181件目 攻略の後
みんなとのダンジョン攻略も終わり、あのボス戦のおかげで、全員のレベルが上がりました。
ボクが12に。他のみんなは、それぞれ10になりました。
どうやら、どういう風に貢献したか、と言う部分で得られる経験値が変わってくるみたいでした。
その結果、囮をしたり、投擲による攻撃でとどめを刺したりなどをした結果、意図せずして、ボクに一番経験値が入ってしまったみたいだった。
そして、ボスであるゴブリンロードを倒した際、全員に同じものがドロップ。
どうやら、ボスから得られるものは、ある程度戦闘に参加していれば、全員にドロップアイテムが入るみたい。
ゴブリンロードからドロップしたのは、【小鬼ノ棍棒】と言う武器だった。
ちょっと調べてみると、
【小鬼ノ棍棒】……赤黒い染みが付いた、1.5メートルほどの大きな棍棒。《鍛冶師》が装備可能な武器。STR+20。装備条件:STR50
こんな感じの武器でした。
ちなみに、レアリティの方は、4。
良くも悪くも、普通、と言った感じなのかな?
正直、まだ始まったばかりだし、見たことがないからわからないけど、レアリティが7以上の武器、もしくは装備にスキルが付いているんじゃないかなって。
この辺りは、そんな気がする。
それから、レアリティに応じて作成するものが変わるのは、スキルレベルにもよるような?
多分だけど、【裁縫】のレベルが1の状態で、昨日の人が持ってきた布を使った装備を作ったとしても、大体は失敗に終わるか、そもそも、元のレアリティがダウンするんじゃないか、と言う部分がある可能性がある。
正直、ボクは生産系の職業じゃないし、暗殺者、という戦闘向きの職業なので、実際の所はどうかわからないけど。
ただ、スキルレベルと生産は結構密接に関係していると思った方がよさそう。
料理の方も、多分そうなんじゃないかな。
……それにしても、暗殺者なのに、職人みたいな仕事をしていると思うと、なんだか不思議な気分。
あれだね、仕事人。
……一応、仕事人の人ができることは、何の問題もなく、簡単にこなせちゃうけど。
「うーん、やっぱりこの装備、あんまり情報が出回らない方がいいのかなぁ」
お店で一人、そんなことを呟く。
他のみんなは、今はいない。
今日は用事があるそうで、ダンジョン攻略の後、みんなログアウトしていった。
ボクは、お店の方があるので、そちらが終わるまでログアウトはせず、なんとなくスキルなどについて考えていた、と言うのがさっきのあれ。
暗殺者って、結構強い職業なのかな? なんて思えてきた。
考えてみれば、欠点らしい欠点と言えば、攻撃力と防御力が上げにくくて、物理的にちょっと弱くなるだけ。
その代わり、有用なスキルも多いし、何よりAGIに対する補正がかかるスキルもあれば、そもそもAGI自体が上げやすい。
スピードと手数を生かした戦闘が主体だから、結構小回りが利くしね。
回避だって、ちゃんと相手の視線、呼吸、体のちょっとした動きさえ見極めれば、簡単にできるし。
……って、みんなに言ったら、
「「「「絶対無理!」」」」
って、即座に否定されたけどね……。
そ、そんなにおかしい? ボクの価値観……。
一応これ、向こうの世界の暗殺者を生業としていた人たちの言葉なんだけど……。むしろ、これができて一人前、って言ってたし……。
……あー、やっぱり向こうの世界を舞台にしているせいか、なんだか考え方が向こうよりになってる気がする。
……ちょっと考え物かも。
「ん~~~~っ……さて、と。そろそろ準備しないと」
みんなと別れた後、女委と話し合って決めた洋服屋さんの訂正案に関しても、まだ開業二日目と言うこともあって、すぐに修正が効いた。
お客様が一人しかいなかった、というのも幸いした形だと思う。
これでもし、かなり広まってる、なんてことになったらちょっと困ったけどね……。
まあ別に、レアリティの低い布だったらいいんだけど、高いのが来ちゃうと、無駄に強い衣服になって、生産系の人たちに迷惑がかかるからね。やっぱり、それは本意じゃない。
誰かのためにやっていることが、誰かの迷惑になるのなら、やらない方がまだマシだよ。
「それにしても、ダンジョンで見つけた布どうしようかなぁ……」
まさか、神様に関係するようなアイテムが出てくるとは思わなかった。
ここで一つ気になるのは、あの布の説明に書かれていた、女神様、と言うのは、ボクが異世界に渡る際に会った女神様なのかな?
でも、説明には、かつて、って書かれていたから、別の女神様、なのかも。
このゲームは、向こうを基にして作られているから、ほとんどは存在しているアイテムや建物、場所なんだと思う。
それに、【業炎の布】と【緑嵐の布】なら、似たような物を向こうで見た覚えがあるし……。
それなら多分、【女神の布】も存在しているんじゃないかな。
ほんとかどうかは、調べてみないとわからないけど。
……でも、どうにも懐かしいような、手に馴染むような、そんな感じがするんだよね、あの布。
五枚揃ったら、ちょっと装備を作ってみようかな。
ちょっと気になる……と言うか、なんだか作らないといけない! みたいな、謎の使命感に似た何かがあるし。
……気のせいだと思うけど。
あ、もしあれなら、師匠に今度、あの世界の神様について聞けばいいんだ。
うん。頭に入れておこう。
「とりあえず、もう少しで七時か……」
あの布のことを考えつつ、準備をしていたら、もうすぐ七時になるところだった。
七時にあのプレイヤーさんが来ることになっているから、あらかじめ【炎嵐ノ衣】は出しておこう。正直、いちいち取り出すのがちょっと面倒くさいし。
食器についても、問題なし。
ヤオイが、もう少し買っておいた方がいい、なんて言うものだから、ちょっと補充しました。
うーん、洋服屋さんの方、本当にあれでよかったのかなぁ……。
もしかすると、純粋にファッションで! と言う人がいたかもしれないし……。
スキル付与って、オンオフ切り替えられないんだよね……。それがあれば、一律1000テリルでできたんだけどなぁ……。
……でも、オンオフつけられるようになる装備ができるかもしれないから、今は辛抱しよう。
まあでも、概ねイメージ通りの衣服も作れるし、オーダーメイドは月一度だけど、それ以外の洋服をあらかじめ作って、売りに出す、って言うのもいいかもなぁ。
……あ、意外とありかもしれない。
「そうなると、あんまり強すぎるものじゃないといいかも」
試しで作った、【丈夫な服】みたいな感じに、レアリティの低い素材を使えば、能力値はそのままに、まったく違う外見の衣装を作ることも可能だし。
うん。そっちの方向性で、ヤオイにもう一度相談に乗ってもらおう。
……相談したばかりなのに、すぐに相談していると思うと、ちょっと申し訳ないけど。
「あ、もう七時だ。開店しないと」
昨日のと同じように、開店のもじをタッチ。
そして、昨日見た文字が表示され、マップ上に、このお店の名前が表記された。
お店が開店するのと同時に、
カランカラン……
ベルの音が鳴り、昨日の女性プレイヤーさんが入店してきた。
「いらっしゃいませ!」
『あ、あの、引き取りに来たんですけど……』
「はい、出来上がってますよ! えーっと……はい、こちらです」
あらかじめ購入しておいた袋に、【炎嵐ノ衣】を入れて、それを手渡す。
『あ、ありがとうございます。見てもいいですか?』
「どうぞ。感想を聞かせてもらえると、ありがたいです」
『じゃ、じゃあ、早速……わぁ……すごい……』
袋から服を取り出し、目の前に掲げるようにして広げると、女性プレイヤーさんは、見入るようにしながら、感嘆の声を漏らしていた。
『……え!? こ、これ、すっごく強い……しかも、魔法が使えるなんて……』
……まあ、驚くよね。
『あ、あの、これ、本当に1000テリルでいいんですか……?』
「はい。ボクはあくまでも、作っただけですからね。材料自体は、お客様が持ち寄ったものですから」
『で、でも、相当強い装備、ですよね……? これを今後、一日四人限定で出すとしても、さすがに……』
「あ、それなんですけど……友達に見せたら、生産職じゃないのに、こう言うのを多く出回らせたらまずい、って言われちゃいまして……」
『せ、生産職じゃない……? え、じゃ、じゃあ、あなたの職業って……?』
「こう見えて、暗殺者なんですよ」
『ええええ!? あ、暗殺者なのに、鍛冶師の人よりも強力な装備を作ったんですか……?』
「ま、まあ、そうなりますね」
……やっぱり、暗殺者が生産職みたいなことをしているのは、変らしい。
まあ、わかるんだけどね……。
このゲームにおける、生産職って、調合士と鍛冶師だけだもんね。
一応、【裁縫】と【料理】自体は、だれでも覚えられるスキルだから、まあ、なろうと思えば全部の職業が、生産に携われる。
まあ、家を持っていないと、意味がないスキルらしいんだけどね。
『……でもこれ、どうやって……?』
「あー、えっと……【裁縫】のスキルだけで……」
『あ、あの、ほとんど意味がない、なんて言われている【裁縫】……?』
「た、多分」
本当に意味がないなんて思われてるんだ。
『すごい……わ、私、これ宝物にしますね!』
「それは、作った側としても嬉しいです」
『えっと、またお願いしても……?』
「それなんですけど……さっき、友達に言ったことを考慮して、話し合った結果、月に一人だけ、と言うことにしたんです。やっぱり、生産職の人の邪魔はちょっと……」
『たしかに、生産職じゃない人がこんなのを作っちゃうと、色々問題が起きそうですからね……』
「あはは……」
本当に笑うしかないよ。
『でも、服自体のデザインもいいですし……ちょっと残念ですね』
「あ、えっと、ここまで強力なものにはならないと思いますけど、あらかじめ作っておいて、それを売ろうかなって思ってるんです」
このプレイヤーさんも、女性だからね。もしかすると、何らかの反応をくれるかも。
『それ、すごくいいと思います!』
「ほ、ほんとですか?」
『はい! だって、この服、綺麗ですし、今着ている服だって、作ったもの、ですよね?』
「あ、そうです。よくわかりましたね?」
『NPCのショップでは見たことがなかったですし、どちらかと言うと、現実にあるようなデザインでしたからね』
「なるほど」
言われてみれば確かに、現代風のデザインだよね、今着ている装備は。
NPCのショップには、どんなものがあるか知らないけど、ちょっと気になるし、そのうち行ってみよう。
『だから、服を作れば、きっと売れますよ! 女性プレイヤーの間では、可愛い衣装がない! って声もありますから』
「そうなんですね。それじゃあ、試しに売ってみようかな……」
『そう言うことなら、応援しますよ!』
「ありがとうございます」
いい人だなぁ、この人。
「それじゃあ、概ね準備ができたらお教えしたいので、フレンド登録をお願いできませんか?」
『あ、いいんですか? もちろん、喜んで!』
「ありがとうございます。それじゃあ、申請を送りますね」
女性プレイヤーさん――ミナさんに申請を送る。
「登録しましたよ!」
「では、色々と完成次第、連絡しますので、その時はお友達とかに言っていただけると、嬉しいです」
「わかりました。それじゃあ、素敵な装備、ありがとうございました!」
「はい。また、いつでも来てくださいね。美味しい料理もありますから」
「その時は、友達と来させてもらいますね!」
「ぜひ」
最後にそう会話して、ミナさんはお店を出ていった。
フレンドが増えて結構嬉しかったなぁ。
ミナさん、いい人だったし。
今後とも、仲良くしたいな。
どうも、九十九一です。
なんだか、ころころ設定を追加したり、変えているせいで、かなり面倒くさいことになってきた気が……ちょっとあれだなぁ。何とかしないと。
あ、今日も2話投稿です。予定ではありますが、確実に出そうと思っていますので、出ないと言うことはないです。いつも通りの二パターンですので、よろしくお願いします。
では。




