97話 狐とドラゴンと……パフェ1
➖保健室➖
目が覚めると伊月の驚いた顔がドアップになっていて僕も驚きはしたけど、戻って来れはしたんだね。確か狐を外に連れて行こうとして……どうなったんだっけ? 火傷の痕もないから攻撃をくらわせられたわけでもないし、連れて来れたかどうか分からないなぁ。流石にあのまま一人にするのはなんか嫌だったし伊月に聞いてみるかな。
「伊月……あの狐は?」
「緋華に首を斬られそうになってる」
「えぇ!? 止めないと」
「先生たちが止めているよ」
伊月はカーテンを開けて僕に今の状況を見せる。そこには正座して首を斬られる準備をしている狐とショー先生の刀を持って、ヴァル先生と水原先生に止められている緋華さんの姿があった。ショー先生は八咫さんを連れて帰っているみたく刀を置いていたらこうなってしまったみたい。なんで緋華さんがここにいるのかは分からないけどもとりあえずは止めないと。
「緋華さん、殺さないでくださいね」
「雨歌くん!! いいの?」
「良いんです。というかなんでいるんですか?」
「覚えてないの?」
僕が頷くと何があって保健室で寝ていたのかを説明してくれた。僕が狐を殴って連れて帰ろうと思った時に緋華さんが裏ルートで結界内に侵入したみたく、それに驚いた狐が緋華さんを攻撃してそれに巻き込まれた僕は頭に物が当たって気絶したのか。僕が気絶してしまったのによくここまで狐を連れて来れたなぁ緋華さん。殺しているようなイメージしかないんだけど。
伊月がこっそりと「アイツはな……キレて殺そうとはしたみたいなんだがお前の祖父母に止められたらしいぞ」と教えてくれた。そっかあの二人に言われたからなのか。それでここまで連れて来てくれたんだね。緋華さん、ありがたい気持ちはあるけどその後で殺そうとしたら意味がないんだよ。しかも保健室で斬首しようとかヤバすぎますから。
「そういえばコハクさんは?」
「隣で安静にしているわよ」
「それよりも親御さんにどう説明するかですね」
確かに母さん達には心配かけてしまったし最悪の場合は二人とは別の学校に通わないといけないのかな? それは嫌だからなんとかして誤魔化さないといけないなぁ。僕が首を傾げていると緋華さんが「私に攫われたって言えばいいんじゃないの?」と言ってくる。いやそれで母さんが納得するわけないじゃんか。
「私の方から電話をしてしまったんですが……」
「水原先生は雨歌くんが攫われたのを見て学校で保護したことにすれば?」
「確かに緋華が攫ったことにすればなんとかなるかもな」
それはそれでなんともならないで欲しいよ!? だってさ緋華さんが僕をいつか攫いそうって思われているってことになるんだよ。・・・昔、1回だけだけど未遂であったなぁ。なんとかなるかもしれないからそれでいこう。あとは全員で口裏を合わせればいいだけだろうからショー先生が帰って来てから話し合いを開始しよう。
ショー先生は15分後に戻ってきた。レンさんが色々と先生に聞いていたらしく相当時間が掛かってしまったとのこと。なんでも今回のは蠱毒とはまた違ったモノで、周辺に悪影響を及ぼすことを目的とされている魔法陣みたいものらしい。レンさんでも最初は分からなかったとのことで調査を八咫さんにお願いして分かったとのこと。
「最後の一人が死ねば発動する仕組みだと」
「ってことは……」
「そこのを殺したらどうなるか」
緋華さんは少しだけ拗ねるような顔しながらショー先生に刀を返していた。コハクさんと狐はこれからどうなるんだろうか。このままどこかで隔離ってことになるわけだろうなぁ。狐は別に隔離されてもいいけど、コハクさんには外に出たんだからパフェとかを食べて欲しいとは思うなぁ。それが無理だとしてもパフェを教えた人には会ってほしい。
「不澤、お前の親__眩寺に連絡してあるし事情を説明済みだ。ここに来るだと」
「「「「「えっ」」」」」
「なんか俺、やらかした感じだな」
「フッはっはっ相変わらずじゃのぅ。小僧」
父さんに伝わっているってことは母さんにも連絡がされているってことだろうからどうしたものか。流石に今から嘘を言っても意味がないし正直に言って怒られた方が「アレだ。対策は立ててあるから気にするな」とショー先生は言うが心配だけど、流石に大丈夫だと思っておこう。水原先生は「そういうのは連絡をと毎回言ってますよね」とショー先生を怒っている。それを見て狐が
「小僧、その女子もしかして初こ__」
「ちょっと黙っとけ」
「・・・」
水原先生はキョトン顔をしているが、ヴァル先生は「まぁ」と言いながら目をキラキラさせている。狐はつまらなそうにしながら黙る。もしかして水原先生に好意があるのかな? 少し焦っているってことは確定だろうし、アレか怒られているのはワザとなのか。かまってほしいからしているとはショー先生も可愛げがあるんだぁ。
「あとで聞かせてね」
「お前らだけには絶対にいやだ」
「儂が聞いてやろうか?」
「恋愛経験ないショタジジィだろ」
ヴァル先生に対しては素っ気ない感じだけど、狐に対しての敵意がある言い方ではないからそこそこの関係ってことは分かる。ショー先生の幼馴染ってどんな人だったんだろうか気にはなるけど、明らか先生の地雷だしやめておこう。
「小童、儂はお主を助けることにした」
「困るんだけど」
「じゃろうと思ってこの札をやる」
札をくれたが使いたくはないけど、一応持っていてもいいか。どうなるかは分からないけど……最悪コハクさんにあげるか。




