表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/100

96話 結界の中の狐は邪悪で……ドラゴンは? 3

➖結界内(校舎)➖ 

 ドラゴンさんの応急処置が終わったので理事長が座っているイスの後ろに小さな金庫らしきものがあってこれが出口だと言う。鍵をさしてダイアルを0にすると扉が勝手に開き、紫色の空間が中にあった。先に怪我人である八咫(やた)さんを入れて次にショー先生、その後に伊月で最後に僕ということを話し合いで決めた。何故僕が最後だというとドラゴンさんと少しだけ話そうと思ったからだ。伊月や先生は猛反対をしたが土下座をしてお願いした。


「不澤、これ持っておけ」

「小刀? ですか」

「あぁ……姉さんの形見だから絶対に返しに来い」


 えぇ……今すぐにお返ししたいですが、ありがたいのでちゃんと後でお返しします。僕は先生に向かって「ありがとうございます」と言って押してやった。へぇ~どこか一部紫色の所に触れたら飲み込まれる仕組みなのか……よし次は八咫さんだな。二人の視線が鋭いような気がするけども無視をしよう。二人を無視しながら八咫さんを押し込む。


「あとは伊月だけだよ」

「お前って酷い時なるな」

「伊月も押されたい?」

「自分で入るよ」


 伊月は出口の前まで行って「本当に大丈夫なのか」と心配そうに僕を見てきた。婚約者が危ないところに少しの時間だけども残るって言っている訳だし、心配じゃない方がおかし__視界の端でドラゴンさんが何かに音もなくさらわれたのが映ってしまった。ヤバイ感じがしたので伊月を強めに押し込んで此処から逃がす。


「雨歌!!」


 伊月は僕も一緒に連れて行こうとして手を伸ばしてくるが遅かったから届かない。金庫のドアを閉めてどこにいるかを見渡すがいなかった。痕跡すらも何もどこにも残っていないということは……どういうこと? 流石に別の空間とかにいる訳ではないだろう。鍵を取られるのは嫌だからどこかに隠しておこう。机の引き出しとかにでも入れておこうかな。


「儂《ワシ》に蹴りを入れてきたのは人間は久しぶりじゃ」

「どこから」

「ん? そこの扉からじゃが?」


 長机に脚を組みながら座っている狐は親指で後ろにあるドアを指す。ドラゴンさんがどこにいるのかを知っているのはコイツだけだろうから「ドラゴンさんをどこにやった?」と言う。狐は大きく口を開けて爆笑して腹を抱えながら「現世(うつしよ)に行かせたわ」というので僕は驚いた。最後の1匹になるまで出れないと思っていたから。


「あの娘はこの蠱毒に巻き込まれただけじゃ」

「だからってお前が助ける義理は__」

「ないじゃろ。(ワシ)は幼子の時から知っとるからのぉ」


 狐はドラゴンさんの名前を教えてくれた。名はコハクと言うらしく、親はここに入ってきて頭が八つある大蛇に殺されたとのこと。ドラゴン夫妻に小さい子を託されてしまったのでその子を育てながら、その大蛇は狐が喰い殺しはしたみたいだった。狐は自分が邪悪で純粋な子に育てれる自信がなかったみたく人間か同種が現れたら託そうと思っていた。


 同じ種族が現れてもその子を殺そうとしたり、人間が現れても利用しようとするだけで意味がなかったとのこと。仕方なく式神に外で何かを盗んで来させてその子にこっそりと与えてここまで育ててきたみたいだった。狐は「(ワシ)はお主になら任せれると思ったから話したんじゃ」と言われたが正直に言って任されても困る。


(ワシ)はコハクの親を殺したことにしておる」

「僕じゃなくても……パフェを教えた子でもいいんじゃ」

「ダメに決まっておるじゃろ。コハクは純粋なんじゃ!?」

「何故」

「・・・あの者は好意があったから」


 好意ってlikeではなくてloveの方でなのかは知らないけど、コイツ相当面倒だろ。なんて僕が思っていたら狐は「それに(ワシ)に1発もいれてこんかったしの」と不貞腐れた顔をしながら言う。普通なのかは知らないけども大蛇を喰い殺した奴に1発殴ったりは出来ないよ。僕は例外枠としても流石に一般人にそれは……


「その小刀は……懐かしいな」

「ショー先生の知り合い」

「見てせてくれぬか?」


 信用できないけど、これで僕を刺すなんてことはないだろうし渡してみるか。狐に小刀を渡すと懐かしそうに(さや)を撫でて返してきた。意外と早く返されたのでびっくりはしたけどまぁいいか。無くさないようにズボンのポケットの中に入れようとした瞬間、狐が立ち上がり「蛇火(じゃび)」と言ってヘビ型の火を出してきた。


(ワシ)を殺してくれぬか?」

「いやだ」

(ワシ)は罪人じゃ」

「いやだ」

「お主の小刀であれば心臓を刺して殺せるじゃろ」

「いやだ」

「何故じゃ遺体は残らぬようにする」


 おそらく役目が終わったし自分がイカレているのを分かっているからここで死のうとしているんだろう。なんで僕にお願いするのかは分からないけど、絶対に殺したくないし……殺させてくない。この狐は確かに邪悪で救いようがないけど、楽にさせるのは違う。過去に何かがあってこうなってしまったかは知らないけど罪は償わせないと。


(けい)にさせるべきじゃったな」

「自害はしないのか?」

「したくても出来ないんじゃ。(ワシ)を生かそうとする者達の願い(呪い)じゃ」


 この狐に何があってこうなったんだ? 確か八咫(やた)さんが堕ちたって言っていたから……よし2、3発殴って外に連れ出そう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ