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女王の華咲く日~新しい女王は六人の王配に愛されて華開く~  作者: リラックス夢土


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第86話 水の王配候補者たち

「では水の王配候補者たちのところにご案内しますのでこちらへどうぞ」


「はい」


 水の族長の屋敷に着いた次の日の午前中。

 族長の海羽が美雨を呼びに部屋へとやって来た。


 前日に海羽が約束していた通りに水の王配候補者たちとの顔合わせが行われる。

 美雨は巫女服に着替えて海羽に促されて部屋を出た。


 光の族長の澄光は神官を兼ねていたからかゆったりとした布が重なるような衣服を着ていたが水の族長の海羽は動きやすい上下に分かれた衣服を着ていて腰には湾曲した刀を差している。

 その刀の形を美雨はあまり見たことがなく興味を引かれた。


「あの海羽様。海羽様が腰に差しておられる曲がった刀は水族特有のモノですか?」


 廊下を海羽と歩きながら美雨はそんな質問をしてみる。


「ああ、これは半月刀という刀ですね。水族特有のモノというわけではありませんがこの刀を愛用している水族の男は多いですよ」


「そうなんですか」


「普通の長剣より扱いに慣れるまで少し時間がかかるかもしれません。ですが慣れれば威力は強いです。私の息子の中でこの半月刀を自分の身体の一部のように扱う見事な腕を持った氷室という者もおります。我が息子ながら半月刀を使わせたら水族で氷室に敵う者はいないでしょうな」


(氷室様という海羽様の息子さんがいらっしゃるのね。半月刀の腕前が強いということは大きな身体つきの屈強な男性かしら?)


 剣術の腕が優れている光主の身体つきはとてもたくましい。

 何度も美雨は光主に抱かれて運ばれたことがあるが美雨の体重など感じてないかのような力強さだ。


 その印象があるので半月刀という剣術が優れている氷室という男性もたくましい身体つきなのではないかと想像してしまう。

 別に美雨は自分の王配になる者がみんな屈強な男が良いとまでは思っていない。


(だけど光主様に抱っこされると安心感があるからひ弱な男性よりはたくましい男性の方がいいかも)


 美雨の脳裏に光主に抱っこされた時に感じる筋肉質な胸板の感触が浮かんできて頬が熱くなってしまう。

 慌てて美雨は頭を軽く振って淫らな妄想を打ち消す。


(今は光主様のことは一度頭の片隅に置いておいて水の王配選びに集中しなくちゃ!)


「その氷室様も水の王配候補者の方ですか?」


「ええ、一応。私の息子ですし素質はあるのでね。まぁ、いささか気難しい男ではありますが……」


(氷室様という方は気難しい方なの? では言葉には気を付けないとかしら?)


 その氷室という人物が美雨の水の王配になるとは限らないができれば水の王配候補者たちとも全員と話をしてみたい。

 気難しい人物だと最初に分かっていれば美雨だってその相手にそれ相応の対応ができる。


「この部屋に水の王配候補者たちがいます。彼らにはあらかじめ美雨様が希望された通りに美雨様のことを王女殿下ではなく美雨様と呼ぶように伝えてありますので」


「分かりました」


 海羽の言葉に美雨は了承の返事をした。

 美雨の前の扉が開かれて美雨は海羽に続き部屋に入る。


 そこには5人の水族の男性たちがいた。

 5人の男性たちは椅子に座っていたが美雨を見て一斉に立ち上がり一礼をする。


(この人たちが水の王配候補者の方たちね)


 この中に自分の未来の夫のひとりがいるのだと思うと美雨も緊張を隠せない。


「この方が第三王女の美雨様だ。美雨様、一言どうぞ彼らに言葉をかけてあげてください」


 美雨は5人の男性の視線が自分に集まるのを感じながらスウッと息を吸い込み挨拶をする。


「第三王女の美雨です。皆様にお会いできて嬉しく思います。よろしくお願いします」


 その言葉に5人の水の王配候補者たちは再び美雨に頭を下げた。


「ではここからは着席して自己紹介をいたします。美雨様も椅子へどうぞ」


 海羽に指定された席に美雨が座ると5人の水の王配候補者たちも着席する。

 テーブルを挟んで向かい合った形になったところで海羽も美雨の隣りに座った。


「では水の王配候補者としてそれぞれ美雨様に自己紹介をするように。順番は海人から始めなさい」


「分かりました。美雨様、初めまして。私は海人かいとと申します」


 美雨から見て一番右側に座っていた人物が話し出す。

 この中の男性の中では一番の年長者に見える男性だ。


 短い銀髪で日焼けをしているのか少し肌の色は色黒だ。

 しかし美雨に向ける眼差しは優しい。


「私は水族の族長の長男で現在28歳です。少し美雨様とは年齢が離れていますがよろしくお願いします。普段は族長の手伝いを主にしています。水族に滞在中に困ったことがあれば相談してください。私のことは頼れる兄だと思ってくれると嬉しいです」


 にこやかな笑顔の海人だがその発言内容に美雨は違和感を覚える。

 海人は自分を兄のように思ってと言ったが海人は美雨の夫の候補者だ。


 ここでは頼れる兄ではなく頼れる夫になりたいと表現するべきではないだろうか。

 それに兄では結婚相手にはならない。


(私の考え過ぎかもだけど海人様には私の水の王配になる気がないんじゃないかしら)


 この言葉だけでは海人の意思を全て把握できるわけではないが美雨はそう感じた。

 だがいきなりここで貴方は水の王配になる気がないのですかとは聞けない。

 なので美雨はそこは深く追求しないことにした。


「はい。こちらこそよろしくお願いします」


 海人の挨拶が終わり美雨はその隣りに座る男性の方に視線を移し背筋がゾクリとした。

 輝く流れるような長い銀髪を紐で軽く縛り美雨を見つめるその男性の瞳は綺麗な青空のように明るい色だ。


 そして切れ長の瞳にスッと通った鼻筋の整った顔立ちはまるで神が作ったような美の彫刻のようにさえ思える。

 身体つきは海人より細身で繊細な感じを受けるがひ弱には見えない。


(なんて綺麗な人……まるで天女のような美しさだわ……)


 男性に天女という表現はおかしいかもしれないがその男性の美貌と細身の体型からそんな印象を美雨は受けた。

 光主のことも美形だと思っているがこの男性は光主とは別の種類の美しさと言えよう。

 この世には美しさにも種類があることを美雨は実感した。


「私は族長の次男の氷室ひむろと申します。現在24歳です。美雨様とお会いできたことを心より嬉しく思います」


 微笑む氷室の顔はまるで氷室の存在が至高の存在ではないかと錯覚するほどだ。

 この顔で微笑まれて心が揺れない女性などいないだろう。


 美雨の胸もドキドキと高鳴る。この高鳴りは光主と一緒にいる時にも感じるものだ。

 だがすぐに美雨は氷室の名前を聞いて先程の海羽の話を思い出した。


(この方が気難しい半月刀の腕前が強い氷室様なの……? とても剣を振り回すような人には見えないけど。それにこの方は……)


 氷室の美しさに目を奪われていたが美雨は氷室の明るい空色の瞳の中に見える僅かな感情を感じ取った。

 それは美しさに隠された暗い闇だ。


(なんで氷室様は微笑んでいるのにこんなにも悲しそうな瞳をしているのかしら……?)

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