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女王の華咲く日~新しい女王は六人の王配に愛されて華開く~  作者: リラックス夢土


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第69話 光主を愛している証

「美雨、食事を持って来たぞ」


「光主、ありがとうございます。いつもお忙しい中、すみません」


 美雨は自分のためにトレイに料理を乗せて持って来てくれた光主にお礼を言う。

 火事があってから数日が経過していた。


 喉に痛みがあった美雨は医師の診察を受けた結果、火事の煙により喉に僅かに炎症を負ったことが分かった。

 医師からは数日で治ると言われたが治るまでは柔らかい喉に刺激を与えない食事をするようにと指示を受けたので光主が運んできた料理は粥や果物などだ。


 客室のある東棟が火事で使えなくなったので美雨が今滞在しているのは光主たちも住んでいる西棟の部屋だ。

 そのせいもあって「美雨の看病は俺がする」と光主は宣言し美雨の食事を毎回持ってきてくれる。


 最初は侍女の野乃が食堂まで美雨の料理を取りに行くと申し出たのだがそれは光主によってあっさり却下されてしまった。

 光主曰く、野乃たちには美雨の食事の時間に火事になった美雨の部屋の荷物でまだ使えそうな物が残っていないかを判断する作業を頼みたいとのこと。

 なので野乃は美雨が光主と一緒に過ごしている間は東棟に行って作業することが続いていた。


 光主はトレイで持ってきた料理を美雨の前のテーブルに置く。


「美雨。喉の調子はどうだ?」


「もうほとんど違和感は無いし咳も出ません。話も普通にできますし大丈夫ですよ」


「そうか。それは良かった」


 料理を並べ終わると美雨が座っている椅子の隣りの椅子に光主も座る。

 それを合図にしたかのように野乃が美雨に声をかけた。


「では美雨様。私は火事の片付けに行ってきますね」


「ええ、分かったわ」


 野乃が部屋を出て行くと美雨は光主と二人になる。

 始めは光主と二人きりになるだけで緊張したが今は光主が隣りにいると安心感を感じていた。

 ただ美雨はひとつだけ困っていることがある。


「さあ、美雨。食事をしよう。口を開けて」


 スプーンで粥をすくった光主がふうふうと粥に息を吹きかけ冷ましてくれる。

 それを美雨の口に近付けて食べさせようとしてきた。


(やっぱりこれって恥ずかしいわ……)


 美雨の困りごとは光主が自分の手で美雨に食事をさせようとすることだ。

 ケガをしたのは喉だけなので美雨は自分で食事をすることができる。

 わざわざ光主に食べさせてもらう必要はない。


 しかし美雨が喉にケガを負った時に初めて食べた粥が少し熱くて咳き込んだ姿を見てから光主の態度が一変しケガが治るまでは自分が美雨に食事をさせると主張したのだ。

 そして熱い粥に息を吹きかけて冷ますと美雨にそれを食べさせてくれた。

 羞恥心は覚えたが美雨は光主に感謝の気持ちを伝えた。


 美雨はその時だけのことだと思っていたのだがそれから光主は毎回自分の手で美雨に食事を与えるようになってしまった。

 たとえ二人きりとはいえ恥ずかしい行為だし何よりこれでは美雨は食事もひとりではできない人間になってしまう。


(今日こそもう自分で食事するって言わないと!)


「こ、光主。もう喉のケガは治りましたし食事は自分でしますから」


「……俺のことはもう必要ないのか?」


「…っ!」


 まるで飼い主に捨てられた犬のように悲しい表情を見せる光主の顔を見て美雨は胸が痛むような気がしたが慌てて自分に活を入れる。

 昨日もこの光主の悲しい表情に決意が流されて結局光主に食事を食べさせてもらってしまったのだ。

 ここで流されてはいつまでもこの状況が続いてしまう。


「いえ、そういうことではなく食事は自分でできると言いたいだけです。私は光主のことを必要としています。だから光主のことを光の王配に指名すると決めたのですから」


 喉のケガもほぼ治ったのでそろそろ光主との婚約を澄光に報告しようと思っている。

 すると光主はスプーンを皿に置いた。


「それなら俺を愛して必要としている証をもらってもいいか?」


「証ですか……?」


「そう。つまりこういうこと」


 光主の顔が美雨の顔に近付き驚いてギュッと目を閉じてしまう。

 次の瞬間、美雨の唇に柔らかいモノが触れる。

 一瞬遅れてそれが光主の唇だと気付いた。


(……え? わ、私、光主様と口づけしてる……?)


 頭の中が真っ白になって美雨の思考が停止した。

 そんな美雨の唇を軽く食むように口づけをした後、光主の唇が美雨から離れる。


「美雨の唇は甘いな。美雨はどれだけ俺を溺れさせれば気が済むんだ?」


 優しく微笑む光主の金の瞳には美雨への愛情が溢れていた。

 その瞳に吸い込まれそうになり頭がクラクラとしてしまう。


「し、知りません! ……で、でも、私は、こ、光主のこと……愛してます」


 顔を真っ赤にして羞恥に襲われながらも美雨は自分の気持ちを素直に光主に伝えた。


「ありがとう、美雨。俺も美雨を愛している。食事が終わったら族長のところに行って正式に光の王配として俺を指名してくれないか?」


「は、はい。分かりました」


「じゃあ、食事をさっさと済ませよう。はい、美雨、口をあ~んして」


 スプーンを再び手にした光主がニコリと微笑む。


「…っ! 光主! だからそれは……んむぅ」


 抗議しようとした美雨の口の中に光主はスプーンを入れてしまう。

 反射的に美雨は粥を飲み込んだ。


「……光主……」


 恨みがましい目で美雨が光主を見つめると光主は悪びれることなく次は果物を手に取り美雨に差し出す。


「美雨に食べさせるのはこの食事で最後にするから。ね、俺の我儘だと思って許してくれよ、美雨」


 甘い声でお願いされると美雨の心は強く拒絶できない。


「……本当にこれが最後ですからね!」


 美雨はそう宣言して光主が差し出した果物をパクッと口に入れた。

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