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女王の華咲く日~新しい女王は六人の王配に愛されて華開く~  作者: リラックス夢土


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第70話 無事だった巫女服

「美雨様。お喜びください。美雨様の巫女服が無事でしたわ」


 光主に我儘を言われて結局光主の手で食事を食べさせられた美雨がちょうど食事を終えると野乃が喜々とした声を上げて部屋に戻ってきた。

 巫女服は各部族での族長や王配候補者に挨拶する時のために持って来た王女の正装の服のひとつだ。


「まあ、本当に? よく無事だったわね」


「この巫女服はしばらく使わないだろうと当麻様たちの部屋の荷物箱に入れて置いたのです。美雨様の部屋にあったものはほとんど燃えてしまいましたが当麻様たちの部屋は二つ隣りの部屋だったのでそこまで火の手が回らなかったようです」


「そうだったのね。でも他の物は光の都で代用品が買えるけど巫女服はさすがに代用品はないから助かったわ」


 王女の巫女服は王女が成人する時に作られるモノで特別な生地を使い手縫いで仕上げるため時間もかかり通常ひとりの王女に対して一着しか作られない特別なものなのだ。

 それが無事だったのは不幸中の幸いだった。


「汚れたり焼け焦げた部分もないの?」


「はい。荷物箱の奥に入れておいたので大丈夫です。今すぐにでも着られますよ」


「それなら悪いけど今からその巫女服に着替えるのを手伝ってくれない? 野乃」


「え? 巫女服を今着られるのですか?」


 野乃が驚いた表情をしたので美雨はまだ部屋にいた光主の方にチラリと視線をやってから頷いた。


「これから族長の澄光様に光主を光の王配に指名するって伝えるところだったの。できれば正装姿で澄光様にお会いしたいから」


「まあまあ、そうでございましたか。ではすぐにご準備いたしましょう」


 野乃は美雨と光主の二人の顔を交互に見ながらにこやかに微笑む。

 すると光主が空いたお皿をトレイに乗せながら美雨に声をかけた。


「それなら俺も正装に着替えるとするか。美雨と婚約するのに普段着という訳にはいかないしな」


「光主の正装姿って神官の服ですか?」


「いいや。今回は光族の正装姿だ。簡単に言えば騎士服に近い姿だな。美雨の父親の光の王配も式典などの時に着ているはずだから美雨も見たことあるはずだ」


 美雨は自分の光のお父様である空也のことを思い出す。


 確かに光の王配の空也は式典の時に騎士服を着ていた。

 だが通常の騎士服と違うのは纏うマントの図柄が光族の紋章ではなく王家の紋章であることだ。


 当然光主は美雨と婚約し美雨の光の王配となってもまだこの華天国の光の王配に決定した訳ではないから王家の紋章入りのマントを持っているはずはないがそれ以外の部分の服装は同じだと言いたいのだろう。


(光主様の騎士服姿が見られるなんて嬉しいわ)


 美雨の父親たちもそれなりに見目麗しい顔立ちをしている人物たちだが式典用の騎士服に着替えた姿は普段より何倍も格好良く見えたものだ。

 もし光主がその正装姿をしたら絶対に素敵だと確信できる。


「はい。光のお父様の正装姿は覚えています。きっと光主もお似合いになると思うのでぜひ光主の正装姿を見たいです」


(こんなこと言ったらはしたない女だって思われるかしら……)


 ドキドキしながら美雨がそう答えると光主が「フッ」と僅かに口元に笑みを浮かべた。


「俺の正装姿を見て格好良すぎるとか思って興奮して倒れるなよ、美雨」


「……っ! だ、大丈夫です!」


 自分の心を読まれたのかと思い美雨は焦って返事をする。


「じゃあ、一時間後に迎えに来るから美雨も準備をして待っててくれ」


「はい」


 光主が部屋を出て行くと美雨は野乃に手伝ってもらいながらさっそく巫女服に着替え始めた。






 美雨の部屋を出た光主は厨房にトレイと空のお皿を返して自分の部屋へと向かう。

 その途中で光拓の部屋の前を通りかかるとちょうど光拓が自分の部屋から出て来た。


「あ、光主兄さん。今日の美雨様への餌付けは終わったの?」


「なんだと?」


「だって美雨様に自らご飯を食べさせてあげてるらしいじゃん。親鳥が雛鳥に食べさせてあげるみたいにさ」


「誰がそんなことを言いふらしてるんだ?」


「みんな知ってるよ。光主兄さんは火事の後から美雨様とほぼ一緒に過ごしてるし美雨様を溺愛してるの隠そうとしてないでしょ?」


 さも当たり前のことだと言う光拓を光主は苦々しい表情で見つめる。

 光拓の言う通り美雨への好意を光主はもう周囲に隠すつもりはない。


 美雨を溺愛している自覚もある。

 だが美雨に食事を食べさせることを親鳥が雛鳥に餌を与えるのと同じだと言われるのは不本意だ。


「俺は美雨の親鳥になったつもりはない。親鳥が雛鳥に恋情を持つ訳ないだろうが。不愉快だ、謝れ」


「ハハハ、それもそうだよね。親鳥が雛鳥に手を出したら犯罪だよね。ごめんね、光主兄さん。でもちょうど良かった。光主兄さんに少し話しておきたいことがあったんだ。今、時間ある?」


「これから美雨との婚約を族長に報告に行くから正装に着替えないとなんだ。あまり時間はないが急ぎか?」


「ようやく正式な美雨様の婚約者になれるのか。それならなおさら美雨様と婚約する者には知っておいてもらいたい情報だよ」


「いったい何の情報だ?」


「東棟の火事の原因調査で判明したことだよ。実は父上から俺に火事の原因を調査するように命令が出て調べたんだ。そしたら気になることがあってさ」


 光拓は真剣な表情になる。

 その表情から光拓の気になることというのが重要な案件だと察しがついた。


 光主自身、あの火事は故意に起こされた放火ではないかと疑っている。

 犯人が捕まったという情報は聞いていないが犯人に繋がる何かの情報を光拓は手に入れたのかもしれない。

 美雨をこれから護るためにも敵の情報は重要だ。


「分かった。手短に聞こう。お前の部屋でいいか?」


「うん。どうぞ」


 光拓が自分の部屋の扉を開けたので光主は部屋に入った。

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