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女王の華咲く日~新しい女王は六人の王配に愛されて華開く~  作者: リラックス夢土


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第72話 美雨の光の王配決定

「野乃。おかしなところはないわよね?」


「大丈夫ですよ。完璧です、美雨様」


 巫女服に着替えた美雨は野乃に最終的な確認をしてもらい自分の姿が映る鏡を覗き込む。

 やはり王女の正装のひとつである巫女服を身に付けると気持ちも引き締まるように感じる。


 光主のことを自分の光の王配に指名することを決めて周囲の親しい者たちには既にそのことを話していても正式に族長の前で光主に婚約を申し込むと思うと美雨も緊張を隠せない。

 もちろん光主が自分からの申し込みを断ることがないと分かっていても。


 すると部屋の扉がノックされた。

 光主が迎えに来たのだろうと思い美雨は入室許可を出す。


「どうぞ」


 扉が開き予想通りの人物が部屋に入って来る。


「少し遅くなってすまない。ちょっと用事を片付けていたから」


 美雨に謝る光主の姿を見て美雨は息が止まるかと思った。

 白い色を基調としていながら所々に金色の飾りや色を取り入れた鮮やかな騎士服を着た光主は神官服とは違った魅力溢れる姿だ。


(どうしよう! 光主様が素敵過ぎる!)


 先程、光主に「俺の正装姿を見て興奮して倒れるなよ」とからかわれた美雨だったが光主の言った通り胸がドキドキして心臓が興奮でおかしくなりそうだった。

 しかしここで本当に倒れてしまったら光主との正式な婚約が遠退いてしまう。


 美雨は光主に気付かれないように興奮で乱れた呼吸を整えた。


「ん? どうかしたか? 美雨。まさか気分でも悪いのか?」


「い、いえ、何でもありません! そ、それでは澄光様のもとに参りましょうか」


 心配する光主を美雨は笑顔を作り誤魔化す。

 光主は一瞬怪訝そうな顔をしたがすぐにスッと美雨に片手を差し出した。


「ご案内致しますので御手を。俺の女王様」


 茶化しながらも美雨を見つめる金の瞳は愛しさを湛えている。

 美雨は頬を朱くして照れながらも光主の差し出した手に自分の手を重ねた。


「はい。案内をよろしくお願い致します」


 そのまま光主と美雨は部屋を出て族長の部屋へと向かう。

 族長も同じ西棟に自分の部屋があるのですぐに族長の部屋へと辿り着いた。


 光主が扉をノックすると澄光の入室許可の声が聞こえたので二人で部屋に入る。

 二人の姿を見た澄光は見ていた書類を机に置き美雨たちに近付いて来た。


「美雨様と光主が一緒に正装姿で現れるということは美雨様の光の王配の指名に関するお話ですかな?」


「は、はい。そうです」


 にこやかに微笑む澄光に美雨は緊張しながら答える。

 光主は美雨の手を離して美雨の隣りに立つ。


(さあ、光主様を光の王配に選ぶって澄光様にご報告するのよ、美雨!)


 緊張する自分に活を入れながら美雨はスウッと息を吸い込み澄光の顔を見つめた。


「光族の族長の澄光様。華天国第三王女の美雨は自分の光の王配として光主様を指名し婚約を申し込みます」


「美雨様の光の王配として光主を指名するのですね。では指名を受けた光主の返事を聞かせてもらおうか」


 美雨が隣りに立つ光主をチラリと見ると光主は真剣な表情をしている。

 その真剣な凛々しい横顔さえ美雨の瞳には輝いて映った。


「私、光族王配候補者の光主は謹んで美雨王女殿下の光の王配になることをお受けいたします」


「では私の前で婚約と忠誠の誓いを立てなさい」


 美雨と光主は向き合う形になり美雨の前に光主が跪く。

 そしてそっと美雨が片手を差し出すとその手を取り光主が美雨を見上げる。


「私の愛も力も持てる全てを私の女王陛下に捧げます。貴女の光の王配として生涯を捧げ愛することをここに誓います」


「私も光主様を光の王配として愛することを誓います」


 美雨の深い青い瞳と光主の金の瞳がお互いの姿を映し出す。

 光主は美雨の手に誓いの口づけをした。


(光主様……ありがとうございます)


 感激のあまり美雨の瞳に涙が浮かぶ。


「泣くな、美雨。せっかくの婚約の誓いなんだから」


「ご、ごめんなさい…で、でも、嬉しくて……」


 跪いていた光主は立ち上がり美雨の頭を優しく撫でてくれる。

 そんな二人の様子を澄光は優しい笑みを浮かべて見つめていた。


「ではこれで光主を美雨王女殿下の光の王配とすることを光族の族長として認めることにします。美雨様。光主はまだ若く至らぬこともあるかと思いますが光主のことをよろしくお願いします」


 澄光が美雨に頭を下げるので美雨は零れそうになる涙を拭って慌てて澄光に言葉をかける。


「とんでもありません、澄光様。私の方が光主様に迷惑かけてばかりで……」


「美雨のことで迷惑に思ったことはひとつもないさ。族長の許可も下りたしこれで美雨を堂々と可愛がってやれるな」


「……っ!」


 今でも十分光主に甘やかされて可愛がってもらっていると思うのにこれからさらに美雨を可愛がると宣言する光主の言葉に美雨は信じられない気持ちになる。


「こ、これ以上、甘やかされたら自分がダメになってしまいます! 光主!」


「しっかり者の美雨なら俺が多少甘やかしてもダメな人間にはならないから安心しろ。……本当は俺がいないとダメなようにしたいがな」


(え? 今なんか物騒な言葉が聞こえたような……?)


 美雨が慌てて光主の顔を見るとそこにはにこやかに微笑む表情しかない。


(きっと私の聞き違いね……)


 こんな優しい光主が美雨のためにならないことなどするはずがないし言うはずもない。

 美雨がそう思った時に「コホン」という咳払いが聞こえた。


「仲が良いのはいいことだと思うが父親の前でいちゃつくのはどうかと思うぞ、光主」


 澄光の声で美雨はここがまだ族長の部屋だと思い出し恥ずかしさに顔を真っ赤にして身を縮こませる。


「そうですね。俺も可愛い美雨の姿は父上にも見せたくないので続きは美雨の部屋でします。では失礼します、族長」


 光主は美雨の手を取りさっさと部屋を出て行こうとする。


「あ、あの、澄光様! あ、ありがとうございました!」


 なんとか澄光にお礼を言った美雨だがそのまま光主に連れられて族長の部屋を出てしまう。

 部屋を出る直前、美雨の視界にチラリと入ってきたのは厳しい視線を光主の背中に向ける澄光の姿だった。


(澄光様……? なぜあんな厳しい表情で光主様を見ているのかしら……?)


 そのことが気になった美雨だがその後すぐに午後のお茶の時間になり再び光主にお菓子を食べさせられるという甘やかしから逃れるために必死になってしまい美雨の記憶から澄光のことは消えてしまった。


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