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女王の華咲く日~新しい女王は六人の王配に愛されて華開く~  作者: リラックス夢土


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第95話 美雨に芽生える氷室への恋心


「私もぜひ氷室の剣舞を見てみたいです。剣舞には氷室が今お持ちになっている半月刀を使うのですか?」



 氷室の腰には立派な半月刀がその存在を誇示するように身に付けられている。

 美雨はまだ抜き身の半月刀を見たことはないがきっと長剣にも劣らないほどの切れ味がある刀に違いない。


 氷室に質問しながらも美雨は長剣を使っての剣舞を王宮で初めて見た時のことを思い出していた。

 女王の誕生日を祝う宴で剣舞が披露されたことがあったのだ。


 あの時は長剣を振るって剣舞を舞う男性の迫力に子供だった美雨は怯えてしまったのだがそのことに気付いた闇のお父様の十夜が安心させるように美雨の頭を撫でてくれた。

 頭を撫でられた美雨は安心して最後まで剣舞を見ることができた。



(あの時は闇のお父様のおかげで長剣の剣舞を最後まで見れたのよね。闇のお父様には感謝しなきゃ)



 美雨は無意識に桃色の花のネックレスを手で触る。

 その美雨の無意識の仕草に氷室の視線がチラリとネックレスに向くがそれは一瞬の出来事なので美雨が氷室の視線に気付くことはなかった。



「この半月刀ではなく儀式用の二本の半月刀を使います。私が持っているのは実戦用の半月刀なので」


「儀式用と実戦用があるのですか?」


「はい。儀式用は刃を潰しているので物を切ることはできません。しかし普通の生活では物が切れない半月刀では役にたちませんからね。今、私が持っている半月刀は()()()()()()()切れますよ」



 氷室の言葉に僅かな含みを感じた美雨の脳裏に水族に被害を及ぼす海賊のことが浮かぶ。

 「どんなモノでも」という言葉の中には海賊を斬ったこともあるという意味が含まれているに違いない。



(氷室様は水族の族長の息子ですもの。水族の民を救うために海賊を殺すこともあるのね。それは仕方ないことだけど……できれば海賊であっても氷室様に人を斬る行為をして欲しくはないわ)



 民を護るために敵を倒して殺す。その行為を美雨は非難するつもりはない。

 誰かがそうしなければ代わりに民の命が奪われてしまうのだから。


 美雨が願うのは自分が愛する者にその手を血で汚してもらいたくないということだ。

 相手がどんな悪人であってもその者の命を奪えば命を奪った方の心も傷つくはず。

 愛する者の心が傷つくのを美雨は見たくない。


 海賊がいなくなれば氷室が海賊と争うこともなくなる。

 氷室の心がこれ以上傷つくことがないように願うならやはり一刻も早く女王の代替わりを行い完璧な守護結界を張らねばならないだろう。

 完璧な守護結界こそがこの国や民に真の平和をもたらすのだ。


 そこでふと美雨は思う。

 氷室が人を斬って氷室の心が傷つくのを見たくないと思うということは自分は氷室を愛する者として意識しているということだろうかと。



(私は光主様にも人を殺して欲しくないわ。そして氷室様にも……これって氷室様に光主様を想う気持ちと同じ気持ちを抱いているってこと……?)



 考えれば考えるほど美雨の中で氷室の存在が大きくなり光主を想う気持ちと同じとしか思えなくなっていく。



(これって氷室様のことも、あ、愛してるってことになるの?)



 複数の男性に恋することなどあるだろうかと疑っていた美雨だが己の心が既に氷室の存在を受け入れている事実に慄く。

 そのことを意識した途端、美雨の顔が朱に染まった。



「美雨。なんだか顔が赤いようですが熱でもあるのですか? 体調が悪いようでしたら本日の海芳丸の視察を取り止めてもかまいませんが」


「……っ! い、いえ、違います! あ、歩いていたら身体が温まってきただけです! 大丈夫ですから視察に行きます!」



 心配する氷室に慌てて美雨は首を横に振ってなんとか誤魔化す。

 たとえ今現在氷室に対して好意を持っていてもそれだけで氷室を水の王配に選ぶことはできない。


 氷室に水の王配としての適性と力があるのか。

 それにもしかしたら氷室以外の水の王配候補者たちにも自分は同じく恋をしないとは言えない。

 自分のことを多情の女だとはあまり思いたくないが現実に光主と同様の想いを氷室に抱いているのだからその可能性だってあるのだ。



(もしそうなったら氷室様と他の水の王配候補者のどちらかを水の王配に選ぶことになるだろうし……やはり短絡的な想いで氷室様を選んではいけないわよね。それに氷室様が抱える闇の正体もまだ分からないし……)



 どんなに美雨に美しく微笑んでいても氷室の瞳の奥にある闇は消えていない。

 氷室を水の王配に選ぶことになったとしてもその闇が消えなければ氷室が美雨の真の水の王配になるのは無理な気がするのだ。

 なので美雨は一度氷室に対する想いについて蓋をすることにした。



「あそこが港です。中央の桟橋に停泊しているのが「海芳丸」です」



 自分の考えに気を取られているうちに港に着いたらしい。

 美雨の視界に巨大な船の姿が入ってきた。海芳丸は戦艦らしく迫力のある畏怖堂々とした船だ。



(これが海芳丸なのね。なんて大きな船なのかしら!)



 初めて戦艦を目の当たりにした美雨は感動で身体が震えた。

 この船が水族の民を華天国という国を海賊や侵略してくる敵から護っている船なのだ。

 美雨は心の中で民や国を護る「海芳丸」に感謝の気持ちを伝える。



「では戦艦の中をご案内しましょう。舷梯タラップを渡って船に乗りますのでこちらへどうぞ」



 戦艦に乗り込むために陸地と戦艦の間に小さな橋のようなものがありそこを渡って行くらしい。



舷梯タラップは揺れるので気を付けてください。あと持ち物を海に落とさないようにもしてくださいね。海に落としたら取ることは難しいですから」



 美雨は大きな荷物は持って来てはいないが海に落としたら取ることが難しいと聞いてネックレスを手で掴む。

 このネックレスは闇のお父様の形見なので失くすわけにはいかないのだ。


 すると氷室の視線がネックレスを掴む美雨の手にとまる。

 そして僅かに低い声で美雨に氷室が話しかけてきた。



「ずいぶんと美雨はその桃色の花のネックレスを大切にしてるようですが……それは光主からの贈り物ですか?」


「え?」


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