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女王の華咲く日~新しい女王は六人の王配に愛されて華開く~  作者: リラックス夢土


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第65話 王配を諫める者

「光主っ! しっかりして!」


 美雨の目の前で雷神が姿を変えた白い雷光に貫かれた光主の手を握り美雨はそう叫ぶ。

 すると何か言いたそうに光主の唇が震えたがそのまま光主は意識を失った。


(光主様の手当てをしなきゃ!)


 美雨が慌てて光主に対して癒しの力を使おうとするとなぜかその力が使えない。

 いや、使えないのではなく美雨の癒しの力を光主の身体に注ぎ込もうとすると光主の身体がその力を跳ね返すのだ。


「え? これって……」


 癒しの力を受け付けない時があることを美雨は知っている。

 それは相手が癒しの力が不要なほど健康体である場合だ。


 だが白い雷光に貫かれてその雷光が光主の身体の中に消えたのを美雨は確かに見た。

 そしてその後光主は倒れ込み悶え苦しんだのだ。そんな光主がケガもしていない身体だとは思えない。


 すると美雨の脳裏に声が聞こえた。


『女よ。この男に癒しの力は必要ない。この男が倒れたのは雷神の我を宿したためだ。我の存在にこの男の身体が馴染めば自然に回復する』


 その声は確かに雷神の声だった。


(雷神が光主様の身体に宿ったの……? それは儀式が成功して雷神の加護を受けられたということ……?)


 美雨は意識を失っている光主の様子を見る。

 意識を集中すると光主の身体の中に何か強大な霊力の塊が蠢いているようにも感じた。

 もしかしたらその霊力の塊が雷神なのかもしれない。


「光主兄さーん!」


 その時、広場に新たな声が聞こえた。

 声のした方を見るとそこには馬に乗って駆け付けて来る数人の男たちの姿が見える。


 先頭の馬に乗っているのは光拓でその後ろには族長の澄光の姿も確認できた。

 おそらく「雷神降ろしの儀式」による異変に気付いて駆け付けて来たのだろう。


(良かった。助けが来てくれたわ)


 たとえ雷神に「自然に回復する」と言われても光主は意識を失ったままなのだからこのまま広場に放置しておくことなどできない。

 雷神の存在が光主の身体に馴染むまで安全な場所で安静にしておくべきだろう。


「美雨様もおられたのですか? ケガなどはされてませんか?」


 馬から降りて来た澄光が美雨に気付き声をかけてくる。


「私は大丈夫です。それよりも光主様が意識を失ってしまったので太陽神殿まで光主様を連れて行ってもらえないでしょうか?」


「それはもちろんです。……ですがこの魔法陣といい、光主は「雷神降ろしの儀式」を行ったのですね?」


「はい。光主様は私の光の王配になるために雷神をその身に宿されました」


 族長である澄光に嘘を吐いても仕方ない。

 それに美雨は光主が目を覚ましたら光主を自分の光の王配として指名するつもりだ。


 王配候補者と女王候補者の婚約は最終的には族長が承認して成立する。

 既に光主を光の婚約者として選ぶと決めている美雨はもう周囲に対して光主との関係を隠すつもりはなかった。


「なるほど。光主が美雨様の光の王配になるために儀式を行い雷神をその身に宿すとは余程光主は美雨様に好意を抱いていたのでしょう。我が息子ながら末恐ろしい男よ」


 澄光はそう言うと一緒に連れて来た男たちに光主を太陽神殿まで運ぶように指示を出す。

 丁寧に運ばれて行く光主の様子を見ていた美雨の肩をポンッと光拓が軽く叩いた。


「光主兄さんのことは心配しないで美雨様は私の馬に乗ってください」


「はい。光拓様」


 この場で美雨ができることはない。

 美雨は光拓に促されるまま光拓の馬に乗せてもらう。


「おい! 光拓! 私にも手を貸せ! 一人じゃ立てないんだ!」


 それまで存在をすっかり忘れていたが美雨を魔法陣から突き飛ばした月天の喚く声が聞こえた。

 どうやら魔法陣に逃げ込んだのはいいが恐怖で腰が抜けて立てなくなってるようだ。


「月天さんは雷神が怖くて腰が抜けただけでしょ? 自力で帰って来なよ」


 光拓は月天のことをあっさりと見捨てるように言うと美雨を乗せた馬に自分も乗る。


「その通りだ月天。お前が一人で安全な魔法陣の中にいる理由は聞かなくとも分かるが一応後日お前にも言い訳の機会を与えてやるから自力で帰って来るがいい」


 族長の澄光から厳しい視線と冷たい声を浴びせられて月天は黙り込んでしまった。


「では太陽神殿に戻るぞ」


 澄光の号令で美雨たちは太陽神殿を目指す。

 馬上に乗せられた光主の身体に負担がかからないようにゆっくりとした移動だ。


「美雨様が無事で良かったよ。雷神降ろしの儀式の気配がした時に光主兄さんだけじゃなく美雨様の姿も見えないって美雨様の従者の人から聞いて心配したんですよ」


「すみません。光拓様。でも光主様が私のために危険な儀式を行うのを聞いて立ち合いたいと言ったのは私なんです。どうか光主様を責めないでください」


 本来なら女王候補者の身を危険に晒すなど許されることではない。

 だが今回は美雨が危険を承知で儀式に立ち合うことを願ったのだ。だからそのことで光主が処罰を受けることがないようにしたい。


「結果的に美雨様は無事だったので父上が光主兄さんを処罰することはないと思いますよ。それに美雨様が光主兄さんを光の王配に選んだら処罰する意味もありませんし」


「え?」


「美雨様と正式に婚約することになれば光主兄さんはいずれこの国の光の王配になる可能性がある。いや、むしろ私はそうなると確信してます。光主兄さんが光の王配になったら族長の父上は光主兄さんと良好な関係を築いていかないといけない。そんな相手に罰を与えるなど光族にとっては不利益にしかならないってことです」


 光拓の言う通り族長よりも王配の方が身分は上だ。

 たとえ自分の息子だとしても光主がこの国の光の王配になれば澄光は光主に頭を下げることになるだろう。


 光族のためにも族長が光の王配と良好な関係を築いておくことは当たり前のように感じる。

 だけどそれは危険な関係とも美雨は思えた。


 もし光の王配になった光主が間違ったことをしたとしても族長にはそれを止めることができないのではないか。


「でも光拓様。たとえ王配だったとしても間違ったことを行うこともあるかもしれないのに族長もそのことを咎められないならそれは危険なことではないですか?」


「その時は女王である美雨様が光主兄さんの間違った行いを叱ってあげてください。光主兄さんは美雨様の言うことなら必ず受け入れるでしょうから」


 光拓の言葉に美雨はハッとした。


(そうだわ。王配の行為は女王が諫めることができる。それなら私が王配を諫めることのできる女王になればいい……)


「分かりました。私が王配の行動を諫めることのできる女王になれるように努力します」


「ぜひそうしてください、美雨様 ……半人半神の者を止めることができるのはその者が愛する者だけだから……」


 光拓が小さく呟いた後半部分の声を美雨は聞き取ることができなかった。


「え? すみませんがもう一度言ってくれますか?」


「いえ、なんでもありません。これから光主兄さんのことよろしくお願いします」 


「もちろんです。そのためにも光主様には回復していただかないと……」


 美雨は意識を失ったまま運ばれる光主を見つめる。


(光主様。早く回復してください。そして私の光の王配になってくださいね)


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