78話 拘束と監禁1
➖自宅➖
父さんが病院に迎えに来てくれてそのまま家に直行で帰って来たんだけど……何故か母さん達にリビングで正座されられていた。母さんは「退院するまでは怒らないでいたのよ」と言ってから僕の今回での行動を咎めることを言っていた。まずは命を狙っていた人を簡単に信用をしないこと、危なくなったら即逃げること。絶対に攻撃したり何かに反論したりしないことを言われた。
「雨歌ちゃん、分かった?」
「母さんあの場ではああするしか」
「わ・か・っ・た・?」
「はい」
圧が強くて怖かった。何かを言っても絶対に聞き入れてくれない雰囲気を出しているのでここは折れておかないと永遠に説教が続くだろうな。よしこれなら母さんの説教はここで終わると安心していたらリビングのドアが開いて「涼音さん、俺じゃなくても……」と聞き覚えがある。ギギギッと音を出しながらその声の人物を見る。
「俺より緋華の方がいいと思いますよ」
「緋華ちゃんから返信がないの。それで?」
「反省していないですね」
「伊月!?」
伊月に裏切られたので速攻ここから逃げようと思ったが正座をしていたせいで足がしびれてその場で倒れ込んだ。僕は足がしびれていて苦しんでいたが倒れ込んだ状態から伊月が持ち上げてきた。完全に逃げれないようになってしまった。いや足がしびれていて逃げれないのは逃げれなかったから伊月に持ち上げられていてもいなくても別にいいんだけどね。母さんは伊月からの言葉を聞いてずっと何も言っていないのが怖い。そしてゆっくりと僕の方へと近づいてきて母さんは手で口を塞いだ。
「雨歌ちゃん、アナタはやっぱり学校には行かせません」
「涼音さんそれは」
「コレは決定事項です」
「いや、それは流石に可哀そうだよ」
「眩寺さん嫌です」
「んーんー」
「ダメ」
僕が言ったこと分かったんだ。そんなことよりもなんで行かせないってことになってんの? 僕と父さん、伊月がどうしたものかと首を傾げていたら母さんが「眩寺さん、前に言いましたよね? 雨歌ちゃんの命を狙ってくる輩がいるのなら……」と言って父さんを睨んでいた。父さんは母さんの言葉を聞いて何か考え始めた。伊月と緋華さんからは転校させるとか言う話は聞いたじゃなくて、まだ2か月も経ってないの。
と言うか父さんがあまり怒っていないのになんで義母である母さんが怒ってるの? 父さんも義父であるから少しだけ仕方ないとは思うよ。なんて考えていることをバレたのか伊月に顎で軽く頭をこつかれてしまった。僕と伊月のやり取りを見た母さんは「ごめんね。私は眩寺さんみたく強くないから」と力なく笑った。そんな母さんを見て僕は口を塞いでいる母さんの手を軽く噛んだ。
「う、雨歌ちゃん」
「母さん、僕は反省はしていない」
「だから学校には……」
「学校は行く。無理ならここから出て一人で生きていく」
おそらく母さんはこれだけでは自分の意見を曲げないとは思うからもう一押して僕は「みんなと連絡も一生しない」と付け加えた。そしたら伊月と父さんに何故かダメージが入ってその場で倒れ込んでしまった。母さんは固まった後にダバーという効果音が出そうなくらいに泣いてしまった。僕は伊月から解放されたしリビングから出て行こうとしたら母さんに足を掴まれた。
「な、なに?」
「1日に5回は電話と1週間に2回は会いに来て」
「多いよ」
僕のツッコみを聞いた瞬間に母さんが号泣し始めてしまった。その声で他のみんながリビングに集結してしまった。無事ではない3人を見て、何があったのか僕に説明を求めてきたので説明をしたら空と海兎以外は倒れたり泣いたりしていた。海兎はまだしも空が倒れたりしていないのは少しだけ不思議ではあるので恐る恐る聞いてみた。そしたら「雨歌兄さんについていくから問題はない」と返って来た。予想外の返答ではあったがまぁ別に何も問題は無いか。
みんなが空の言葉を聞いた瞬間に復活してきたのを見て、僕は問題はないもないと思った数秒前の僕を恨みたい。全員が付いてきたらそれは家出ではなくてただの引っ越しになるのでやめて欲しい。僕は絶縁や家出は一切出来ないなと思った。
「分かりました。学校に行くことは認めます」
「やった」
「その代わり条件があります」
復活した母さんはみんなをリビングに留めながら僕への条件を提示してきた。
1.危なくなったら逃げること
2.逃げれなくも応戦しようとしない
3.常に緋華さんか伊月、信用できる人と行動すること
の三つを提示してきた。守れない場合は即退学させて家に監禁すると言われた。ちなみに嫁にも婿にも出さないで一生ここで暮らさせるとのことだった。僕は冗談かと思ったが母さんの目はマジだったので絶対に守ると心に誓った。
「条件をのむよ」
「結婚させるのであれば空ちゃんにさせるから」
「雨歌……絶対に守るぞ」
空と結婚はしないし、守るって心の中でしっかりと誓っているから問題ないからね。空さんや、小声で「雨歌兄さんと結婚。結婚出来る」と言わないでね。緋華さんにも後でこういうことがありましたって連絡を入れておかないといけないな。転校は多分だけどしなくて済みそうだ。よかったとは思う反面もっとヤバイ状況になっているのでは? と思っている僕がいる。
「庭から失礼します」
と颯爽と出てきたのは紫音さんと……何故か拘束されて口をガムテープで塞がれて紫音さんに抱えられながら「んーんー」と言っている緋華さんだった。全員してその様子に対して「どうした」と言ってしまった。シスコンが極まって駆け落ちする展開なのかとは思わない。紫音さんはシスコンではあるものの結婚をしたいという訳ではないと酔っぱらっている時に大声で言っていた。
紫音さんは靴をその場で脱ぎ、妹を雑に投げてリビングに上がった。緋華さんはドンと音を立てた後に痛がって転がり回っていた。伊月がとりあえずは止めて担いで僕の部屋へと運んで行った。紫音さんは僕の下へとくると綺麗に土下座をして「ウチの妹が申し訳ありませんでした。色々と処分させましたので許してあげてください」と敬語で言ってきた。
いつもなら勝ったと思うんだけどあの状態の緋華さんを見てからでは流石に何かを言えないんだよ。何かを言ってもいいけど、何をやらかしたかは分からないので何も言えないのでどうしたものか。
「雨歌ちゃん、部屋に行っておいで」
「聞くよ」
「しんどいでしょう」
「大丈夫」
只事ではないことを察した母さんが僕に話を聞かせないように部屋に行くようにさせた。ちなみに僕も拘束されて兄さんに担がれて部屋にいる伊月にバトンパスされた。伊月は「お前ら、アホか」と呆れられていた。拘束されて部屋に監禁された。




