、負けた人がカードを配るルール。アルラは人ではないが……細かいことは気にしないことにしよう。
手札を配りきり、俺は手札を見る。見た感じは一のワンペアとまー、ありきたりな感じだ。
アルラはと言うと、何やら「よし!」見たいな感じが出てる。何やら、いい札だった様だな。
「私は、2枚。」
「俺は、4枚だ。」
イカサマ防止のために、札は交互に撮るのがルールだ。アルラは二枚引き直し、俺は4枚引きなおした。
互いの手札を見る。
アルラは目がキラキラしている。俺はというと……こ、これは……
「んじゃ、私から……ストレートフラッシュ!」
アルラの手札はかなり確率の低いストレートフラッシュだった。
これが、ギャンブルだったら必ず勝てるだろう。当の本人は「どんなもんだい!」と言わんばかりの表情だ。
ここで、俺の手札を見せる。
「残念。ロイヤルストレートフラッシュ。」
「嘘!!!!」
最強の手札が揃ってしまった。別にイカサマをしたわけではない。手札はアルラが配っていたからだ。アルラがロイヤルストレートフラッシュを出したなら、イカサマの可能性がありゆる。ま、アルラに限ってそんなことはないだろう。
ただ、運が良かったというべきだろう。これがギャンブルだったなら大儲けだろう。
「うう、悔しい悔しい!」
悔しさのあまりに、ジタバタし始めたせいで馬車全体が大きく揺れる。ここは上空なので少しでも騒いだだけで、揺れてしまう。地面の石にドタドタと当たりながら行くよりは断然いい。
それはそうと、このままでは馬車が一回転しかねない。天井があるので、外には落ちることはないが当たればとても痛い。
「ま、落ち着け。これはゲームだ。」
「……だけど、負けるのは嫌!」
アルラは大の負けず嫌い。この間の祭りでババ抜きした時なんかどんだけ付き合わされたことか。ガイアは勿論、俺以外の精霊たちは魂が抜けた様な状態だった。当の本人はケロッとしてるのでそれは恐ろしかった。
ま、あの時はワザと負けたのでやっと終わることができた。表情が変わりすぎなので、どれがババだか直ぐわかってしまう。
「そんなこと言うな。アルラは充分強いよ。」
「……そ、そうかな?えへへ。」
アルラは強い。これは俺も認める。ただ、今回は俺に運があったというわけだな。
学園で友達が出来たら招待をして、大富豪でもやることにしよう。アルラの性格なら直ぐに出来るだろう。可愛いし、なんか保護したくなるからな。
学園か……俺も楽しみだな。これまで同年代とはほとんど会ったことがない。俺には、友達と呼べる者はいなかったからだ。
多分もうそろそろ着くかな〜と思っていると……
「あ、見えました!王都です!」
マサトーナがそう叫んだ。
すかさず動いたのはアルラだ。窓ガラスにべったりとくっつきながら初めて見る景色に興奮している。凄く楽しみにしてたからな。
「凄い!あれが王都なの?森とは全然違う……」
アルラには、すべてが初めてだらけだ。少し前に、俺が良く買い物に行ってた村でも興奮していたが、ここはそれ以上だ。
「見て! お家があんなにある!」
レンガの家が密集している大都市は上から見ると確かにすごい。それぞれが、違った色の屋根があり、芸術波の美しさだ。
ちなみにアリステル王国は上から見ると、美しい正五角形なのだ。国旗の文様に正五角形があるのはこれが理由らしい。アリステルの国旗は、真ん中に正五角形。それを囲む緑。国旗の星の方には青色がある。これは、豊かな森と広大な海を表しているらしい。
世界はアリステル中心に動いてるいるというと意味らしい。ま、実際にはその通りだな。
俺も、王都に来るのは初めてだ。ユークラシテル帝国と比べてはるかに文明が進んでいる。道端には目立つようなゴミが落ちてないし、国民がたくさん見える。帝国はゴミだらけで、恐怖政治だったために国民は殆ど部屋に閉じこもっていた。
ここは本当に豊かだな。
そう思っていると……
「あ、あのでかい建物はなに? カズト?」
アルラに呼ばれたので、そちらを見てみる。
正五角形の中心にドーンと立ち、日時は目立っている屋根が青い建物。あれは多分……
「城だな。」
「城?」
「ああ、この国の王様や王族、トップの人達が暮らす所だ。あの森でいうと、アルラの家だってそんなもんだ。」
「ヘ〜、私と同じね……」
アルラはじ〜と、城を見つめている。だが、直ぐに違う方へと見つめ直した。
アルラは将来あの城へ行くかもしれない……いや、行かねばならないの方が正しいか。下見を兼ねてのことだろう。
「あ、あの建物は何? 」
指をさした方向には王城程ではないが、豪華な建物が建っていた。貴族にしては広すぎる。あと、至る所にホテルの様な建物や闘技場がある。10個ぐらいはあるんじゃないか?
俺も、なんだろう? と思い見ていると……
「あ、あれが貴方が通うニュークリアー学園です。」
「「えっ!?」
あれが学園? 学園というより、リゾートじゃないか?よーく見ると。ここからでも確認できるほどの大きなプールまである。下手したら、王城の敷地面積より大きいんじゃないか?完全に貴族専門学校じゃないか……俺たち見たいなのが言っても大丈夫なのか?
「基本的に、この学園は平等主義を貫います。でも、教師がいない所では、差別がひどいです。」
それは言えたことだ。人間は自分より弱い者を見るといじめたがるのだ。ましては、貴族だ。いい貴族もいれば、断然悪い奴もいる。アルラを手篭めにしようとしたやつがその例だ。奴らは、金さえあればなんでも許されると勘違いしてるからだ。
ま、そんな奴に限って弱い。脛齧り丸出しだからな。
「アルラ良く聞くんだ。」
俺は、慎重な眼差しでアルラに声をかける。
「なに? カズト?」
当の本人も、いつもとは違う雰囲気に真剣な眼差しだ。
これから、アルラは色んな人と出会う。そして、色んな目を見る。尊敬、嫉妬、怒り、悲しみ。出来れば、アルラには汚い人間世界を見てほしくはない。だが、アルラはいずれ精霊王の娘として、森から出る時が来る。
そんな時に汚れに触れてほしくない。だが、ここに入学するということは、そういう一面を見るというハメになる。
その時、アルラはどうなるかわからない。今は笑っているがその笑顔が消えてしまうかもしれない。
俺は、何としてもこの笑顔を守りたい。命をかけてもだ。約束を果たせなかったあの日みたいな地獄は見たくない。
だから……
「命に代えても、お前を守る。」
「え、え、いきなりどうしたの!?」
突然の宣言にアルラは顔を真っ赤になっている。頭からプシュ〜と湯気が出ている。
「お前は……俺の大事な……」
「ゴクリ」
ドキドキドキドキ。
心臓の鼓動が早くなる。まるで、心の底から聞きたかった言葉を待っているかの様だ。
「妹だからな」
……………
あたりに沈黙が走る。心臓が破裂しそうな勢いだったのが嘘の様に静かになる。
「そ、そっち?」
「……? それ以外何かあるか?」
「ううん。なんでもない!」
はて、どうして、怒ってるんだろう?何か俺、変な事言った?確かにアルラは可愛いし、妹の様だと思ってる。
もしかして……契約者の方が良かったのか?
(ま、いいか。)
俺は、窓の方へと向く。
(これから始まるんだな。俺、頑張ってみるよ。アルラの為に。)
まるで、懐かしい思い出を語るかの様に、空を見つめるのであった。
カズトの唐変木は隕石が降っても動かないかもしれない。




