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女王の華咲く日~新しい女王は六人の王配に愛されて華開く~  作者: リラックス夢土


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第28話 月天の美雨への侮辱

 光主の笑顔に美雨は見惚れた。

 二人の視線が交わり光主の黄金の瞳に吸い込まれそうになる。


(瞳も綺麗だわ。光族の金の瞳の中でも光主様の瞳は太陽のような神々しさを感じる…)


 美雨が光主と視線を外せずにいると光主が口を開いた。


「美雨様。私に何かご質問はありますか?」


 その言葉で美雨はハッと我を取り戻す。

 この場には他にも王配候補者がいるのだから光主といつまでも見つめ合っていては不自然に思われてしまう。


 一度、光主から視線を外したが光主からの強い眼差しが向けられていることは感じる。

 それだけで頬が熱を持つ美雨だったがその場を取り繕うように光主に質問した。


「えっと、馬術や剣術を始めたきっかけとかはあるんですか?」


 そう言いながら再び光主の顔を見るとその金の瞳が僅かに真剣な光を宿す。


「そうですね。光族の土地は隣国と接しているのでいつ何が起きても対応できるように剣術に力を入れています。最近は国境付近で盗賊などの被害もあるので」


「まあ、国境付近で盗賊の被害があるのですか? まさか盗賊は隣国の者ですか?」


 華天国内にも盗賊がいないわけではない。

 国内の盗賊は捕まえたり退治すれば問題ないが隣国の者が盗賊の場合は慎重に対応しなければ国同士の問題になってしまう。

 もし盗賊が隣国の者であるなら女王を目指す美雨と関係ないとはいえないのだ。


「いえ、ハッキリと隣国の者と断定できる証拠はありません。ただこの数年で被害を受けることが増えているのは事実です。我々の力不足で申し訳ありません」


 光主は悔し気に顔を歪めた。

 族長の長男でありながら盗賊の被害を止めることができない自分に憤りを感じているようだ。


(ここ数年の被害……? それはやはり守護結界の影響なのかしら?)


 守護結界が弱まったことが盗賊の被害の原因なら責任は美雨たち王家の者にある。

 それどころか守護結界を弱らせる原因になった闇の王配の死には美雨も関わっているのだから他人事ではない。


 だがこの場で守護結界の話をしていいのか美雨は躊躇った。

 王配候補者たちに守護結界の話が伝わっているか判断できなかったからだ。


 どう返事をしたものかと美雨が考えていると別の男の声が聞こえた。


「お前が野蛮な盗賊の話などするから美雨様が怖がってしまったではないか。戦いしか能の無いお前の話など美雨様に聴かせる価値はない」


 美雨がその声の主を見るとその男は淡い長い金髪に瞳も淡い金の瞳の王配候補者のひとりだ。


(えっと、この人は澄光様の甥の月天様だったわね。戦いしか能がないなんて光主様に対して言い過ぎじゃないかしら)


 剣術は確かに戦う手段ではあるが人を傷つけるだけが目的ではない。

 人を護ることもできるのだ。


 女王を護る美雨の父親の王配たちは常に自分の剣術や体術の訓練を欠かさない。

 王配は高い霊力も必要だが直接的に敵を倒すことのできる剣術などの実力も必要だ。


「一人前に剣も扱えない男よりはいいと思うが?」


 月天の言葉に光主が冷ややかに告げると月天が悔し気に光主を睨んだ。

 光主も不機嫌そうな表情を隠さない。


(この二人って仲が悪いのかな? 私のことで争わせちゃダメよね)


 このまま二人を放置していたらどうなるか分からないので美雨はあえて自己紹介すると言った順番を飛ばし月天に声をかけた。


「貴方は月天様ですよね? 貴方のご趣味や得意のモノは何ですか?」


 美雨がニコリと笑みを湛えて月天に訊くと月天は光主を睨んでいた表情を一変させて笑顔になる。


「美雨様にもう名前を憶えていただけているとは光栄です。僭越ながら自己紹介をさせていただきます。私の名前は美雨様の仰るとおりに月天です。年齢は25歳。趣味はそこの野蛮な者とは違い読書です。王配になるには賢くないといけませんので」


 自信に満ちた発言をする月天に頷きながら美雨はチラリと光主の様子を伺った。

 光主は苦々しい表情で月天を見ていたがその発言にこれ以上反論はしなさそうだ。


 とりあえず目の前でこの二人がケンカする事態は避けられたようで美雨はホッとした。


「月天様はどのような本を読まれるのですか?」


「そうですね。私が読む本は政治の本が多いので美雨様には理解が難しいかもしれません。もし美雨様が一緒に私と本を読まれたいと思うのでしたら恋愛小説や冒険小説の本をお貸しいたしますよ」


(まあ、私に政治の知識が必要ないって言いたいのかしら? この国では女王と族長が政治をするのに)


 女王教育ではもちろん女王となった時に国を治める者として困らないように政治に関する勉強も行われる。

 美雨だってそれなりにこの国の政治に関する知識はあると思っているが月天の今の言いようでは美雨に政治の知識はいらないと言っているようなものだ。


 それどころか月天が王配に選ばれたら月天自身が政治に口を出して来そうな勢いを感じる。

 王配は政治的権力を持ってはいけないという基本が分かっていないのかもしれない。


(月天様みたいな方は王配には不向きな気がするわ)


「そうですか。それは楽しみです」


 心の中で月天に対して貴方は王配向きではないと思ってもそれを口に出すことはしない。

 美雨が月天を自分の婚約者に指名しなければいいのだから。


「月天。いい加減にしろよ。俺への侮辱は見逃すが美雨様への侮辱は許さん!」


「え?」


 冷たく怒気をはらんだ声がその場に響き美雨は思わず声を出してしまった。

 声の方に視線を向けると光主が月天を視線だけで射殺さんばかりに睨んでいる。


「美雨様は女王になる御方だ。その御方に政治の知識が必要ないような発言は美雨様を侮辱していることと同じだ。美雨様に謝れ!」


 光主に一括されて月天も自分の失言に気付いたようで慌てて美雨に頭を下げた。


「美雨様。申し訳ありません。ですが私が言いたかったのは王配として美雨様に助言したいのでどうか美雨様には私を頼っていただきたいということで……」


 弁明する月天よりも美雨は女王を目指す自分に政治の知識が必要なのは当たり前だときちんと指摘してくれた光主の言葉に嬉しさを覚えた。

 まるで自分がこれまで女王になるために勉強してきたことを認めてもらえた気がしたのだ。


(光主様は女王と王配がなんたるかを知っておられる方なのね)


 光主という人物にますます興味を引きつけられるがここは女王候補者としての立場を忘れてはいけない。


「大丈夫ですよ、月天様。私は気にしていません」


 静かにそう答えると月天は明らかに安堵したようだ。


「月天、光主。今は美雨様に王配候補者たちを紹介している途中だということを忘れるんじゃない。美雨様、お見苦しいところを見せてしまい申し訳ありません」


 それまで黙っていた澄光が口を挟んだことで光主も月天も黙り込む。


「では次は光延から自己紹介の続きをしなさい」


「はい。族長様」


 今度は光主の隣りに座っている男性が返事をする。


(とりあえず光の王配候補者の方々の自己紹介は全部頭に入れておかないといけないわね)


 王配選びには国の命運がかかっている。

 第一印象だけで決めてはいけないはずだ。


 美雨は改めて王配候補者たちの自己紹介を聞く体勢になった。  



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