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女王の華咲く日~新しい女王は六人の王配に愛されて華開く~  作者: リラックス夢土


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第53話 空月の研究成果

「もし光主様がこの花たちに霊力を与えなくなったら今のように大量に蜂蜜酒を作ることはできなくなるということですか?」


 美雨は疑問を作業長に訊いてみた。

 自分が光主を光の王配に選んだ場合、当然光主は美雨と一緒に王都で暮らすことになる。


 光の王配になった光主が蜂蜜酒を作り続けるためだけにこの作業所に来ることはできない。

 王配には王配の役目があるのだから。


 光主のおかげで特産品として大量生産できるようになった蜂蜜酒の製造ができなくなることは美雨も避けたい。

 特産品をひとつ失えばそれだけ光族の生活を支えるものがひとつ失われることになるからだ。


 それにこの作業所では多くの民が働いているから彼らの仕事が無くなってしまうのも困る。

 仕事を失って収入を得られなくなった民は生活していくことはできない。


 路頭に迷う民を少なくするのも女王の仕事のひとつだ。

 もし自分が光主を王配に選んだ時に光族が被る不利益のことも知っておくべきだ。

 それによっては光主を光の王配に選ばないという選択肢も考えなければならない。


(でも、私はできれば光主様を光の王配に選びたいのよね……)


 光主には他の王配候補者と話をしてから決めていいと言われたが今まで空月以外の王配候補者と交流を持って思ったのはやはり光主を光の王配に選びたいということだった。

 それに光主も王配になるために月神の加護を得られるよう努力してくれるらしい。


 月神の加護を得られればあの月天と同じくらいの霊力を持つと証明されるのだから美雨が光主を光の王配に選ぶことに皆納得してくれるはずだ。

 しかしそれでも光主の存在が光族にとって必要不可欠だというなら光主を選ぶことを諦めなくてはならないかもしれない。

 その不安に美雨の胸がギュッと痛む気がした。


「光主さんがいなくても蜂蜜酒の大量生産を可能にする準備はできていますよ。私の研究でね」


 そう答えたのは作業長ではなくどこからか姿を現した空月だった。


「空月。来ていたのか」


「ええ。私の育てた花の成長を確認するためにね。実験は成功ですよ、光主さん」


「そうか。空月には苦労をかけたな」


「いえ、貴方に頼まれただけでなくこの実験の成功は光族のためになることですからね」


 空月はニコリと笑みを浮かべて光主の顔を見た。

 その表情はどこか自信に溢れている。


「あの、空月様。光主様がいなくても本当に蜂蜜酒を大量生産できるのですか?」


 二人の会話の意味が分からず美雨は空月に尋ねてしまう。

 すると空月は美雨に一礼した後に説明を始めた。


「はい。この花は光族の者の霊力を必要とする花です。それもかなり多くの霊力を吸う花なのですが私が研究してこの花の品種改良に成功したんです」


「品種改良ですか?」


「ええ。私が農作物の研究をしていることは以前美雨様にもお話しましたがその研究のひとつとしてこの花をより少ない霊力で育てることができないかの品種改良も行っていたのです。光主さんに頼まれましてね。その結果多くの霊力を必要としない品種改良に成功したんです。新しい花は私程度の霊力を与えても成長することが先程確認できました。だからこれからは品種改良した花を使えば私程度の持つ霊力でも十分に花を育てていけるので光主さんに頼らず蜂蜜酒がこれまで通り作れるのです」


「空月の霊力で花を育てられるならそれこそ光延や光拓の霊力でも育てられる。俺が光族にいなくても蜂蜜酒はできるから心配しなくていいぞ、美雨」


「…っ!」


 光主には美雨が何を危惧していたか分かっていたらしい。

 美雨を見つめる光主の瞳は「だから俺を王配に選べ」と言ってるように思えて美雨は頬が朱くなる。


「そ、それならいいのですが……」


 恥ずかしそうに答える美雨はなんとか平静を保とうとした。


「というわけなので作業長。品種改良した花の種を追加で持って来たので確認に行ってくれますか?」


「承知しました。空月様。では私はここで失礼してもよろしいでしょうか? 光主様」


「ああ、かまわない。後は自分たちで適当に見学するから」


 光主の許可を取った作業長が美雨たちから離れて行った。

 すると空月がそれを見計らったように美雨に声をかけてくる。


「美雨様のその様子では光主さんをご自分の光の王配に望んでいらっしゃるようですね」


「え!」


 図星を差された美雨は思わず短く声を上げてしまった。


「あ、あのっ!」


「慌てなくてもいいですよ、美雨様。それだけ光主さんに熱のこもった視線を向けていれば誰でも分かりますよ。元々私も光主さんが光の王配に選ばれることを望んでいましたから」


 熱のこもった視線で光主を見つめていたと指摘された美雨は恥ずかしくて穴があったら入りたい気分になる。

 それでも空月の言葉の真意を確かめようと空月に尋ねた。


「く、空月様は光の王配になるつもりはないのですか?」


 王配候補者として名を連ねている以上空月にだって王配になる権利はある。


(もしかして空月様には光拓様みたいに想い人がいらっしゃるのかしら?)


 そんなことを考えた美雨に空月は当たり前のように話し出す。


「私には圧倒的に王配になるための霊力が足りません。光の王配候補者の中で一番霊力が低いのは私なんです。王配になる者には高い霊力を持った者が選ばれるべきです。だからと言って私の兄のような性格破綻者が王配になることを私は望みません」


 自分の兄の月天のことを「性格破綻者」と言い切る空月に美雨は一瞬呆然としてしまった。

 だけど美雨もその言葉に反論する気が起きない。

 空月の言う通り月天の性格は王配としてというより人間として難があると美雨も思っていたからだ。


 ガシャーン!!


 その時、大きな音が辺りに響いた。

 それと同時に誰かの声が聞こえる。


「蜂の巣がある部屋のガラスが割れたぞ!!」


(えっ! ガラスが割れた……?)


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