表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女王の華咲く日~新しい女王は六人の王配に愛されて華開く~  作者: リラックス夢土


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/148

第56話 美雨が倒れた理由

「特に悪いところはありませんな。霊力の使い過ぎによる霊力不足に陥ったのでしょう。そのために身体が眠りを必要としているのです。安静にしていれば大丈夫ですよ」


 倒れた美雨を診察した医師の言葉に光主は少しだけホッとする。

 この医師はもう60歳を過ぎた老齢の医師だが腕は確かな人物だ。


 美雨が倒れた時に光主は慌てて部屋の外にいた空月に太陽神殿に常駐しているこの医師を呼ぶように頼んだのだ。

 本来なら美雨を太陽神殿に連れ帰って治療を受けさせた方が良かったかもしれないが倒れた理由が分からないうちに美雨を馬に乗せる訳にはいかない。


 そこで空月が光主の代わりに太陽神殿まで馬を飛ばしこの医師を連れて来た。

 太陽神殿にいる者は美雨がこの国の第三王女だと知っているからそこの医師であれば美雨に強い霊力が宿っていても驚いたりはしないだろうという判断からだった。


「ここから移動させても大丈夫か?」


「かまいませんが馬車での移動をお勧めいたします」


「分かった」


 いつまでも作業所の粗末なベッドに美雨を寝かせて置くわけにはいかない。

 まだ太陽は落ちてないが今日中に太陽神殿に戻らなければ美雨の従者たちが騒ぎ出す可能性がある。


 もちろん弱っている美雨を連れて帰ればそれだけで騒ぎにはなるだろうが自分と外泊したという醜聞が広がっては美雨の立場上まずい。

 光主は王配候補者だがまだ正式に美雨の光の王配に選ばれたわけではないのだから。


 もちろん事情を知っている空月が擁護してくれると思うが美雨は女王候補者だ。

 女王候補者に不名誉な醜聞が流れてしまったらそれだけで女王に相応しくないという輩が出て来ないとは限らない。


 美雨が女王になることの足を引っ張ることになるぐらいなら死んだ方がマシだと光主は本気で思っている。


「では私はこれで失礼致します」


「ああ、呼び出してすまなかったな。帰りも空月に送らせるから」


 医師と共に部屋を出るとそこには空月が心配そうな顔で待っていた。


「光主さん。美雨様の容態は?」


「霊力不足になって安静が必要らしい。だが美雨を外泊させる訳にはいかないから馬車の用意を頼む」


「分かりました。では医師の方をお送りして馬車を手配します」


「頼む」


 空月とのやり取りが終わり光主は再び美雨のいる部屋に戻る。

 光主は美雨が寝ているベッドの近くに椅子を置きそこに座って美雨の顔を覗き込んだ。


 倒れた直後よりは顔色もよくなっているようだ。

 そのことが光主を何よりも安心させる。


 だがそれと同時に光主の心は後悔に襲われていた。

 美雨が霊力不足になったのは光主の傷を癒したからに他ならない。


「お前はバカだ、美雨。俺のために限界まで霊力を使うなんて……」


 そっと美雨の手を取り光主はギュッと握る。

 光主の脳裏に浮かぶのは先程の自分の背中の傷を美雨が癒してくれた時のことだ。


 背中から圧し掛かるような体勢で美雨が自分の身体に近付いた時、自分の男としての本能が刺激された。

 慌てて美雨を見つめるとその瞳には真剣な光が宿っているのが分かった。


 美雨の行動に性的な意味はなくただ光主を助けたいという純粋な気持ちなのだと理解した時、自分の心は嬉しさと残念さに支配されたのだ。

 そして光主は改めて自分の心に枷を嵌め直す。


 女王候補者は正式に女王になるまで純潔でいることが求められると聞いていた。

 つまり光主が美雨と婚約できても美雨が正式に女王になるまで身体の関係は結べない。


 その決まりがある以上、光主の欲望のまま美雨を抱くことはできない。

 成人男性としては悩ましいところだが美雨を女王にするまでは我慢するしかないだろう。


 治療が始まり美雨が自分の背中に唇を押し当てた時は驚いた。

 だがその口づけをされた部分から流れ込んできた美雨の霊力は光主を甘美な気持ちにさせた。


 身体だけでなく心まで温かいモノに包まれる感覚。

 苦しみや悲しみや痛みなど負の感情が全て消えた瞬間だった。


 美雨の癒しの力には身体の傷だけでなく心を癒す力もあるのかもしれない。

 その力のおかげで光主の背中の傷は綺麗に消えてしまった。

 けれどそのために美雨は倒れるほど霊力を使ったらしい。


「お前は本当にバカだよ、美雨。でも、ありがとな。このお礼は必ずするから」


(俺が雷神の力を手に入れたらその力も俺自身も全てを美雨に捧げるから)


 光主は美雨の手の甲に口づけをする。  

 すると部屋の扉がノックされた。


「誰だ?」


「光主様。蜂の部屋のガラスが割れた件でお話があるのですが」


 声は作業長のものだった。

 光主は美雨から手を離し部屋を出る。


 ガラスが割れた件については光主も疑問に思った部分があったのだ。

 あの部屋のガラスは普通のガラスより強度が高いモノを使用している。

 それがなぜ割れることになったのか。


「ガラスが割れた原因が分かったのか?」


「はい。ガラスが割れた場所の近くにこれが落ちてました。おそらくこれがガラスに当たったのではないかと」


 作業長が光主に見せたのは棒型の武器の一種だ。


(これは確か闇族が好んで使う武器のひとつだな。今回のことに闇族が関係しているのか? だがこの武器を使ってもガラスを割るのは無理な気がするが)


「その武器をよく見せてくれ」


「はい、どうぞ」


 作業長が光主に棒型の武器を手渡す。

 その瞬間、光主の背中がゾクリとした。


(これは単なる武器じゃない。相当の霊力が込められている。なぜこんなモノがここに……?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ