94話 結界の中の狐は邪悪で……ドラゴンは? 1
➖自宅(部屋)➖
学校であったことは水原先生がうまく母さんに説明してくれていたみたいなので特に何も言われなかった。伊月は罰として今日は家に泊まっていくことになった。緋華さんの罰は今夜の接触は禁止というものだたが、今回に関しては伊月だけが泊まって行ってくれることが嬉しかった。
「雨歌……本当にやるのか?」
「うん」
「怪我をしてそんなに経っていないから気を付けろよ」
「それは気を付けるけどさ、学校に行かないといけないのかな?」
あそこに忍び込むって考えたら協力者が必要だろうから今日は諦めた方がいいのかな? どうしようか僕が悩んでいたら伊月が「コンビニに行くぞ。黄昏だからもしかしたら……」と言って僕の腕を掴みながら部屋を出た。
家を出て近くのコンビニに向かっている途中に伊月が学校の七不思議のことを話しくれた。いつ聞いたのかを聞くと僕がショー先生に怒られている時に狗谷くんに教えてもらっていたらしい。七不思議だから7つある訳だけど……今回の状況に似たことが1つあるみたいだからそれを話してくれる。
「元々はあの学校には封印されているとされる化け物が七不思議化したみたいだな」
「ヤバイところに入学しちゃったじゃん」
「元々人外だけの学校だから問題はそこまでなかったみたいだな」
「そうなの?」
「あぁ、教師や生徒の妖力で結界や封印を保っていたらしくてな」
人間を入学してしまうとそれらが保てなくなるって訳ね。いや、結局ヤバい所なのは変わらないじゃんか。どんなのが封印されているかが気になるけども……よく分からない空間が結界の中って言うのであれば意外と納得できる。けどさ……あの手は一体なんだったんだろうか? 1回目には無かったのが2回目にあるのはおかしいから。もしかして……別の怪異? だったのかな。
「もう目の前だし何か買って帰らないとな」
「ねぇ伊月、最___」
➖???➖
「___初の・・・ここはどこ?」
伊月にスマホで連絡は出来ないみたいだね。圏外になっているしさっきまで見えていたコンビニは見えない。最近通い始めた学校の正門が見えていたら……誰が見ても伊月といた場所ではないことは分かるよね。ただ今は学校の外にいるからもしかして、怪異とかではなくて普通に誰かの超能力とかだったりするのかな。
「うまそうな匂いがするのぅ」
「狐の……アレは私が喰う」
「小童は結界外におるのに無理なことじゃろ」
「忌々しいな」
正門の方へと向かってくる二つの大きな影が見える。1匹は狐の化け物なのは会話の内容から分かるが……もう1匹は大きな羽を持っていて4足歩行をしているのは分かる。おそらくは肉食で正門に向かってきているのは僕を目的だろうね。さっき「うまそう」とか「喰う」って言ってたの聞こえていたからね。喰われないためには正門は絶対に潜ってはいけないのはバカな僕でも分かる。
結界内で見つかっていたら殺されていたのは間違いないから良かった。このまま逃げるのがいいと判断した僕は逃げようとするも手に掴まれて結界内に引き摺り込まれる。引き摺り込まれたが正門からは遠くない。走れば追いつかれずに門を超えることが出来る筈だった。
「無理だ」
「えっ__デカッ」
大きな羽を生やしている生物は何故か僕の正面からやってきて前足で捕まり地面に押さえつけられてしまった。しかもその生物はドラゴンと言われる最強のトカゲだった。そのドラゴンは褐色肌? で5、6mはある巨体だった。もう1匹は……遅れてやってきたみたいだが、人型になっていた。狐は和服のメイド服になっているけど、なんで?
「小童、会うのは三回目じゃな」
「初めてですけど?」
「姿を変えておったし分からんのは仕方ないかのぅ」
狐はそう言いながら放課後に会った男の姿に変化したと思ったらすぐに元に戻った。狐は「可愛い儂が醜い人間に長い間、変化はしたくないのぉ」と言った。それならなんで変化してあの時、僕を追いかけてきたんだよ。意味が分からないことを言わないで欲しいんだけど……無理か。こういうタイプは話が通じないし、イカレているから無視するのが1番。
「・・・オスって言ってなかったか? 狐の」
「儂は可愛いじゃろ」
「こんなのと……一緒か。いやだな」
「そういうでない。蠱毒から出れないのじゃからな」
蠱毒って毒を持つ生物を1つの壺とかに入れて殺させ合うっていうアレなのか? やっぱりヤバイ所に入学したじゃん。このまま僕を無視して喧嘩していてくれないかな。ドラゴンは「お前は何故、この人間を連れ込んだ?」と言って狐の方を睨んでいる。狐はキョトンと一度してから口角を三日月のようにあげて笑った。
「うまさそうだったしその方が面白いじゃろ」
「・・・ならばお前には渡せんな」
「そうじゃろうな」
ドラゴンは逃がしてくれる雰囲気が出てくれているけどさ、アナタも食おうとしてませんでしたか? 流石にバカな僕でも覚えていますが。ピリついているから逃げれるってわけではないんだよね。誰か助けに来てくれるわけではないしね。前足さえ退けてくれたらなんとかして逃げるんだけども……
「お話のところ、申し訳ないのですが」
「「はぁぁ!?」」
「そのお方を放してくれませんか?」
「何故、お主が……」
黒い羽を生やした誰かが来てくれた。その人のが連れて来てくれたのか、伊月とショー先生がやってきた。ショー先生は強いのは知っているから狐の方はどうにかなりそうだけど……ドラゴンは絶対に無理だろう。黒い羽を生やした人がどのくらい強いかによるか。
「私の獲物だから渡さん」
「そうですか。灯鴉羽」
「待ってく__」
黒い羽の人が指先から出した小さな灯程度の火がドラゴンの方へ、放たれると鴉のような形になり胴体に当たると大きな羽根になりドラゴンを吹き飛ばした。えぇ~物凄く強くないですか? あの人一体何者なのさ。
「雨歌、大丈夫か?」
「なんとか。あの人は……」
「あいつは八咫って言って神ノ使いだ」
ショー先生が八咫と言った人は狐と向き合い「あなた様がそこまで堕ちていられるとは」と言って悲しそうな顔をしていた。狐は「数百年前まで人型にもなれなかった鴉が偉そうじゃな」と言って自分の周囲に炎を出して1つを僕の方へ放ってきた。炎は2mほどの狐になって一直線で向かってくるし結構な速度が出ているので避けれないだろう。
伊月が僕に覆いかぶさるように炎から守ってくれようとしているがその前にショー先生が刀で斬ってくれた。狐は「ほぅ、まだ生きておったのか。幼馴染の女子を儂に喰われたいうのに」と言って少女の姿に変わった。先生からどす黒い雰囲気が出てきてその隙を見逃さなかったのか、先生に対して2つの炎を放ってきた。しかもさっきのよりも速い。
「継殿落ち着いてくださいよ。灯鴉羽」
「すまない。助かった」
「なぁんじゃ。面白味のない奴らじゃの」
伊月と僕は何をどうしたらいいのかが分からず3人のことを見ながらどうするかの相談をしていた。5分は経っていてもおかしくない筈なのに一向に手が現れないことに僕は嫌な予感がしていた。5分経っていないことに掛けたかったが……
「儂の演技はどうじゃった。絶望したかぁ小童? お主らは儂の娯楽で食い物なだけじゃ。もっと楽しませてくれるかのぅ、じゃないとここにいる意味がなくなるぞ?」
と狐は顔を高揚させながら言ってくる。この狐は……邪悪だ。




