59件目 幼女化の原因
※ 元の姿と細分化を図るために、今回のような状態の依桜は、平仮名多めの話し方になります。なお、モノローグには適用されません。
「な、なんで? なにがどうなってるの?」
突然のことで騒がしくなった教室内で、ボクは一人混乱していた。
どうして? なんでボク、縮んじゃってるの?
それに、声も高くなってる。
どういうこと? なんで? なんで?
「……い、依桜? 本当に、依桜なの?」
ボクが一人混乱していると、未果がボクに話しかけてきた。
「み、未果ぁ……」
突然のことに、目の前が涙でぼやける。
多分、泣きそうになってる。声も少し震えてるし……。
「い、依桜、なのね……。ああ、はい。まさか、こうなるとは思わなかったわ」
ボクが名前を呼んだことで、未果は少しだけたじろいだ。
「つか、何をしたら、縮むんだよ?」
「あれ、どう見ても小学生くらい、だよな?」
「……依桜君、とうとう若返りもしちゃったのかぁ」
態徒たちが、そんなことを口々に言っている。
縮んだ理由はわからない。
自分の今の姿がどうなっているかはほとんどわからないけど、少なくとも縮んでいるのは確か。
そして、若返り、というのもあながち間違いじゃない。
……どうなってるの?
「依桜、どういう、こと?」
「わ、わからないよぉ……」
なんでこんなことにぃ……。
原因は何? 何も思い浮かばない。
最近変わったことがあったのは、異世界へ行ったことくらい。
期間は七日。
それで考えると、記憶のない二日間と、呪いの解呪。
………………解呪?
待って。もしかしてこれ、解呪が原因じゃないよね?
もしかして、失敗した、とか?
……でも、解呪が発動するのは、飲んでから二日後って言われたし……。
わ、わからないよぉ……。
「な、なあ、依桜」
「なに、晶……」
「いや、な。俺としては、その……その恰好をどうにかしてほしいんだが……」
「かっこう……?」
晶に指摘されて、ボクは自分の体に視線を落とす。
「――ッきゃああああああああああああああああっっっ!」
自分の体を見てから、床にしゃがみこんで悲鳴を上げた。
縮んでしまったことで、ボクの衣服はYシャツを除いた服と言う服全てが床に落ちていた。
つまり……裸Yシャツ。
「おい女子! とりあえず男どもを教室から出せ! 急げ!」
先生がクラスの女の子たちに指示を出し始める。
晶や、一部の男子たちは先生が指示を出した瞬間に、すぐさま教室から出ていき、態徒を含めた男子は抵抗した。
「い、いいじゃねえか! オレだって依桜の友人なんだぜ!? それに、依桜は元々男だったんだぞ!」
「うるせぇ! いいからさっさと出やがれ! 男女が元々男だろうが、今普通に悲鳴上げてただろ! つか、今は女なんだから、前が男とかは関係ねえ! ふざけたこと言ってねえで、さっさと出てけ!」
『は、はいぃぃぃ!』
先生の叱責で、慌てて男子たちは出て行った。
残ったのは、座り込んで震えているボクと、クラスの女の子たちと先生だけ。
「さて、と。男女がなんで縮んじまったのかはわからんが……とりあえず、服は何とかしないとな……」
「でも戸隠先生。今の依桜が着られる服はないですよ?」
「……だよなぁ。あー、そうだな……おい、男女。お前、ジャージは持ってるか?」
「た、体育がありましたし、今日はすずしいので、いちおう……」
「そうか。なら、とりあえず今日はジャージで過ごせ」
「わ、わかりました。……えっと、あの、ここで着替えを……?」
「そりゃそうだろ。なあに、安心しろ。そこで覗いている馬鹿どもは、あたしがあとでシメておくからな」
先生が朗らかに言うと、廊下の方から慌てて逃げる様な足音が聞こえてきた。
……今のは、態徒……と言うより、一部の男子を除いた全員ってところかな。
態徒は許さない。
「さ、これで馬鹿どもはいなくなった。さっさと着替えな」
「は、はい」
優しい声音で先生が着替えるよう促してきた。
先生は、口調は荒いけど、生徒思いのいい先生として評判だ。
元々ヤンキーだったらしいけど、それを気にするような生徒はうちの学園には一人もいない。
だから、本当に安心できる。
Yシャツを脱ぎ、急いでジャージに着替える。
縮んだ影響でかなりぶかぶかしていたけど、袖や裾を何度も折ってって調整し、ズボンはゴムを引っ張って固定。
これでなんとか、裸Yシャツからは脱却できた。
でも……
「うぅ、下着がないからスース―するよぉ……」
体が縮んで、衣服類が大きくなったのだから、当然下着も。
今のボクは、いわゆるノーパンである。
穿いていないから、すごくスースーして、嫌な感じ。
「さて、とりあえずこれで問題はないが……男女。とりあえず、保健室に行け」
「わ、わかりました……」
「付き添いは……椎崎、頼めるか?」
「大丈夫です」
「よし、なら行ってこい。ほかの奴は、男女の制服や下着をまとめといてやれ」
『はーい』
テキパキと指示出しをする先生は、かっこよく見えた。
「はい。ほら、依桜、行くよ」
「う、うん……」
未果はボクの手を取り、教室の外へ。
「大丈夫だったか?」
教室を出ると、ほかの人と話していた晶がボクたちに気づいて話しかけてきた。
「う、うん。今はだいじょうぶ。でも、先生にほけんしつに行ってこい、って言われたから行ってくるね」
「ああ。わかった。気を付けてな」
「ありがとう」
「そう言うことだから、晶。ほかの男子たちの暴走は任せたわ」
「了解。で、教室には、いつ頃入れそうだ?」
「そうね……大丈夫だったら、戸隠先生が言うと思うから、待っていれば問題ないわよ」
「わかった」
「お願いね」
晶が了承するを確認してから、ボクたちは保健室に向かった。
「……やべえ。依桜のやつ、すっげえ可愛いんだけど!」
『わかる! わかるぞ!』
『なんというか、庇護欲を刺激されるって言うのか、守ってあげたくなるオーラがあったよなぁ』
『しかも、裸Yシャツだったんだぜ? やっぱり、幼女の裸Yシャツはいいものだな!』
『つか、さっきの泣きそうな男女の顔見たか?』
『ああ、見た見た! 妙な背徳感があったな!』
『ただでさえ、女神のような美少女だった男女が、天使のような美幼女になるんだもんなぁ。世の中、不思議だらけだ』
『あー、抱っこしてみたい……』
『俺は、抱きしめてみたいわ』
『俺は肩車だなぁ……』
「いやいや、添い寝だろう、ここは!」
『『『さすが変態だぜ!』』』
このクラスには、ロリコンと言う名の変態が多いようだった。
コンコン
『どうぞ~』
未果が保健室のドアをノックすると、中から間延びしたような柔らかい声が返って来た。
「失礼します」
「し、しつれい、します……」
二人で中に入る。
保健室らしく、アルコールの匂いが充満していた。
保健室って、なんでこうもアルコールの匂いがするんだろう?
「どうしたのかしら~? 風邪? 怪我? それとも~……って、あら~?」
ボクたちが保健室に入ると、にこにこと笑顔を浮かべた先生が座っていた。
先生は、何しに来たのかを尋ねると、ボクの姿を見て驚いたような表情になった。
「希美先生、ちょっとこの子……依桜に問題がないかを診てもらいに来たんですけど、大丈夫ですか?」
「ええ、ええ。大丈夫よ~。あなたが、依桜ちゃん……じゃなくて、依桜君なのね~? それにしても……ほかの先生方や、生徒のみんなから聞いていた姿と違うようだけれど……」
「うわさ……?」
「そうよ~。なんでも、男の子がすごく可愛い女の子になった、って大騒ぎだったんだから~。私は見たことなかったけど……うん、たしかにみんなが言うように可愛いわね~」
「あ、ありがとうございます……?」
可愛いと言われて、お礼を言ったんだけど、気持ち的な問題で疑問形になってしまった。
「それで、今日はどうしたのかしら~? 診てもらいたいとのことだったけど……」
「えっと、実は依桜が授業中に縮んじゃったんです」
「縮んだ~?」
「はい。元々は、150近い身長で、スタイルもよかったんですけど、急に今みたいな小学生の姿になってしまって……。一応、異常がないかを確認するために来ました」
「なるほど~。わかりました。とりあえず、依桜君はこっちに座ってくれるかしら~」
「は、はい」
先生の目の前にある椅子に座るよう指示され、椅子に座る。
「ちょっと失礼しますよ~」
「きゃっ……」
いきなり、ジャージの上を胸上までまくられ、短い悲鳴が出てしまった。
そして、ぶら下げていた聴診器をボクの体に当てる。
……保健の先生なのに、なんで聴診器?
「ん~……うん。問題ないわ~。じゃあ、次。お口をあーんしてね~」
「あ、あーん……」
「喉は……うん、こっちも問題ないわよ~。次は、お熱を測ってね~」
「は、はい」
手渡された体温計を脇に挿し、熱を測る。
そのままの姿勢で少し待つと、ピピピッと測り終えた時の音が鳴る。
それを取り出して、先生に渡す。
「36.8ね。まあ、平熱くらいね~」
いつもの平熱だと、大体36.2くらいなんだけど、縮んでいる影響かな?
たしか、子供の平熱って少し高かった気がするし……。
間違ってたらあれだけど。
「それじゃあ、質問するわね~。頭が痛いとか、風邪っぽい、気怠い、など、体に不調はあるかしら~?」
「うーんと……ないです」
「そう~。体温は平熱だし、喉も腫れた様子はなく、心臓も正常に動いていて、不調もなし、と。とりあえず、何らかの病気の心配はないわ~」
「それならよかった……」
先生の言った結果に、未果がほっとしていた。
ボクもちょっと安心。
「けど、体が縮むなんて病気は聞いたことないのよね~。何か変わったこととかない~? 例えば……異世界、とか」
「えっ」
希美先生がいきなり異世界と言う単語を口にしたことに、思わず声を出してしまった。
未果も、息を吞む気配がする。
「あらあら~、本当だったの~? でも安心して~。私は、叡子ちゃんの研究についても知っているし、かかわってもいるから~」
「そ、そうなんですか!?」
思わぬところから、異世界の研究にかかわっている人が現れた。
まさか、保健の先生がそうだったなんて……。
「えっと、依桜? 研究って……?」
「あ、え、えっと……」
よくわからなくて困惑した未果に尋ねられる。
言ってもいいものなのかな、あれって。
一応、異世界の存在については、未果たちも知っているし……。
で、でも、ああいうのって言わないほうがいい、よね?
「今は気にしなくても大丈夫よ~。……それで、多分だけど、依桜君のその症状は向こうに起因しているはずよ~。だから、こっちの医療機関で調べても、わかることはないわね~」
「そう、ですよね」
異世界の存在を知っていて、医者ではないとはいえ、保健の先生が言っていることだし、本当に意味がないんだろうなぁ。
「さて、とりあえずはこんなところからしら~。あ、そうだ。依桜君は今の自分を見たのかしら~?」
「み、見てない、です」
あまりにも突然のことだったし、それに、全身が見れるほどの鏡なんて、教室にはないから、見れていない。
というより、見るのがすごく怖い。
「なら、そこに姿見があるから見てみるといいわよ~。自分がどうなっているのか、確認は必要だからね~」
「……わ、わかりました」
先生の言う通り、自分の姿は確認しておいたほうがいい。
師匠にも、常に自分の体の状況を把握しろって言われてたし。
……これでまた向こうに行ったときに言われたら、それこそ目も当てられない。
なら、見れるときに見ておかないと!
「すー……はー……よし」
鏡の前で深呼吸して、意を決して鏡を見る。
そこにいたのは……
「お、幼くなってるよぉ……」
小学生くらいの、幼い姿のボクだった。
外見自体は、変化する前の体をそのまま幼くしたような感じ、かな。
さっきと大きく違う点としては身長が縮んで、149センチから130センチくらいにまで縮んでいることだと思う。
顔立ちも少しだけ変わり、変化前はあどけなさの残る可愛らしい顔立ちだったけど、現在は残るどころか、あどけなさの塊のような、変化前とは違った意味での可愛らしい顔立ち。
丸っこい輪郭に、くりっとした大きな碧い瞳。
小さな口元も、変化前よりも濃い桜色で、ふっくらしていてとても柔らかそう。
長い綺麗な銀髪は、身長に合わせたのか、元の時と同じくらいの位置、腰元まで伸びている。
変化前の肌は、張りがあって柔らかそう……というか、男の時とは比べ物にならないくらい柔らかかったけど、今の姿になってからは、ぷにっとした肌に変わっている。
総評。小学生。
「うっ……」
あまりにも酷い現実に、鏡の前で床に手をついてがっくりとうなだれた。
女の子の次は、小学生……。
ボクの人生、どうなってるのぉ……。
……あ、目から汗が……。
「……未果ちゃん、そっとしておいてあげましょ~」
「……ですね」
未果たちが優しかったです。
……ぐすっ。
「んで、どうだった……って、どうした、男女。泣きはらしたような目だが……」
「……人生を、なげいてました。あと、体に異常はありませんでした……」
「そ、そうか。……しかし、どうする? こんな状況だ。午後の授業は、その時の担当の先生に言って、出席扱いにするようかけあうが……」
「い、いえ、それはちょっとひきょうですから、ちゃんと出席します」
授業に出ていないのに出席扱いされるのは、真面目に授業に出ている人に悪い。
体が縮んだだけで早退はちょっと……。
別に、体調が悪いわけでもないし。
「……真面目だな。わかった。たしか、六時間目は体育だった気がするが……出れるのか?」
「きょ、今日はさすがにやめておきます……。きがえ、ないですし……」
「それもそうか。なら、そっちはあたしが伝えておいてやるよ」
「い、いいんですか?」
「ああ。熱伊先生とはそれなりに仲が良くてな。どの道、もうそろ昼休みだ。こっちで伝えておく」
「ありがとうございますっ!」
先生、本当にいい人だよ……。
姉御肌、って言うのかな、この人は。
なんというか、サバサバしていて、かっこいいと言うか……下手な男の人よりもかっこいいんじゃないかな、先生って。
キーンコーン……
「……っと、チャイムが鳴ったな。それじゃ、授業は終いだ。おらー、学生ども、ちゃんと飯食えよー」
そう言い残して、先生は教室を後にした。
「はぁ……どうしよ……」
なんだか、妙なことになっちゃったし、原因はわからない。
せめて、何がだめだったのかくらいは知っておきたいなぁ。
「依桜君。ちょっとちょっと」
と、嘆息していたら、女委が手招きしながらボクを呼んでいた。
なんだろうと思いつつ、女委のところへ。
「ねえねえ依桜君。さっき、依桜君の制服を体操着が入っていたカバンに入れた時に、こんな紙が出てきたんだけど」
「え?」
スカートのポケットから、女委が一枚の紙を取り出して、ボクに手渡してきた。
「ああ、それ、見たことない言語で書かれていたから、俺にも聞かれてな。依桜の持っていたカバンなら、依桜が知っているんじゃないか、って思ったんだが……」
「オレもわからなかったなー」
「へぇ、どんな文字?」
見たことないという文字に、半ば嫌な予感を感じつつも、紙を開く。
そこには、
「うわ、なにこれ。確かに見たことないわね……すっごい複雑」
「……」
異世界ミレッドランドで使われている文字が書かれていた。
しかもこの筆跡は……師匠?
いつの間にこの紙を入れたんだろう?
と、とりあえず読んでみよう。
えーっと……。
『我が親愛なる弟子よ。この手紙を読んでいるということは、すでに元の世界に帰った後だろう。あー、まどろっこしいのはやめだ。単刀直入に言おう。……すまん! 解呪のポーションの調合、ミスっちった☆ いやあ、実を言うとさ、あのクソ野郎に創造石の調達を頼んだじゃん? で、五センチくらいの奴を頼んだじゃん? あの野郎、やってくれやがって、十センチの石を持ってきやがってよー。で、さすがにでかすぎると思ったあたしは、石を二分割して、その半分を使ったわけよ。で、薬自体は完成したんだが、石の保有する魔力や解呪に必要な物質は、どうも十センチの状態のままでな。つまるところ……解呪する確率が高くなっちゃったぜ☆ まあ、あれだ。あたしは悪くない。悪いのはクソ野郎! まあでも? 反転草の量を減らせば、確率の低い薬を作れたんだけど、石割ればウイいだろ、まあいっかってことで、普通に入れちゃった☆ そんなわけで……通常なら成功例だが、イオに限って言えば、完全に失敗する薬だったわけだ! はっはっは! すまん! 多分、解呪の追加効果は、一日で出ると思うんで、まあ、その……なんだ。頑張って生きてくれ! じゃ、いつものあの家で祈ってるぞ! イオのミオ師匠より』
………………………………………………。
「い、依桜……?」
「……し」
「「「「し?」」」」
「師匠の、バカああああああああああああああああああああっっっ!」
師匠に対する恨みつらみを乗せたボクの心からの叫びは、平穏で、どこにでもある日常的な昼休みの教室に、強く木霊した。
師匠、絶対許さないっ!
どうも、九十九一です。
異世界編は前回で終わりなのですが、今回の話から、また日常回、になります。
正直、今回の話って、日常回に入れていいのかわかりませんが……まあ、とりあえず日常回にさせてください。
前書きの通り、通常時の依桜と幼女の時の依桜で細分化を図っていますので、決して変換していない、と言うわけではないので、あしからず。
それと、依桜の変化については、前回説明した通り、もう一パターン考えておりますので、お楽しみに。
17時投稿が可能でしたら、投稿いたします。
できないようでしたら、いつものように、明日の十時ですのでよろしくお願いします。
では。




