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女王の華咲く日~新しい女王は六人の王配に愛されて華開く~  作者: リラックス夢土


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第64話 雷神降ろしの儀式の成功

「光主ーっ!!」


 自分の背後から愛しい女性の悲鳴が聞こえ光主は金の瞳をカッと見開く。

 その瞬間、光主は自分の身体から今まで自分でも感じたことのない霊力が放たれたのを感じた。

 光主から放たれた霊力は美雨と光主の身体を護るように渦を巻きながら二人の身体を包み込むと同時に雷神の攻撃である雷光を跳ね飛ばした。


『我の攻撃を跳ね飛ばしただと!?』


 雷神の驚きの声が聞こえたがそれ以上に光主自身が自分から溢れる強大な霊力に戸惑っていた。

 自分自身が今感じている霊力は己が自覚していた自分の霊力より遥かに強大な力だ。

 この力があれば何でも自分の好きなことができてしまえるかのような感覚に陥るほどの。


(こんな力が俺の中にあったのか……? この霊力なら雷神とやり合っても勝てる気がする……)


 雷光の光が消え去り辺りは再び暗闇に支配される。

 だが雷神は相変わらず白い虎の身体に雷光を纏わせて光主に鋭い眼光を向けていた。


『やはり気のせいではなかったようだな。貴様と再び出会う日が来ることがあるとは思わなかったぞ』


「なんのことだ……? 俺が子供の時にお前に襲われた時のことを言ってるのか?」


 雷神の言葉の意味が分からない光主はそう問い返した。

 自分が雷神と関係を持ったのは月天が「雷神降ろしの儀式」に失敗したあの時しかない。


『子供の頃……? ああ、そういえば少し前にも我を呼び出した子供がいたな。お前はあの時にいた子供の一人だったか。我に襲われた背中の傷はまだ痛むか? ククク』


 雷神はその時のことを思い出したのか可笑しそうに笑う。

 そんな雷神の態度に光主はムッと怒りを感じる。


 あの時のことは雷神にとってたいした出来事ではなかったのかもしれないが背中に傷を負った光主からみれば自分の生死がかかった事件だったのだ。

 簡単に「背中の傷は痛むか」と笑って済まされる話ではない。


 だがその時の背中の傷は美雨が癒しの力で治してくれた。

 そして今感じる自分が持つ霊力の大きさは光主の意識に変化を与えていた。


「背中の傷は美雨が癒しの力で治してくれた。今回はあの時のようにはいかないぞ、雷神よ。俺はお前を倒してお前の力を力尽くで手に入れてやる」


 雷神の加護を受けて雷神に力を貸してもらうつもりだったが強大な霊力を手に入れた今の自分であれば雷神を倒しその力を吸収することも可能だと光主は本能的に感じていた。

 この気に喰わない雷神に協力してもらい加護を受けるより力を奪った方が自分はより強くなれる。


 さらに強くなれば自分に逆らう者などいなくなるに違いない。

 そうすれば自分の好きなことができる。美雨を独り占めにだってできるはずだ。


「光主っ!」


 美雨の声が光主の思考を遮った。

 光主はハッと我に返って自分の背後にいる美雨の顔を見る。

 美雨の澄んだ青い瞳が強大な力に溺れそうになっていた光主を見つめていた。


「光主。己の力に溺れてはダメです。神は倒して消滅させて力を奪う相手ではありません。加護を得て協力していただく存在です」


 静かな美雨の声が光主の濁った脳裏に響く。


(俺は今、何を考えていた……? 美雨を独り占めにするなんて初代族長に言われた言葉じゃないか!)


 暗闇の世界で出会った初代族長が雷神の力を手に入れれば美雨を独り占めできると光主を唆そうとした出来事を思い出す。

 初代族長に言われたことは光主にとって抗うのが大変なほど魅力的な言葉だった。


 美雨を独り占めにする。

 美雨を自分だけのモノにする。


 だがそれは女王を目指す美雨の想いを踏みにじることになると分かったからこそ初代族長からの誘惑を退けたはずだったのに自分が再びその誘惑に惑わされた事実に光主は背筋がゾクリとした。


(強大な力を持つということはこの誘惑に負けない精神を持たねばならないということか……)


 歴代の王配たちがみんなこれほどの強大な力を持つ者であるかは光主も知らない。

 強大な力を持ちながらその力を己の欲望ではなく女王の為に使うことを選んだ王配たちの精神力の強さに光主は心の底から尊敬してしまう。


(……いや、違う。そこに女王の愛があったからだ……)


 自分を心配そうに見つめている美雨の青い瞳の奥には光主に対する愛情の光が浮かんでいる。

 美雨が光主に愛情を持っていることは明白だ。


 たとえこの先美雨が他の部族の王配を愛することがあっても美雨の中にある光主への愛が薄れることはない。  

 今ならそう確信ができる。


「ありがとう、美雨。俺を止めてくれて。雷神を倒して力を奪うことはやめる」


「光主……」


 美雨が安堵したようにホッと息を吐いたのを確認して光主は雷神に向き直った。


「雷神よ。貴方の加護を俺は受けたい。どうすれば俺に力を貸してくれる?」


 光主は丁寧な言葉で雷神に話かける。


『ほお、威勢よく我を倒すと豪語しておきながら今度は我の加護を受けたいと願うか……そんなところも変わらんな。強大な力を手にしながら己の欲望のままに力を振るうことをしない理由はあの時と同じようにその女のせいか?』


「……? さっきから何を言ってるんだ? 美雨と貴方が会うのは今回が初めてだろう?」


『……力は復活しても記憶はないのか……それならばそれでも我はかまわん。お前があれであるならば我がお前に加護を与えるのは当然だからな』


「俺に加護を与えてくれるのか?」


『当たり前だ。お前は我の……だからな!』


 雷神は自らの姿を雷光に変化させて光主に飛びかかった。

 あまりの素早さと雷光の轟音で雷神が叫んだ言葉の一部を聴き取ることはできなかった。


 白い巨大な雷光が光主の身体を貫いたと思った瞬間、その雷光がスッと光主の身体の中に消える。

 それと同時に光主は自分の身体の内側が燃えるような強烈な熱さを感じた。


「ぐわあぁーっ!」


 身を焦がすような激しい熱に襲われた光主はその場に倒れ込んだ。

 内臓の全てが焼かれているような痛みに襲われ光主は倒れたまま悶え苦しむ。


『安心しろ。今のお前の霊力であれば我を宿すことは可能。死にはしない。もっともしばらくは苦しいだろうがな、ククク』


 脳裏に響く雷神の声を光主は確かに聞いた。


(これで……雷神の加護を……受けられたのか……?)


 「雷神降ろしの儀式」はその身に雷神を宿すことが目的だ。

 雷神が光主の身体に入り込んだのであれば儀式の成功と言える。


「光主っ! しっかりして!」


 痛みで意識が朦朧とする光主の手を美雨が握ってくれる。

 その美雨の顔は今にも泣き出しそうだ。


(美雨……泣くな……これで俺は……雷神の加護を手に入れられたのだから……)


 そう愛しい彼女に伝えたいのに口から言葉が出ないまま光主の意識は途絶えた。

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