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女王の華咲く日~新しい女王は六人の王配に愛されて華開く~  作者: リラックス夢土


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第129話 見破られた氷室の隠し事



 氷室は海道の部屋を出て現在寝泊りをしている海龍神殿に戻ろうとしたところでふと美雨の顔が脳裏に浮かんだ。

 明日には海道からもらった海運地図を頼りに渦潮の発生する大島に向かうつもりでいる。


 そこで海龍神が住むという本物の海龍神殿に行けるかどうかは行ってみなければ分からない。

 剣舞の時に海龍神は「海龍神殿に来い」と言ってはいたが光主が心配していたように海龍神が神殿に行っただけで力を貸してくれるという保証はない。


 もしかしたら光主が雷神とやり合うことになったことと同じ状況に陥る可能性はある。

 今の自分の霊力を考えれば簡単にやられたりしないとは思えるが相手は神だ。強大な力を持っていることは間違いない。


 自分の実力が足りなくて海龍神に殺されることがあったらもう美雨と会えない。

 それがとても心残りだ。



(少しだけ……少しだけでいいから美雨の顔を見てから行きましょうか……)



 けして弱気になったわけではなく美雨の顔を見れば力をもらえるような気がして氷室は美雨の部屋へと向かった。

 この時間ならまだ彼女は起きているはずだ。


 美雨の部屋にたどり着くと護衛騎士の当麻が立っていた。

 取り次いでもらえるか分からないが氷室は当麻に話しかける。



「遅い時間で申し訳ありませんが美雨と会いたいのです。彼女に取り次いでもらえませんか?」


「これは氷室様。美雨様から氷室様が来られたらいつでも取り次ぐように言われていますので少々お待ちください」



 自分が来たらいつでも取り次ぐようにと護衛騎士に伝えていたと聞いて氷室の顔が自然と綻ぶ。

 美雨にとって自分が特別な存在になった気分だ。



「どうぞ。お入りください」



 当麻が美雨の許可を取ってくれて氷室は美雨の部屋に入る。

 美雨はソファに座っていた。光主の姿はない。きっともう遅い時間だから自分の部屋に戻ったのだろう。



「氷室! どうぞお座りください」


「遅い時間に押しかけて申し訳ありません、美雨。少しだけ貴女の顔が見たくなってしまいまして」



 そう言って氷室は美雨の向かい側のソファに座る。

 本当は美雨の隣りに座りたかったがあまり美雨に近付き過ぎると今の自分は彼女を抱き締めてしまいかねない。


 夜にそういうことをすれば氷室の男としての本能が刺激されてしまう恐れがある。

 美雨は男女の仲に疎いところがありそうだから彼女を怯えさせてはいけない。



「私の方こそ氷室にお会いしたかったんです。今日の剣舞が素晴らしかったとお伝えしたくて」


「ああ、ありがとうございます。今日の剣舞は美雨を想って舞いました。私の気持ちが少しでも美雨に伝わるようにと」


「氷室の気持ち……?」


「美雨を愛してるという気持ちです。貴女以上に愛する女性はこの世にいません」


「……っ!」



 真っ直ぐとも言える氷室の愛の言葉に美雨の頬が赤く染まる。



(ああ、やはり彼女の顔を見られて良かったです。これで思い残すことはない)



 すると美雨が僅かに表情を硬くした。

 こんな顔をする美雨は珍しい。

 何か気に障るようなことをしてしまっただろうかと氷室が不安を覚えた時に美雨の凛とした声が響く。



「野乃。悪いけど少しだけ氷室と二人だけにしてちょうだい」


「しかし、美雨様……」


「お願い、野乃」


「……承知しました」



 美雨の声は上に立つ者の有無を言わせない迫力のある声だった。

 野乃もそれを感じ取ったからこそ命令通りに部屋を出て行く。



「美雨。何か私が気に障るようなことをしましたか……?」


「氷室。貴方は私に隠し事があるでしょう」


「……っ!」



 氷室は美雨の指摘に息を呑んだ。







 美雨は目の前の氷室を見つめる。

 自分が確信を持って問いかけた言葉に驚いているようだ。



「なぜそんなことを言うのですか? 私に隠し事などありませんよ」


「いえ、貴方は私に隠し事をしています。それも氷室の命がかかるような隠し事のはずです」


「……っ!」



 明らかに動揺したように氷室の空色の瞳が揺れる。

 その瞳を見て美雨は自分の考えが正しいことを再確認した。


 先ほど氷室が見せた僅かな表情。どこか嬉しそうでありながら悲しみや決意に満ちた表情は「これで思い残すことはない」という者がするものだった。

 王城にいた時に美雨と仲良くなった護衛騎士がいた。その護衛騎士には恋人がいたがある日その護衛騎士は特別な任務のため危険な場所へ赴くことになったのだ。


 その時に恋人と別れの言葉を交わしている現場を美雨はたまたま目撃してしまう。

 護衛騎士は命懸けの任務に行くことを恋人に告げ最後に恋人にこう言った。「最後に君の顔を見れて思い残すことはない。これで命懸けの任務に行く勇気が出た」と。


 あの時の護衛騎士の顔は忘れない。恋人に会えた嬉しさと別れる悲しさ、それに任務を遂行するための決意に満ちた表情。

 氷室が見せたのはまさしくその時の護衛騎士と同じ顔だった。


 だから美雨には分かったのだ。

 氷室がこれから何か命懸けのことをするつもりだと。

 おそらくそれは美雨に関係することに違いない。



「氷室。私は自分の王配に迎える者に隠し事をして欲しくありません。きっと氷室の隠し事は私に関することですよね? それならば私にその隠し事を話してください」


「……美雨……」



(氷室様は何でも自分で解決しようとする人だから私にできることは協力してあげたいわ。だから氷室様、私を信じてください)



「私を信じてください、氷室。それとも私は貴方の信頼に値しない女王でしょうか?」


「そんなことあるはずありません! 美雨は私の唯一無二の女王陛下です。……分かりました。これから私がする予定だった隠し事をお話します」



 氷室は美雨にこれまでの経緯と海龍神殿に向かうつもりだということを話し始めた。




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