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女王の華咲く日~新しい女王は六人の王配に愛されて華開く~  作者: リラックス夢土


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第39話 光主からの愛の告白

「はぁ、はぁ、も、もう少し…」


 光主に担がれては堪らないと勇んで雷神の塔の螺旋階段を上り出したのはいいが美雨は既に息が苦しいほど疲弊していた。

 すぐ後ろについて階段を上って来ている光主に何度も「疲れたら担いでやるから」と言われたがその度に美雨はその申し出を断った。


(旅に出てから体力がついたと思ってたけどやっぱり私の体力ってたいしたことないのね…)


 王女として王宮からほぼ出たことのない生活をしてきた美雨にこの塔の階段は予想以上に辛い。

 息は上がるし汗は掻くし足の筋肉もぷるぷると痙攣しているように思える。


 だがだいぶ上って来たのでもうすぐ頂上付近に着くはずだ。

 もうひと踏ん張りだと気合いを入れる美雨の背後から光主の呆れたような声が聞こえた。


「俺が誘っておいてなんだがそんなに必死になって自力で上ることないんじゃないか? 俺は美雨を担いでも全然平気だぞ。少しは俺に甘えろよ」


「いえ! 自分で決めたことは最後までやりたいんです!」


 自分が非力な人間だということは美雨も分かっているつもりだ。

 美雨の霊力が強くとも美雨の持つ霊力は「癒しの力」しかないので階段を楽に上るなどいうことに使える霊力ではない。

 それに癒しの力は自分自身には使えないので疲労した足の筋肉を回復されることもできないのだ。

 

 しかし美雨は自分が非力な人間だからこそ一度決めたことは自分で最後までやろうと決めている。

 それは「女王になる」と闇のお父様と約束した時から。


「美雨がここまで強情だとはな…」


 後ろを振り向かなくても光主がどんな表情で自分を見ているか想像がつく。

 きっと頑なに光主の救いの手を拒む自分に呆れ果てているだろう。


(でも、もうちょっとだから…)


 階段の先に小さな扉があるのが見えた。

 どうやらそこが頂上のようだ。


(やった! あそこが頂上だわ!)


 ようやく見えた頂上に美雨は浮足立ち階段を一気に上ろうと最後の力で駆け上がる。


「待て! 美雨、急いだら危ない!」


 光主の制止する声が響いたと同時に美雨は階段から足を踏み外してしまう。


「きゃああっ!」


 美雨の身体がよろけて後ろへと倒れる。

 ふわっとした浮遊感が美雨を襲った。


(落ちるぅーっ!)


 この高さから階段を転げ落ちたら間違いなく大ケガをするだろう。

 場合によっては死んでしまう可能性もある。


(いやだっ! 死にたくない!)


 そう思ってギュッと目を閉じた次の瞬間、美雨の身体は僅かな衝撃だけで何かに支えられた。


「えっ?」


「大丈夫か! 美雨!」


 落下しなかった自分自身に驚いた美雨の声と美雨を心配する焦ったような声が重なる。

 美雨が閉じていた目を開けるとそこには動揺した様子の光主の端整な顔が間近に見えた。


 どうやら美雨の後を追って光主も階段を駆け上がり美雨のすぐ後ろまで来ていたらしく倒れてきた美雨の身体を抱きとめることに成功したようだ。


(光主様の顔ってやっぱりとても美しいわ)


 命の危機にさらされた美雨の意識は自分が助かったという事実よりも目の前にある男性としてはそうない光主の美貌に惹きつけられてしまった。

 ジッと無言で美雨は光主の顔を見つめる。

 その様子に異変を感じたのか光主は美雨の頬に手を当てて軽く叩く。


「美雨! どうした? しっかりしろ! ケガはないか!?」


 光主の大きな声と頬を叩かれた衝撃で美雨はハッと我に返る。


「え、ええ、だ、大丈夫…」


 光主に助けられたおかげで美雨に身体の痛みはない。


(光主様が心配して声をかけてくれたのに私ったら光主様の顔に見惚れて我を忘れるなんて恥ずかし過ぎるわ!)


 美雨が羞恥に顔を朱く染めると光主が美雨をギュッと抱き締めた。


「良かった……美雨に何かあったら俺は……自分を殺してた……」


 強い力で光主に頭も身体も抱き締められた美雨には光主の言葉が最後まで聞き取れない。

 しかし美雨を抱き締める光主の身体の温もりが本気で美雨を心配したのだと伝わってくる。


(光主様がいなかったら私は死んでいたかも…ううん、それだけじゃない、光主様に私の身体を抱きとめる力がなかったら光主様も巻き込んで二人で階段を落下したかもしれない)


 その可能性を考えて美雨は背筋がゾッとした。

 自分の行動で闇のお父様の時と同じく光主も命を失っていたかもしれないのだ。


「わ、わたし、ご、ごめんなさい、わ、私が、駆け上がったりしたから…こ、光主まで、み、身の危険に…」


 光主を失うことになったかもしれないと思うと美雨は今頃になって身体が震えて恐怖が襲ってきた。

 瞳に涙が滲み無意識に首元にある桃色の花のネックレスを手で握ってしまう。


「安心しろ、美雨。俺はこんなことで死ぬ男じゃない。それより俺の方が油断した。俺が美雨を塔の頂上に誘わなければ美雨に怖い思いをさせることはなかった。すまない、美雨」


 震える美雨を安心させるように光主は美雨の頭を撫でた。

 その大きな温かい手に頭を撫でられると美雨は安心感に包まれる。


(光主様は何も悪くないのに。どうして光主様はこんなに優しいの……?)

 

「こ、光主が、悪いわけでは…」


 自分が悪いのだと再度そう言おうとした美雨の唇に光主の指がまるでそれ以上話すなというようにそっと触れてきたので美雨は言葉が続けられなかった。

 光主は強い眼差しで美雨を射抜く。


「美雨。王配は女王を護るのも役目のひとつだ。だから美雨は黙って俺に護られていればいい。美雨が女王になれるように俺が手助けをする。だから美雨。俺との婚約を美雨も真剣に考えてくれないか?」


(光主様は私の光の王配になりたいの…? 光主様は私のことが好きなの? 私は光主様のことを…好きだわ。でも、本当に光主様に決めてもいいの…? まだ光主様とは出会ったばかりなのに私の感情だけ優先するのは…)


 王配は女王だけでなく民にとっても必要な存在だ。

 美雨が好意を持っていても光主とは知り合ったばかりで光主が光の王配としての能力があるかはまだ分からない。


 今までの言動や行動で光主に王配の素質がないとは思えないが美雨の選択はこの国の運命を左右しかねない。

 王配は慎重に選ぶべきだ。

 女王教育を受けてきた冷静な美雨がそう自分に問いかけてくる。

 

 その想いが顔に出ていたのか光主は「フッ」と僅かに笑う。


「今すぐ婚約すると決めることはないさ。まだ日にちはある。他の王配候補者とも話したいならそれもかまわない。俺も自分が光の王配に相応しいと美雨が思ってくれるように努力するから美雨がそれに納得した時に返事をくれればいい。だけど美雨。これだけは覚えていて欲しい。俺は美雨のことを愛してる」


「…っ!」


 生まれて初めて男性から愛の告白をされた美雨はその衝撃で言葉を失う。

 身体中がカッと熱くなり心臓がバクバクと大きな音を立てておかしくなりそうだ。


 美雨を見つめる光主の鋭さと甘さを含んだ金の瞳から目が離せない。

 このまま自分はどうなってしまうのかという危機感すら感じる。


 どのくらいの時間光主と見つめ合っていたか分からないがスッと視線を光主が外し抱き締めていた美雨の身体をそっと立たせてくれた。


「それじゃあ、美雨。せっかく雷神の塔の頂上に着いたから塔からの景色を見るか」


 その言葉で美雨は夢から覚めたように己を取り戻す。 


「…は、はい…」


 美雨はなんとか小さい声で返事をした。

 そして心の中に新しい決意を抱く。


(光主様が光の王配に相応しいかどうか自分のためにも真剣に考えよう)

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