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99話 狐とドラゴンと……パフェ3

➖ファミレス➖

–伊月視点–


「イゴチぱふぇをください」

「イチゴパフェじゃろ。すまんのぉ店員さん」

「い、いえ大丈夫です」


 いや大学に行かせないって……緋華が絶対に留年と大学に進学するのをやめるぞアイツは。ただ現在のことを考えるとそうなるのは仕方がないんだろう。最近はなんか物騒なことが多くある訳だしそれも考えたら高校に行かせてもらえること自体が凄いんだよな。怪我もしている訳だしなぁ。とりあえずは眩寺さんの話を聞いてから考えよう。


「元々は君の両親にも緋華ちゃんの両親にも言われていたんだよ」

「それで今日のことですか」

「そういうこと、だね」


 どうしたものか俺には何も出来ない部分しかないんだが。キツネが「なら(ワシ)が面倒みてやろうか?」と言ってきたが笑顔が邪悪なので絶対に任せたくないんだがショー先生は「適任だろう」と言ってきた。眩寺さんは首を横に振るのでアウトなんだろう。まぁキツネに関しては信用されていないんだろうからまぁ無理だろうなって感じはするな。


 そんなことよりもそろそろ俺は帰りたいんだけども帰らせてはくれないだろうから我慢はするしかない。早く雨歌に会いたいんだよ。眩寺さんがいるからそんなことは恥ずかしくて言いたくても言えない。雨歌をどうするかを決めないと帰れそうないから真面目に考えるか。もう帰って寝たいから自分の分だけ出して帰ろう。今日は疲れたんだしゆっくり寝させてほしいものだ。


「眩寺さん、俺は帰らせてもらいます」

「そうだね。送っていくよ」

「いえ、一人で大丈夫です」

「しかし」

「担任だし、俺が行こう。この二人はお願いしますよ」


 先生と一緒に店を出て少し歩いた場所で「そういえば柴藤がアイツを連れてきた時には驚いたな」と煙草に火をつけながら言う。確かに緋華がキツネと雨歌を連れてきたのには驚きはしたけどアイツならやりかねないとは思うんだよ。雨歌が本当に危ないときに限ってどこからともなく駆けつけてくるんだから実はアイツが黒幕なんじゃないかと思っていた時もあった。だから


「緋華は雨歌が物凄く大事なんですよ」

「見てれば分かる」

「俺は……緋華に比べると雨歌を大切に思っていないかもしれないです」

「・・・」


 俺は雨歌を守れないことから心が相当弱っていたのかはわからないが色々と先生にぶちまけた。弱いだの、逃げるだの、見捨てるだの、一緒にいる資格なんてないとも言った。先生は何も言わずに煙草を吸い夜空を見上げていた。慰めてほしいと思っていったわけではなくてただ聞いてほしいから言ったことだから返事があるなんて期待はしていない。


「終わったか?」

「はい……ありがとうございました」

「気にするな。教師はこういうもんらしいからな」


 そういうと煙草を一気に吸い込みポケットから携帯灰皿と何か球体を取り出した。先生は「これはある男の思い出の品でな」と微笑みながら俺に渡してくる。直径5㎝ほどの球体でおそらくは石で出来ているんだろう。これを渡されても何をどう反応すればいいかが分からないからどうしろというんだと困惑してると先生は「ただ丸いだけだろ。特別だと言われても困るだろう?」と面白そうに言った。


 確かに困るけど特別ではあるんだろうなコレは。こんなにきれいに丸くなるのは相当な時間がかかるだろうから貴重だろうな。俺は先生に凄いと言おうと口を開けたが何も言わずに閉じた。夜空を見る先生は物凄く悲しげだったからだ。それでも真っ直ぐに何かを見つめている目には涙なんてなかった。


「妖狩りって知っているか?」

「知っています」


 妖狩りとはまだ妖怪……人外と共存していなかった時代にあったとされる称号だ。なんでそれを出してきたのかはわからないが大事なんだと思うからちゃんと聞いておこう。煙草を吸い始めて「それ先生なんだぞ。すごいだろ?」と言ってきて「え」と返してしまった。そこからは当時のことを喋り始めて自分がいかに強いのかを自慢してきた。退治した大物から苦戦した雑魚のことを詳しく話してくれはしているが聞いても役には立ちそうにないことばかりだった。


「家に着いたぞ」

「いつの間に」

「先生は何1つ守れない化け物(にんげん)なんだよ」

「それってどういう」

「じゃあお休み」


 それだけ言って先生は音も出さずに消えて行った。人間って先生は死なない時点で人ではないでしょうよ。雨歌を助けてくれたりしているんですから何1つ守れていないわけではないと思うんですが、先生なりの励ましになるのかはわかりません。はぁ色々と考えさせられるけどどうにもならないこともあるって思っておこう。


➖自宅(部屋)➖

–雨歌視点–

 朝、いつも通り起きると緋華さんが僕にしがみついて寝ているけど体を起こしたいのに起こさないのはしんどいなぁ。学校が何故か壊れてしまっているので一時は休校なのでもう一眠りでもしようかな。目を瞑って寝ようとするとドアが勢いよく開けられて狐さんがやってきた。僕は目を開けてドアの方を見る。


(ワシ)がやって来たぞぃ。主殿、起きるのじゃ」

「なんで入って来れてたんですか?」

「普通に玄関じゃが」


 そう言うことを聞いているんじゃないんですけど。伊月もやって来ていないのに別に呼んでもいない人物? がやって来てもさ……意味がない訳だよ。まぁ遊びに来ることに関してはいいかぁ。初め会った時は悪人だったけど今は違うだろうしね。いや、今日会ったばかりなんだけども。


「伊月と言う小僧はリビングにおるぞ」

「そうなんですね」

「儂に敬語やさん付けはせんでよい」

「じゃあさっさと帰ったら? クソ狐」

「小娘は礼儀を知れ」


 緋華さんが起きてすぐに狐さんに帰って欲しそうにしている。緋華さんは布団から起き上がり「雨歌くんはすぐに誰かを信用し過ぎるよ」と言われたが別にそうでもないと思うんだけど。あえてスルーして起きながら狐さんに何用かを聞いてみる。


 狐さんは「儂の名前は……アルネと呼べ」と言って来て緋華さんは嫌そうな表情を浮かべるがなんでなんだろうか。アルネと言う名前なら最初から言ってくれば呼ぶのにどうして今になってから教えてくれたのだろうか?


「まぁ少しの間だが儂が主殿に稽古をつける」

「雨歌くんに必要はない。私がいつも居て守る」

「小娘、そうはゆうても……守れていないじゃろ」


 アルネさんの一言に緋華さんは黙るしか無かった。確かに僕がある程度強ければ緋華さんはさや伊月の負担は相当減るだろうし母さん達の心配も少しはなるなるかも知れないからいいことのはず。けれど緋華さんは何故かアルネさんを睨みつけている。


「紫藤、俺がコイツを監視しておくから心配するな」


 ショー先生もやって来ているのって本気で僕に稽古をつけるんだ。僕はアルネさんにお願いしますと言ったが緋華さんが「私も一緒でいいですか?」と言ったので驚いた。アルネさんは「良いぞ。元々小娘も鍛えるつもりだったじゃし」と言って部屋をショー先生と一緒に出て行った。


「雨歌くん、本当に嫌になったらやめていいからね」

「分かりました」

「雨歌くんとニ人で暮らせれば私はいいし」


 伊月は除外するんですねと思い苦笑しているとコハクさんも来ていたらしく「ケイ報酬はぱふぇでお願い」と言ってるのが聞こえて来た。あのドラゴン、段々と幼くなっていってませんか?


「緋華、雨歌、さっさと準備をしてくれ」

「あっ伊月、おはよう」

「おはよう。あのあとは大丈夫だったか?」

「何も問題はなかったよ」


 流石にあってたまるかと思いながら伊月の質問に答えた。


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