表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女王の華咲く日~新しい女王は六人の王配に愛されて華開く~  作者: リラックス夢土


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/148

第55話 光主の傷の治療

「なぜ、傷があることを……?」


「月天様から聞きました。昔、光主が雷神降ろしの儀式を行って失敗し雷神に襲われて背中を傷付けられたのだと」


「あの野郎か……」


 美雨が月天から聞いたと話すと光主は苦々しい表情になり呟く。


「美雨。ひとつだけ誤解のないように訂正しておくが雷神降ろしの儀式を行ったのは俺じゃなくて月天だ。俺はそれに巻き込まれたに過ぎん」


「え?」


 光主が自分で雷神降ろしの儀式を行ったと聞いていた美雨は光主の言葉に驚いた。

 驚く美雨に光主は溜め息を吐きながら簡単に当時のことを説明してくれる。


 月天が光主をライバル視していたこと。

 自分の力を周囲の大人に認めさせる為に雷神降ろしの儀式を行ったこと。

 その際に光主を巻き込み雷神に襲われることになったこと。


(なんてことなの。それじゃあ、光主様は被害者じゃない!)


 月天が美雨に嘘の説明をしたことに美雨は腹立たしく思ってしまう。

 なぜそんな酷いことを光主にしたのか月天を問い詰めたくなるが今は光主のケガの手当てが先だ。

 それに月天を問い詰めたところで月天が反省して光主に謝るとも思えない。


「光主が雷神降ろしの儀式を行ったのではないことは分かりました。でも今はあなたのケガの手当てが先です。背中を見せてください」


「……分かった」


 美雨が静かな声でお願いするとようやく光主は上着を脱いでくれた。

 光主の上半身は鍛えられた筋肉に覆われていて美雨は一瞬その肉体美に見惚れてしまう。


 男性の上半身の裸を見たことは初めてではない。

 なぜなら美雨のお父様たちは鍛錬する時に半裸になることもあったからだ。


 光主の身体は自分の父親たちに劣らずたくましい。

 だが父親たちの裸を見ても何とも思わなかったのに光主の身体を見ていると美雨は自分の身体が熱を持ったように熱くなるのを感じた。


 光主が光の王配になったらこのたくましい身体に抱かれることになるのだろうか。

 そんなことを考えている場合ではないはずなのに光主との閨事を想像して慌てて美雨は自分の思考を停止させる。


(しっかりしなさい! これはケガの治療のためなんだから!)


「こ、光主。背中を見ますね」


「ああ」


 光主は美雨が見やすいように背中を美雨の方に向ける。

 その背中を見て美雨は息を呑んだ。


 背中全体が火傷で爛れていて中心には雷神がつけたと思われる爪痕のような傷が何本も走っている。

 これだけの傷を負ったら普通の者は死んでいただろう。


 光主が死ななかったのは運が良かったのかそれとも光主の持つ霊力のおかげだったのかは分からない。

 でもこれだけは分かる。この傷を負った光主が相当の苦しみを味わったことだけは確実だ。


 そして今はその傷に追加して背中の右上の部分が赤く腫れている。

 そこが蜂に刺された部分だろう。


「見ていて気持ちのいいもんじゃないだろ?」


「いえ、これだけの傷を負っても光主が生きていたことの方が嬉しいです。生きていてくれたから私は光主に出会えました。そのことをラーマ神と太陽神に感謝します」


「…っ!」


 光主が僅かに息を呑んだ気配がした。


「まずは蜂に刺された傷を癒しますね」


 美雨の手が蜂に刺されて赤く腫れている部分に触れると光主の身体がビクッと震える。


「痛かったですか?」


「……大丈夫だ」


 光主の言葉を聞いて美雨は癒しの力を使うべく集中した。

 美雨が呪文を唱えると美雨の掌が熱くなりキラキラと手が銀色の光に包まれる。


 そしてその銀色の光は赤く腫れている部分に吸い込まれていった。

 するとみるみるうちに腫れがひき治療は終わる。


「気分はどうですか? 光主」


「もう痛くも痒くもない。美雨の癒しの力はすごいな」


(良かった。うまくいって。でも本題はこっちの傷よね)


 蜂に刺されたケガを治すのにたいして霊力は使わない。

 でも美雨は光主の背中に残る雷神につけられた傷を治したい。


「光主。この雷神につけられた傷は痛みませんか?」


「時々疼く感じはあるが慣れているから平気だ」


「それならこの傷も私に治療させてくれませんか?」


「そんなことできるのか? この傷は古いし傷跡も深いぞ」


 美雨の言葉に半信半疑の光主に美雨は笑顔を浮かべる。

 確かにこの傷を癒すのは美雨の力でも容易いことではない。


(だけど私は光主様にいつまでも苦しんで欲しくないの)


「大丈夫です。今の方法とは治療の方法を変えますが治せると思います」


「無理はしなくていいぞ」


「ええ、でも一度試させてください。光主の苦しみを全て取り除きたいのです」


「…っ! ……分かった。頼む」


「はい。ではベッドにうつ伏せになって寝てくれますか?」


「ああ」


 光主は言われた通りにベッドにうつ伏せに横になった。

 美雨もベッドに上がり光主の背中に圧し掛かるような体勢になる。


「ちょ、ちょっと、待て、美雨!」


 なぜか焦ったような光主の声が部屋に響く。

 そして慌てて身体を起こそうとした。


「大丈夫です。そのまま動かないでください。治療を開始しますから」


 美雨に注意されて光主の動きが止まる。

 

「……無自覚かよ」


 光主の呟く声は治療のため集中し始めた美雨の耳には聞こえなかった。

 先程より高度な呪文を唱える美雨の全身が銀色に輝き始める。

 そして美雨は光主の背中の傷にそっと自らの唇を押し当てた。


「…っ!?」


 その瞬間、光主が全身をビクリと震わせる。


(ラーマ神様。光主様の傷を癒してください)


 美雨の全身から銀色の光が一段と強く放たれた。

 すると光主の背中にあった傷が綺麗に消えていく。

 美雨が唇を背中から離した時には光主の背中は綺麗になり何の傷跡も残っていなかった。


「光主。傷跡は治りました。これでもう傷に悩まされることはあり…ま……」


 突然美雨が力が抜けたように光主の背中に倒れ込む。


(……いけない……力を使い過ぎたわ……)


「美雨!」


 意識が遠退く中、光主の悲痛な叫びを聞いたような気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ