付き人の戦いはこれからだ!
ユートは久しぶりに夢を見た。
魔族によって滅ぼされた幼少の頃に育った村の生活だ。
ユートは村の外れの粉引き小屋の夫婦の子供だった。
父も母も貧しいけれど善人。ユートに人間として正しいことを常に教えた。
そして愛情をいっぱい受けて育った。
ユートは小さい頃から不思議な力があった。
大きな石を指先で破壊したり、大きな木を斧の一撃で斬ったりできた。
だから成長するに連れて、村人たちはユートのことを避けるようになった。
魔族の子でないかと噂もされた。現実、粉ひき小屋の夫婦は子供を産んだわけではない。
ユートは嵐の夜にそっと扉の前に布で包まれていた赤ちゃんだったのだ。
でも、優しい母はいつもこうユートに話した。
「ユートちゃん、その力は特別じゃないのよ。大人になればみんなできるのよ。ユートちゃんはちょっとだけ早く使えるだけ」
「そうなの、お母さん。池の水を蒸発させたり、怖い狼を100匹、やっつけちゃうのも?」
「そうよ。お父さんなら簡単にできるわ」
「そうなんだ。じゃあ、僕はまだ弱いんだね」
「そうよ。ユートは弱いの。ユートは弱いから強い人に守ってもらうのよ。だから、ユートは力を使ってはダメよ」
「うん……わかった。僕は人間の世界で一番強い勇者様にお仕えするよ。僕は弱いから守ってもらうよ」
そうユートは母と約束した。自分の力を過信しない。
村はある時、魔物の軍団に襲われた。
父も母もユートを守るために死んでしまった。
ユートは弱いから力を使って戦ってはダメだと教えたためにユートは逃げ回った。だが、目の前で母を殺されて、ユートは怒り狂った。
(はあ……ここからよく覚えてない……)
優しい母と父の顔もなぜだか思い出せない。
思い出せるのは廃墟となった村と全滅した魔物の軍団。
そして生き残った村人とユートを助け出した勇者アリナとその仲間。
(僕はあの時からアリナ様にお仕えするようになったんだ……)
ユートはまた目を閉じた。
深く深く眠りにつく。
翌日、勇者一行はサスティ王国を後にした。
大魔王を倒すべく世界を旅する勇者アリナ。
彼女の冒険はまだ始まったばかりだ。
そして彼女に仕える付き人の少年。
勇者と大魔王への復讐を諦めない魔法使いの少女。
それに巻き込まれれている盗賊の少女。
彼らの前に立ちはだかる7魔王たち。
この物語は付き人少年の無自覚でとんでもない展開になっていくだろう。
「そんな展開になるわけがないじゃないですか。アリナ様がこの世界に平和をもたらすのです」
「え、僕がですって……御冗談を」
「僕はただのしがない付き人です」
完
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また次回作で会いましょう。




