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女王の華咲く日~新しい女王は六人の王配に愛されて華開く~  作者: リラックス夢土


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第94話 海龍神祭りの準備


(どうしよう。光主様も氷室様も今にも斬り合いを始めそうな雰囲気だわ)



 美雨を挟んでお互いに不敵な笑みを浮かべる二人を見て美雨は焦る。

 どちらにも好意を持つ者としては二人が争うところなど見たくはない。

 ここは二人に冷静になってもらうことが大切だ。

 そのためには一度、この二人を物理的に離した方がいいだろうと美雨は判断した。



「氷室様。出かけましょう。海芳丸を早く見たいですわ」



 多少強引ではあるが美雨が氷室にそう声をかけて部屋を出るとすぐに氷室も美雨の後に続いて部屋を出て来る。

 光主が部屋を出て来る気配はないので二人を引き離す作戦はうまくいったようだ。


 もし自分が氷室を水の王配として選んだら当然光主と仲良くしてもらいたいのだが現状では難しそうだ。

 それにまだ美雨は氷室を自分の水の王配に選ぶと決めているわけではない。

 あくまで氷室という人物が気になっているに過ぎない。



(光主様と仲良くしてもらうのは氷室様が私の水の王配に決定してからでも遅くはないわよね。そうなればさすがに光主様だって氷室様のことを認めてくださるはずだし)



 同じ王配の立場になれば光主も氷室に対する態度を軟化させるはずだ。

 美雨が女王になることを応援してくれる光主が女王に必要不可欠な水の王配を排除するわけがないのだから。

 それに氷室だって自分が水の王配になれば同じ立場の光主に敬意を払うようになるだろう。


 屋敷の門の外に出ると氷室が美雨に声をかけてくる。



「美雨様。港に行く道はこちらです。人が多いので気を付けてくださいね」


「はい、氷室様」



 すると氷室が何かを考えるような仕草をした。

 どうかしたのかと美雨が思っていると氷室が美雨の顔を見つめる。



「美雨様。ひとつお尋ねしたいのですが光の王配の光主のことは「光主様」とは呼んでいませんよね?」


「え? あ、はい。光主が敬称無しで呼んで欲しいと願ったので光主と呼んでいますが、それが何か?」



 美雨の心の中ではずっと「光主様」と呼んでしまうのだが氷室に美雨の心の中の話までする必要はないだろう。



「では私のことも敬称無しで氷室と呼んでくださいませんか?」


「……っ!」



(氷室様のことも敬称無しで呼ぶの? なんか氷室様は言葉も丁寧だし礼儀正しさが身に付いているしそんな方を敬称無しで呼んでいいのかな。光主様を光主と呼ぶ時より難しいかも……)



 美雨から見た氷室の印象は澄んだ清水を思わせるような汚れが一切ない聖人と言ってもいいくらいの清らかな印象だ。

 王女の自分が言うのもなんだが敬称をつけずに呼ぶことが不敬に当たる気がしてならない。

 でも本人が望むなら敬称無しで呼んだ方がいいのかもと美雨は勇気を出して氷室の名前を呼ぶことに決めた。



「で、では……ひ、氷室……こ、これで、いいですか……?」


「……っ! ……意外とクルものですね、これは……」



 勇気を振り絞って氷室の名前を敬称をつけずに呼ぶと氷室は己の手で顔を隠すようにして何事か呟いた。

 呟いた声が小さいので美雨は氷室の言葉を聞き取れない。



「え? 何か言いましたか?」


「いえ、何でもありません。では私も美雨様のことを敬称無しでお呼びしてもよろしいですか?」


「は、はい! ど、どうぞ…」


「では失礼して……美雨……貴女はとても美しい瞳をしていらっしゃいますね。まるで海の輝きを凝縮したような深く綺麗な瞳です」


「……っ!」



 自分の名前を呼ばれるだけでもドクンッと胸の鼓動が高鳴ったのにその後に続く美雨の瞳の美しさを称える言葉に美雨は赤面してしまう。

 氷室の美しい顔で美しい声で褒め称えられて喜ばない女性がいるだろうか。



(ダメだわ! 氷室様に名前を呼ばれるだけで心臓が破裂しそうになっちゃう。こ、これに、慣れないといけないの!?)



 美雨のことを氷室が敬称をつけずに呼ぶのは今後も続くことが予想される。

 自分の心臓は持つだろうかと本気で美雨は心配になってしまう。



「あ、ありがとう、ご、ございます…」



 なんとかお礼を返した美雨だがこの先々のことを考えると嬉しさと怖さが同時に襲ってくる感じだ。

 すると氷室はニコリと美雨の微笑む。微笑む氷室を見ただけで美雨の身体の熱が一気に上がる。



「では、美雨。港まで歩きましょうか?」


「はい、…ひ、氷室……」



 羞恥心で熱を持った自分の顔を冷ますため氷室に気付かれないように美雨は何度も小さく深呼吸を繰り返す。

 それに対して氷室の表情はどこか嬉しそうだ。


 そして二人は水の都の道を歩き出した。


 氷室のことを意識すると胸がドキドキしてしまうので美雨は水の都の街並みに目を向ける。

 通りには多くの水族の人たちがいて賑わっていた。

 よく見ると通りにある家には色とりどりの小さな布で作った飾りがつけられている。



(あの飾りは何かしら……? 水族の間で流行しているものなのかな……?)



「あの、ひ、氷室…」


「何でしょうか? 美雨」



 呼び慣れない氷室の名前を呼びながらも美雨は気になったことを質問する。



「家を飾っている色とりどりの飾りは水族で流行しているものですか?」


「ああ、あれはもうすぐ開催される『海龍神祭り』のための飾りです。この通りは祭りの時に使われる通りになるので飾り付けをしているのですよ。他にもいろいろ準備をしている民が今は多いでしょうね」


「海龍神祭りって、海龍神が関係するお祭りですか?」


「ええ、そうです。美雨の滞在中に祭りが行われるでしょうから美雨も祭りに参加できるかもしれませんね」



(ぜひ参加したいわ! 民に混ざってお祭りを経験できるなんてこれから先あるかどうか分からないもの!)



 祭りと聞いて美雨は心の中で大喜びをする。

 美雨は民に混ざって祭りに参加した経験などない。

 この機会を逃すわけにはいかないと美雨は祭りへ参加することを固く決意する。



「氷室もお祭りに参加するんですよね?」


「ええ。ただ私は当日海龍神祭りの舞台で海龍神に捧げる剣舞を行う予定なので半分は仕事ですが」



(氷室様が剣舞を行うの!? それはぜひ見ないと後悔しそうだわ! だって氷室様が剣を使って舞う姿なんて絶対格好いいに決まってるもの!)


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