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異世界帰りの少年の大事件 ~TSした元男の娘の非日常~  作者: 九十九一
1-4章 ちょっとおかしい体育祭

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91件目 師匠来校

 翌朝。


「師匠、起きてください。師匠」


 師匠の初仕事の日。

 いきなり師匠は寝坊しかけていた。

 ボクはまだ遅刻になる時間帯じゃないけど、師匠は今日から教師なので、挨拶をしないといけないらしい。

 それで昨夜、


「起きなかったら起こせ」


 と頼んできたので、こうして起こしに来たんだけど……


「すぅ……すぅ……」


 この通り。全く起きる気配がない。

 声をかけても、揺すっても、目を覚ます気配がない。

 向こうでもそうだったなぁ……。


 早朝から修業するから、あたしを起こせ、って言われたから起こしたのに、全く起きなかった。

 起こしたら起こしたで、なぜか殴られた。

 ……あの時は、本当に死ぬかと思ったよ。結構本気だったんだもん……。


「師匠、お仕事ですよ。師匠―」

「ん……なんだぁ? あさかぁ~?」

「朝です。今日から仕事をするんですから、起きてください」

「仕事……ああ、エイコに紹介してもらったやつか……ふぁあぁぁ……」


 珍しく普通に起きてくれた。

 今回は殴られることもなく、普通に起きてくれて助かった……。

 また殴らるのかと思って、内心恐々だったよ。


「ありがとな、イオ」

「いえ、師匠に頼まれたので、当たり前です」

「そうかそうか。いい弟子を持ったなぁ、あたしは。炊事洗濯に、朝起こしてくれるとか、本当、できた弟子だ」

「できれば、掃除と起床くらいは自分でやってほしいんですけどね……」

「師匠の世話をするのが、弟子の務めだ。違うか?」

「ちが……わない、です」


 違うと言おうとしたけど、何をされるかわからなかったので、結局言えなかった。

 チキンと言われても反論できないよ。


「そういや、教師、ってのはどういう服装で行くんだ?」

「そうですね……学校によると思いますけど、体育教師の人とかは、ジャージとかで通勤してますけど、師匠の場合は特に言われてませんし、普段着でいいんじゃないですか?」

「そうか? んだとすると……さすがに、運動の時と同じ服装ってのはまずいな。んー……ま、あれでいいか」


 と言うや否や、師匠が手を宙に伸ばすと、その手が消えた。


「し、師匠、それって……」

「ん? ああ、別になくなったわけじゃないぞ? これは、アイテムボックスだよ」

「師匠、使えたんですか……?」

「当然」


 う、羨ましい……。

 ボクなんて、女神様からもらったの言語理解だけで、ほかの能力やスキルは、基本的に師匠に教えてもらってたけど……アイテムボックスは教えてもらってないんだけど。


「そう羨ましそうな顔をするな。今度教えてやるよ」

「ほんとですか?」

「ああ。……よっと。やっぱこれだよな」


 そう言って師匠が取り出したのは、ノースリーブシャツにジーンズと、カーディガンだった。

 ……あれ、おかしくない?

 そう言った洋服って、向こうの世界にあったっけ……?


「その服、どうしたんですか?」

「これか? エイコから貰ったんだよ。あったほうがいいだろうって」


 なるほど、学園長先生が。

 び、びっくりしたぁ……てっきり、向こうの世界から持ってきたものとばかり思ってたよ。


「それじゃ、あたしは着替えてから下に行く」

「わかりました。朝ごはんはもうできるそうなので、できるだけ急ぎ目でお願いしますね」

「ああ」


 それだけを伝えて、先に下へ降りた。



 すぐに着替えて降りてきた師匠と一緒に朝ごはんを食べてから、すぐに学園へ。


「しっかし、珍しいものばかりだな、この世界は」

「向こうとは、全く別の発展の仕方をしてますからね」

「そうだな。水道と言ったか? 向こうにも似たようなものはあったが、あれは魔石を使ったものだったからな。魔法のない生活ってのも、不思議なもんだ」

「ボクからしたら、魔法がある生活が不思議でしたよ」


 電気もガスも通っていないのに、明りは点くし、火も出る。

 最初見た時はどうなっているんだろう、ってずっと考えてたなぁ。

 結局魔法だったわけだけど。


「でも、言語理解を習得できてよかったですね」

「ああ。これがあれば、会話に困ることはないな。手に取るようにわかるぞ」


 それは同感です。

 向こうでは勉強しなくても問題なかったからよかったけど、結局のところ、言葉がわかるだけのスキルだったからね。

 チート的な能力やスキル、ステータスを貰えたわけじゃなくて、いきなり人生ハードモードだったもん。きついなんてものじゃなかったよ。


「ところでイオ。さっきから、妙にじろじろ見られてる気がするんだが……殺ってもいいか?」

「ダメです! 気に入らないことがあっても、向こうのノリでやっちゃいけませんっ!」

「……そうか」

「……なんで残念そうなんですか?」


 露骨にがっかりされても、ダメなものはダメ。

 ……まあでも、師匠の気持ちは分からないでもない。

 じろじろ見られるのって、気持ちのいいものじゃないしね。

 ボクだって、毎朝道行く人に見られてるもん。鬱陶しいとまでは行かないけど、ちょっと嫌かな。


「というか、いつもこんな感じなのか?」

「いえ、いつもなら、もう少し視線は少ないと思うんですけど……師匠がいるから、だと思います」

「あたし?」

「はい。師匠、綺麗ですからね。人目を引くんですよ」

「なるほど。つまり、美少女と美女が一緒に歩いてるから、こんなに注目を浴びるってわけか」


 美少女って……。

 別に、ボクはそこまでじゃないんだけどなぁ……。


 それはそれとして……やっぱり、師匠って目立つんだよね……。

 暗殺者の能力をフルに使えば、人目を引くことはないんだけど、こっちの世界では、使う機会なんて、ほとんどないからね。


 師匠って、すごく美人と言うのもあるけど、不思議なオーラがあるから、容姿も相まってすごく魅力的に映る。

 そんな人が暗殺者なんだから、世の中分からないよ。


「ところで、学園ってのはどんなとこなんだ?」

「え? 色々なことを学ぶ場所って……」

「いや、そうじゃなくてな。学園そのものだ。それは、学校と言う一括りでの回答だろ?」

「あ、そう言うことですか。うーん、そうですね……イベントが多い場所、でしょうか」

「イベント? 祭りのことか?」

「はい。最近だと、二ヶ月前に学生主導のお祭りがあったり、つい最近だと、ハロウィンパーティーがありましたね」

「なんだ。学生ってのは、貴族もいるのか?」

「パーティーと言っても、貴族がいるような、派手なものじゃないですよ。そもそも、貴族はいませんからね、この国には」


 似たような制度なら、昔あったけど。


「そうなのか。ほんとに、別世界なんだな」

「ほかの国に行けばないこともないですけど、この国では、基本的に人は平等ですよ。階級とかはありません」

「ほう、いい国じゃないか」


 師匠が感心するのもわからないわけじゃない。

 向こうの世界の国のほとんどは、自分の爵位を笠に着て、自分よりも位の低い人を虐げるような人が多かった。

 リーゲル王国は例外だったけど、隣の帝国とかはまさにそういう国だった。

 階級至上主義って言うのだろうか。


 とにかく、自分の地位を守ろうとして、冤罪をかけたり、ボクたちのような暗殺者に依頼して、邪魔なライバルを消そうとする人ばかり。


 ……もちろん、ボクも暗殺者だったので、依頼はいくつかこなした。

 でも、ボクが殺したのは、人を人とも思わないような、所謂外道と呼ばれるような人ばかりだった。

 もちろん、更生の余地ありと見れば、殺しはしなかったけど……そんな人はほとんどいなかった。


 そう言う人が多いということを考えれば、日本は比較的マシと言える。

 ……最も、お金ですべてを解決しようとする人もいるから、悪いところがないとは言えないけど。


「あー、視線が鬱陶しい……やっぱ、殺っちゃだめ?」

「ダメです」

「チッ……しゃーない。ここは、イオに免じで見逃してやるか……」

「……いつか師匠が本当にやるんじゃないかって、ボクは気が気じゃないですよ」


 理不尽な師匠だもの。

 その時は、ボクが全身全霊で止めよう。

 ……返り討ちに会って終わりだと思うけど。



「おはよー」


 校門のところで、ボクと師匠はそれぞれ別れた。

 師匠は職員室へ。

 もちろん、手続きとかも色々あるらしいけど、ほとんどは学園長先生がやってくれているそうだ。

 異世界の人だからね、仕方ないね。


「お、依桜。お前、また噂になってんぜ?」

「噂?」


 教室に入るなり、態徒が気になることを言ってきた。

 噂って何だろう?


「女神の横にいる黒髪美女は誰だって」

「……あー、なるほど」


 師匠のことか。

 やっぱり、誰から見ても美人だからなぁ……噂になるのも当然かぁ。


「まあ、その黒髪美人の人だけならまだしも、依桜と一緒だった上に、距離感が近かったから、余計噂になったみたいだけどね」

「そう、なんだ」


 別々に行く、って言う案が最初はあったにはあったけど、師匠は学園の場所を知らないので、案内がてら一緒に登校・通勤していた。


「で、依桜君、あの人は誰なの?」

「あー、えーっと……例の、ボクの師匠、です」

「「「「マジ?」」」」

「マジです。向こうの世界から来ちゃったんだよ」

「そんなことありえるの? 向こうからくるとか」

「物語だと、主人公と一緒に、っていうパターンばかりだけど、向こうの人だけで来る、ってまずないよね?」


 たしかにそうだね。

 仮にこっちに来るとすれば、その場合は何らかのアイテムを使ってくるか、主人公が一緒にいて、それでこっちに来るっていうパターンが多いけど、今回はどちらでもない。


 原因は、学園長先生と王様。

 その結果、向こうの人がこっちに来てしまう現象が起こっている。

 向こうの世界は今頃、行方不明者が出て、問題になっていそうだけど……。


「……じゃあもしかして、世界各地で見つかっている、誰も知らない言語を使っているのって……」

「……うん。向こうの人」

「そうか……。ん? じゃあ待てよ? 依桜の師匠は大丈夫なのか? 会話とか」

「あ、うん。問題ないよ。師匠には、言語理解のスキルを習得してもらったから」

「そんな簡単に手に入るものなのか?」

「ボクの場合は、女神様にもらったものだけど……ボク以外に使っている人は見たことないね。多分、習得は難しいと思うよ。師匠はちょっと異常だし……」


 あの人の場合、ちょっと見聞きしただけで、あらゆる能力、スキルを習得しそうだし。

 実際、言語理解のスキルは、一瞬で習得してたしね。


「まあ、会話が通じるなら問題ないか」

「だね。これで、異世界の言語を使われたら、依桜君を通さないといけなかったもんね」

「……ボクも、通訳は疲れるから嫌だから。それと、ボクがあの言語を使えることは他言無用でね?」


 世間的にバレたら、色々と面倒くさいことになりかねないので、みんなには言わないように釘をさしておく。

 この四人なら言うことはないと思うけど、一応、念のためね。


 クラスメートにも幸い聞かれていないようで、安心。

 木を隠すなら森の中。

 HR前の朝は、基本的に騒がしいからね。それを利用すれば、聞かれることもない。


「そういや、今日は朝会があるらしいんだが、依桜知ってるか?」

「あ、それ多分、師匠のことだよ」

「え、どうして?」

「うーんと、まだこの話はみんな知らないんだけど……師匠、体育教師として赴任するんだよ」


 そう言うと、四人の顔が凍り付いた。

 ……まあ、だよね。

 幼馴染、もしくは友達が異常な強さを身に着けるきっかけになった、世界最強の人が体育教師として来るわけだし……。


「大丈夫なの、それ?」


 少し震えた声で、未果が大丈夫なのかと訊いてきた。


「……分からない、かな」


 だって、師匠だもの。

 少なくとも、いきなり全力ダッシュ一万本をやらせるような人だし……大丈夫か大丈夫じゃないかと聞かれれば……何とも言えない。


「でもよ、美人なんだろ? その人」

「ま、まあ。すごくね……おかげで、朝から視線が凄かったよ」

「でしょうね。美少女と美女が一緒になって歩いていれば、見られるに決まってるもの」


 また美少女ですよ。

 ボクは違うと思うんだけどなぁ……。


「それに、依桜は目立つからな。銀髪碧眼だし」

「そうだねぇ。仮に、パーカーを着て、顔が見えなくなるくらいにフードですっぽり覆いかぶさっても、きっと目立つよね」

「まあ、銀髪碧眼なのは、元々だったしな。今さらじゃね?」

「生まれた時からの付き合いだからね。その辺りは慣れてるんだけど……いい加減、女の子って言うのにも慣れないといけないのかなぁ」


 むしろ、もう慣れ始めちゃってるけど。

 慣れるのは、決して悪いことじゃないけど、男だったと思うと、すごく複雑なんだよ。


 キーンコーンカーンコーン……


「っと、そろそろ朝会か。じゃあ行くか」

「そうだね」


 ここでチャイムが鳴ったので、ボクたちは講堂に向かった。



 講堂に入ると、もうほとんどの生徒がすでに集まっていた。

 早いなぁ。

 とりあえず、ボクたちも自分たちの席に着く。

 こういう時、椅子があるっていいね。


 小学校、中学校は、体育館の床に座っていたから、お尻が痛かったよ。

 それに、今の姿だと、パンツが見えちゃいそうでね……。


「生徒諸君、おはよう!」


 しばらく座って待っていると、学園長先生が壇上に表れ、挨拶をしていた。

 い、いつの間に。


「さて、今日急遽朝礼が入って、何事かと思っていると思う。噂では転校生なんじゃ? とか言われているけど、転校生が来たわけではない」


 きっぱりと言うと、目に見えて落胆する生徒が多く見受けられた。

 どうやら、転校生を期待していた人が多かったみたい。

 たしかに、急な朝会って、転校生の紹介って言う場合もあるからね。


「まあまあ、そんなに落胆しないで。転校生が来たわけではないが、新しい先生が赴任してきた」


 その瞬間、講堂内がざわつき始めた。

 見える範囲内にいる生徒の顔を見ると、期待していると言ったところかな?

 こんな変な時期に、転校生ではなく、新しい先生が来ると言うのだから、騒がないほうが珍しいか。

 だけど、ボクはその先生がどういう人か知ってるしなぁ……すごく理不尽な人だし。


「みんな知っての通り、体育教師の瑚梨沢先生が、家の都合などで海外へ行かないといけなくなった。こちらとしても、この時期にいなくなるのは困るので、新しい先生を呼ぶことにし、今日からこの学園で務めることになる。ちなみに、女性だ」

『うおおおおおおおおおおおおおっっっ!』


 にやりと笑いながら言うと、男子のみんなが騒ぎ始めた。

 た、単純……。

 逆に、女の子のほうは、少しがっかりしている人や、男子のみんなに、冷たい視線を向ける人、騒いでいる人たちと同様に騒ぐ人がいた。


「落ち着け落ち着け。その先生は、基本的に体育の実技方面だけど受け持つので、その辺りは覚えておくように。……さて、前置きはここまでにして。ミオ先生、お願いします」

「ああ」


 学園長先生が師匠を呼ぶと、堂々とした姿勢で師匠が壇上に上がってきた。

 ……あの人、絶対に気配遮断と、消音を使ってたよね。

 今、どこからともなく現れたように見えたんだけど。

 何してるですか、師匠……。


「あー、今日から体育教師として赴任した、ミオ・ヴェリルだ。まあ、よろしく頼む」


 師匠の挨拶はすごく簡素だった。

 まあ、師匠だし……。

 むしろ、長い自己紹介をする師匠なんて、全然想像できない。


『や、やべえ、めっちゃ美人なんだけど』

『あんな綺麗な人が、体育教師とか……最高かよ』

『てっきり、かなり歳が上の人かと思ったけど……若くない?』

『いくつなんだろ?』

『というか、体育教師に全然見えないんですけど』

『しかもあのスタイル……依桜ちゃんとは違った方向性で、スタイルいいよね……』

『均整がとれてるというか、バランスがいいよね』

『どこの授業を受け持つんだ? 内のクラスとか、受け持ってくんねぇかなぁ……』

『わかる。年上美人の指導とか受けてみたいよな……』


 美人な師匠の登場で、さらに講堂内が騒がしくなる。

 たしかに、体育教師には見えないよね、師匠って。


 見た目だけなら、知的美人って感じだから、理数系のイメージが付きそうだけど、ボクの場合は、体育のイメージしかないです。

 頭もいいけど、身体能力が異常すぎるもん、あの人。


 できることなら、ボクのクラスの体育を受け持たないでほしい。

 ……まあ、学園長先生が強制的にそうさせるだろうし、師匠も師匠でボクのクラスを希望しそうだよね。


「ミオ先生は、日本人ではないけど、この通り、日本語はペラペラなので安心してね」


 と言う感じで、講堂内がざわつきながらも、問題が起こることはなく、朝会が終了した。

 どうも、九十九一です。

 大丈夫なのかな、これ。収拾がつくか不安になってきました……。行き当たりばったりで書いている自分が悪いわけですが……まあ、うん。過去作を見ていた人からすれば、いつも通りだと思いますけど、あれ以上ですね、この作品。

 終わるかなぁ、この作品……。

 すでに完走できるか不安ですが……頑張ります。

 それと、PV数が15万回突破していました。ありがたいです。いつも読んでいただき、ありがとうございます。

 明日もいつも通りですので、よろしくお願いします。

 では。

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[一言] 依桜ちゃんに自分は美少女だと自覚させるのは至難の技だからなぁ。 A 依桜に美少女と自覚させる B ゼビウスでザッパーを使わずに周回 C グラディウスでスピードを最高に上げて周回 どれが一番…
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