93話 ボロボロノート2
➖教室(1-1)➖
–伊月視点–
雨歌にノートを見せてから2週間は過ぎた。その間は何事もなく過ごせてはいるが情報も掴めていない為次の行動に移すことも出来ない。楢山に接触しようにも雨歌がいるので出来ないし、緋華に預けようとしてもアイツは生徒会に引きずられて行くしで全然何も出来ていない。流石に平和に暮らせるのであればいいんだけど……そうはいかないだろうからな。
「伊月……珍しいね。溶けてるの」
「やらないといけないことがありすぎてな」
「今日は生徒会にお世話になろうか?」
生徒会か……緋華がいる訳だしそこに行ってもらえばよかったのか。緋華が生徒会でいない分、俺がそばにいないといけないと思っていたけどそうか生徒会に行かせれば良かったのか。雨歌の奴は忘れているだろうけどあの吸血鬼先輩にしたことを考えると行かせない方がいいんだよな。緋華が居れば問題はないだろうけどな。
「今日だけお願いしていいか?」
「うん、お任せあれ。あとこれ遅くなったけど」
「プレゼントね、家に帰ってから開けるわ」
「そうして、それじゃあ頑張ってね」
「おい、一人で……いく……な」
雨歌は速攻で教室を出て行ってしまった。学校だし距離はそんなに離れていない訳だし、あと放課後になったばかりで生徒の数も結構多いから問題はないだろう。念の為に緋華に連絡を入れておくかな。連絡を入れようとスマホを取り出した瞬間、廊下がざわざわとし始めたので出てみると……女生徒から「貴方の恋人……消えました」と言われて即緋華に電話をした。もしかしたらボロボロノートに関することで消えた可能性があるな。
➖???➖
最悪なことが起きました。教室を出て緋華さんがいるだろう生徒会室に行こうとしていた所、壁から手が出てきて全く分からない空間に連れて来られました。距離的に問題ないと思って伊月のことを教室において行ったのに何故こんなことになった。僕は何も悪いことをしていな……後ろに何かの気配を感じて固まるしかない。
「やぁ~久しぶりだね」
「誰ですか?」
後ろから全く知らない人の声が聴こえてきたが絶対に振り向かない。こういうのは振り返た瞬間に呪われるのがお決まりであるから絶対に後ろを向くものか。「ノートは呼んでくれたかい?」と言われて振り向きそうになったがなんとか堪えた。・・・よしここは逃げの一択だよね。
何かがこちらに来る前にダッシュするにしてもどれくらい近いのかも分からないのに逃げれるのかと言われてしまったら何も出来ないし何も言えないのでどうしたものか。というか前にも似たような感覚があったような気が……いや、今それについて考えるよりも逃げておかないと母さん達に怒られるから無事でいないと。
「君に危害は……えっ? あっちょっ!」
傷口が開かないように気を使いながら出来るだけダッシュで走る。アレは僕を止める為に何かをする筈だから警戒をしておかないといけないのか。周りに何かされていないか探しながらしていると……先ほどまでいた場所に戻ってきた。何がどうなっているのかが分からないので困惑していると、アレが目の前からやってきた。
「いやぁびっくりしたよ逃げ出すなんてさ」
「・・・僕は美味しくないですよ」
「なんだいそれは」
視界に入れても身体は動くみたいだから触られるとダメなのかな? それか顔だけが見えていないから顔を見ると即死するみたいな奴かな? どっちにしても気を付けないといけないのには変わりはないからなぁ。僕は何かを出来ない訳ではないけども出来ることを探さないと。
「警戒はちゃんとしているんだね」
「大怪我していますし」
「じゃあ話そ__って時間切れか。またね」
「えっ」
後ろから伸びてきた手に掴まれてどこかに引きずり込まれそうになっている。必死に抵抗はしてみたが引っ張っている力の方が強くて抵抗は空しくどこかに連れて行かれた。
➖教室(1-1)➖
どこかに引きずり込まれた筈なのに教室のしかも伊月の所に投げ捨てられた。いや、そっちが連れていった癖に何故乱暴に扱うのかな。時間切れってのは僕があの場所に居れる時間のことを言っていたのか。それが分かったのはいいことなのかもしれない。5分くらいしか居れないってのは分かったので時間がくるまで逃げつつければいいってことか。
「大丈夫だったか?」
「うん、問題ない」
「あの……ノートに関係ある奴か?」
なんでそうだと……伊月のことだからある程度は予想がついていた可能性があるか。僕が頷くと「そうか。はぁ、涼音さんに色々と言われるかもな」と伊月が言った。母さんにバレたらヤバイのを忘れていたけど、今回は悪いけど無視する。
(伊月、あっちから来てくれるのであれば餌を撒こう)
(ダメだ)
(やるしかないよね?)
伊月があの空間に来れるかは賭けになるけど、前と同じであれば行き来は出来る筈。色々と知らないことが多すぎるから教えてもらわないと。




