第35毒 猛毒姫、御馳走様をする
20日間の絶飲食拷問生活の末。
とうとう国王から無罪判決を頂いた。
国王からの恩赦に、地下におるめいどが全員で声を上げた。
「「「「「聖女様、ばんざーい」」」」」
「どうしてこうなった!?」
聖女は止めてくれ、と言おうとするのを遮るようにマー坊が牢屋の鍵を開ける。
「ボツリヌス様、ご飯、食べましょう!」
マー坊よ、涙でくしゃくしゃじゃぞ、お主。
笑うか泣くか、どっちかにせい。
「ふむ、私も早く食事を取りたいがのう。
その前にトキシン侯爵に許可を取らないと……」
恐らく牢屋への強行突破は国王と爺やの独断じゃろう。
トキシン侯爵はまだ二人が来ていることすら知らぬかもしれぬ。
「ボツリヌス様、その必要は御座いません」
爺やが笑顔で否定する。
……なんだか、王様の決定を誘導しておるのは此奴の様な気がするのう。
王が若いから仕方がないこととは言え……。
頑張れ、ストリー王よ……。
「爺や、お主がトキシン侯爵に話を通してくれるのかの?」
「おや、普段はその様なお可愛らしい喋り方なのですね」
「ぬぐっ、貴様」
思わぬ声掛けに私は調子を狂わされる。
……此奴、苦手かも。
「ほっほっほ。冗談でございます。
もちろん屋敷へ勝手にお邪魔し、勝手に罪を赦した私たちが、トキシン侯爵様へお話を通すつもりです」
「それでも、私も一緒に行った方が……って、マー坊、私を背負うな!」
「ボツリヌス様。
コック料理長が腕によりをかけて準備していますよ」
コックが、腕によりをかけて、じゃと!?
ごくり。
……ふむ、そうかの。
じゃ、じゃあ、飯から先に食いに行くかの。
「では、爺や、お願いしようかの。
国王陛下に置かれましても、今後益々の……」
「やめろ、ボツリヌス。
挨拶は良いからさっさと食事を取って来い」
ふむ。
流石は良君。
私はマー坊におんぶされて地下の階段を上って行った。
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離れの屋敷中から大声と万歳が木霊する。
「「「「「聖女様、ばんざーい」」」」」
「どうしてこうなった!?」
私のしたことと言えば、命がけで1めいどとその一族郎党の処刑を防いだくらいじゃぞ!?
……あれ?
もしかして、これって結構凄いことなのか?
少なくともテーラーと同じことになる可能性もあるめいど達にとっては私は聖女と言っても過言ではないのかもしれぬ……。
しかし私のしたことと言えば。
①むきむきになる
②ぷち断食をする
③終わり!
だけじゃ。
しかも最後の最後でテーラーが全部を台無しにしおったし。
やはり、聖女の器ではないから、止めて欲しい。
「マー坊よ、お願いがあるんじゃが」
「なんでしょうかボツリヌス様。
どんなことでも!
なんなりと!」
マー坊も個性が変わっておる……。
「では言うぞ。
私のことを屋敷の者が『聖女』と言っておる
これを、止めてもらいたいのじゃ」
「成程、そんなことですか。
絶対に、いやです!」
「なぜえぇ!?」
「あ、ほら、食堂が見えてきました」
あちこちから聞こえる万歳聖女の声に、頭がくらくらした。
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「よぉ聖女様、久しぶりだなぁ」
コック総料理長が苦笑いしておる。
「コックも有難うの。
お主に染みついた食事の匂いを牢屋で嗅いだら。
私はお主を恨んでおったかもしれぬ」
「お……おぉ。
そこまで読まれていたか……
お前、マジで聖女なんじゃねえか」
「勘弁しておくれ……
それより、食事はまだかえ!!」
私が行儀悪く食器をすぷーんでちんちん鳴らしているとコックが奥へ引っ込んで。
……お粥を持って出てきおった。
鳥が丸丸一羽煮込まれた、お粥の様じゃ。
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参鶏湯
鶏肉、高麗人参、もち米、ニンニクなどを入れて煮込んだ料理。
普通の参鶏湯は脂っこくて病み上がりに食べる物ではない。
炎上マーケティングとして有名。
《特殊》 体力 大UP。
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……炎上まーけてぃんぐってなんじゃ?
まあ、脂っこそうではあるが、体力あっぷの特殊効果も付いてるしの、食べるしかないじゃろう。
もむもむ、むぐむぐ。
……むむ!
流石はコックじゃのう。
鶏肉の脂分を極限まで少なくし、逆に肉の旨味を強く引き立てることに成功しておる!
結果、全然脂っこくない、餓死寸前でも体に良さそうな乳粥風味に仕上がっておる。
「ハムッ ハフハフ、ハフッ!!」
必死に粥を頬張り、完食して笑顔で顔を上げると。
……周りの皆も笑顔で私の食べる様を眺めておった。
なんか恥ずかしいのう。まあ良い。
「参鶏湯、体に優しいお味でした」
私はご馳走様をして、一瞬気が抜けてしまって。
……そのまま意識が喪失した。
参鶏湯を食べたせいで意識を失ったんじゃないよ、念のため。
あと、短編小説書きましたので、お暇でしたら。
短編 『ナレーター「転生トラックドライバーの朝は早い」』
http://book1.adouzi.eu.org/n7629cq/
短編
『凶悪なテロリスト達が中学校の全校集会の最中に乱入して立て篭もりを始めたので、屋上でサボっていた俺とたまたま一緒だったDQNとオタクとで彼らを殲滅する事にした』
http://book1.adouzi.eu.org/n6987cq/




