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女王の華咲く日~新しい女王は六人の王配に愛されて華開く~  作者: リラックス夢土


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第21話 光主の実らぬ恋

 銀髪の女性の声は澄んでいて強さと優しさを内包しているような不思議な声だ。

 その美しい声を聴いている光主は心も体も清らかに洗われていく感覚に陥る。


(こんな美しい声は聴いたことがない…)


 声の主を確認しようと光主は目を凝らして銀髪の女性を見た。

 年齢はまだ年若い。成人して間もないくらいだろう。


 長い銀髪は太陽光を浴びてキラキラと煌めいている。

 特徴からして水族の女性だと思われるのになぜかその女性の周囲は光輝いていて太陽神の加護を受けているようにさえ感じるぐらいだ。


(いや、光族の民より水族の民が太陽神の加護を受けることなど考えられない)


 光族は他の部族よりも太陽神の加護を受けているとされている。

 金髪に金の瞳の特徴を持つ光族は太陽神がその加護を与える民として選んだからそういう容姿をしていると言われていた。


 まさに太陽神の申し子とされるのが光族だ。

 そんな光族より水族が太陽神の加護を受けられる訳はない。


 さらによく見てみると女性は海を思わせる青い瞳をしている。

 顔立ちはまだ少女のような幼さが残ってはいるがあと数年もすれば男たちがこぞってその女性の前に跪いて愛を請うことが予測できるぐらいに美しい。


 これほどの美人を光主は見たことがない。

 そして何よりも先程から自分の心を捉えて離さない美しい声。


(あの声で俺の名前を呼んでくれるなら俺は何でもするのに。ああ、彼女が欲しい…)


 すると女性の声が聴こえなくなる。

 歌を歌い終えたようだ。


 そこで光主はハッと我に返った。


(俺は今、何を考えていた……? あの女が欲しいだと?)


 初めて見た女性に自分が持った感情が信じられない。

 声を聴いて姿を見ただけの女性だ。


 話もしていないから女性の性格も何も分からない。

 なのに彼女を「欲しい」と思うなどどうかしている。


 自分は光族の次期族長の有力候補だ。

 族長が他の部族から妻を迎えてはいけないという決まりはないがもし現実に自分が光族の族長のなった時にこの銀髪の女性を妻にするとしたら周囲は大混乱になるだろうことは目に見えている。


 その場合、族長は複数の妻を持てるので彼女以外の光族の女性とも結婚するように勧められると思うが自分がもし彼女を妻にしたら他の女になど興味は持てないだろう。

 光族の族長の唯一の妻が水族の女性など認められることではない。


 それだけでなく自分は不本意ながらも王配候補者のひとりだ。

 王配に選ばれる可能性もある。そうなればこの女性を妻になど望めない。


 そもそも自分の妻にしたい女性は外見ではなく内面の美しい女性がいいと言っていたはずだ。

 話をした訳でもない女性の外見だけでお前は好きになるのか。


 冷静な自分がそう語りかけてくる。


 そんなことは百も承知だ。

 だがどうしても己の心が「彼女が欲しい」と訴えてくるのを光主は抑えきれない。

 少なくとも自分がこの水族の女性に好意を持ったことは認めざるを得ない状態だ。


(くそ! 俺が王配候補者や族長の息子じゃなかったら彼女に話しかけることができるのに)


 なぜか光主には分かるのだ。

 ここで彼女に声をかけて言葉を交わしてしまったらもう自分は彼女から離れることができないだろうことが。


 光主は石壁の穴から顔を離す。


(彼女のことは忘れるんだ。彼女が何者かは知らないが知らないままの方がいい。俺が彼女に好意を抱いたところで妻にはできないんだから)


 好意は持ってるのに妻にはできないなど彼女を困らせるだけだ。

 それに彼女が自分を愛してくれるとは限らない。


 彼女が自分を知らない今ならまだ何もなかったことにできる。

 自分だけが彼女の存在を心にしまって生きていけばいい。


 光主は唇を噛みしめて自分の馬に乗る。

 光の都へと出発しながら光主の脳裏に浮かぶのは名も知らぬどこの誰かも分からぬ銀髪の女性の姿。


(欲しいと思った女に出逢えた瞬間にその女を忘れなければならないとは。神も俺に酷なことをさせるものだ)


 自分が彼女に恋をしたのは明白だ。

 恋をした瞬間にそれが実らない恋だと自覚した光主は運命の皮肉さに悲しいような笑いだしたいような気分になる。


 そして考えるだけ無意味だと分かっているがそれでも光主は願ってしまう。

 もう一度彼女に会えないだろうかと。





「美雨お姉ちゃん。遊んでくれてありがとう。また来た時にはお歌を歌ってね。女王様に会いに王都に行ったら今度は美雨お姉ちゃんの家に泊めてちょうだい」


「ええ、もちろんよ。光瑠ちゃんも元気でね。いつか光瑠ちゃんが女王様に会えるように祈ってるわね」


 光瑠と美雨は別れの言葉を交わす。

 再びこの教会を美雨が訪れるのは難しいかもしれない。


 でも光瑠が大人になって女王に会うために王都に来た時に美雨が女王になっていたら光瑠と再会したいと思う。


(光瑠ちゃんたちを護るためにも私は女王にならないといけないわね)


 美雨たちは教会を出発して光の都へと旅立つ。


(どんな方が王配候補者か分からないけれど私と愛し合える方がいるといいな)


 まだ見ぬ光の王配候補者のことを考えながら美雨は期待と不安で胸がいっぱいになる。



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