73話 キャラ崩壊ぃ?1
➖病院➖
あの後、何故か気を失ったらしく目を覚ますと病院だった。目を覚ますと誰も近くに居らず少しだけ寂しいとは思ったけどまぁ仕方ないよね。起き上がってどこか……あれ? 体に力が入らないのは何故かのかな? 首すら動かせないとかどうやってトイレに行けばいいんだろう。行きたいとは今は思ってないからいいんだけど、とりあえず起き上がりたい。
周りから吐息とかは聞こえないからおそらく個室だろう。学校に居た時間とかを考えると今は夜中になっている筈なんけど、カーテンの隙間からは少し明るい光が見えるんだよねぇ。今頃、伊月や緋華さんは学校に行っているだろうな。梨奈姉さん達も行っていることだろうから会いたくても会えないのは仕方ないよね。せめて体が動かせれればいいんだけど。
「動けないのか。殺すなら今がチャンスなんだが」
音もなく病室に入ってきたのは砂孤響だった。身体は古村くんではあるけど、ややこしいな本当に。僕がどっちにすればいいのかと悩んでいると「お前、まだボクが狙っていたら死んでいたぞ?」と呆れながら言ってくる。声も出せないことに気が付いてどう返したらいいのかが分からない。
「さてと本題だが……謝罪をさせてくれ」
はぁぁ? 謝罪ってアレか謝るってことなんだよな。謝罪したことくらいで僕が許すとでも思っているんだろうな。そこまでのお人好しではないからね僕は。どんな謝罪内容でも絶対に許すもんかと砂孤を睨みながら目で訴えるが「してきたことに対しては謝る気はないからな。それ以外ことにだ」と僕の言いたいことを理解したみたいに言ってきた。
「・・・娘の体の一部が完全にお前の一部になった、んです」
そうなんだぁ僕の体の一部になってしまったんだ。仕方ないこ———ではないな絶対に。本当に1発殴ってやりたいなコイツ。この際それに関して別にいいとしても目を逸らしながら伝えてんじゃねぇよ。砂孤は僕にジト目で見られながら「本当にすいませんでした。妊娠時にはお父さんがサポートするからな」といい笑顔で言ってきた。本当に僕が気絶していた時に何があったん?
えっと妊娠はしない筈では? 流石に緋華さんって訳ではないだろうし伊月に対してって訳ではないだろうな絶対に。あとさぁお父さんって何? 1億歩譲ったとしても父親と認める訳ないでしょうが普通に考えてさ。この人ってこういうキャラだったのか? 明らかに物凄くキャラ崩壊しているよね。なんて考えながら砂孤を見ていると病室のドアが勢いよく開けられて「お前、なんで一人で雨歌のお見舞いに来てんだよ」と伊月が少し声を抑えて勢いよく入ってきた。
伊月と砂孤が喧嘩を始めようとしていたがショケイくん先生が二人の頭を叩いて無理矢理ではあるが病室の外に連れて行かれた。その様子を見ながら一体誰が来ているのかと考える。流石に緋華さんは来てくれるとは思うけど。なんて考えて待っていたら1時間経っても誰も来なくなった。あの三人だけなの? いやアレだよね忙しくてお見舞いが三人だけになっているんだろうね。
「声と頭は動くようになったけど体が動かない」
「汗かいてない? 拭こうか?」
「大丈夫ですよ緋華さん!?」
「寂しかった?」
「・・・はい」
流石にここで見栄を張って寂しくないって言っても緋華さんにはバレてしまうので素直に認めておく。素直に認めたことが嬉しかったのか凄く優しい笑顔で頭を軽く撫でてくる。緋華さんは僕の頭を撫でながら僕が気を失った後のことを話してくれた。何やら砂孤が急に「娘は……転生していたんだな」と言ってみんながドン引きしたそうだ。急にそんなことを言ったら「えっ? 何コイツ」とはなるかな。
なんでも砂孤は僕が言ったことに対して娘の面影を見たらしく能力? で体を診たみたく、カプセルに入れていた筈のモノが壊れていたとのことだった。いつ壊れたのかは分からないらしいがおそらく火事の時に壊れてそこから少しずつ馴染んでいった可能性が高いそうだ。確か腹にあるとか言っていたけど一体何だろう?
「緋華さんは何か聞いて無いですか?」
「き、聞いてはないかな」
緋華さんそう言うのであれば僕の方を見て言ってくれないといけないじゃないですか。絶対に知っている人の反応になってしまっていますよ。腹の所にあるのであれば後で父さんと母さんと話して調べてもらえるようにお願いしよう。まぁ緋華さんに無理矢理にでも聞けばいいだけの話なんだけども、気まずくなるのは嫌だからやめておこう。
「そうだ。伊月からの伝言聞く?」
「お願します」
「俺は絶対に無理させないからって」
「何に対して?」
聞いた瞬間出てきてしまった言葉に緋華さんはクスクスと笑って「これからの事みたい」と答えくれたが僕はそれについてはいまいち分からないがなんでもいっか。これからの事は砂孤との距離感に対しては動けるようになってからでもいいかな。
「ねぇ雨歌くんもうここから逃げない?」
「逃げてどうするんですか」
「二人だけで暮らすんだよ。楽しそうじゃあない?」
こんな怪我をするくらいならここから逃げて緋華さんと二人で暮らすのは悪くはないとは思うけどもそれはいただけない。伊月も僕の家族も緋華さんの家族も……もちろん伊月の家族も一緒じゃないと僕は嫌だ。緋華さんは僕だけが居ればいいかもしれないけど、僕はそうじゃない。弱さを知っているから緋華さんも伊月もみんなが居ないと僕は絶対に持たない。
「緋華さん、みんなと一緒ならいいですよ」
「・・・冗談だから気にしないで」
と優しい声で緋華さんは言う。流石に眠くなった来たのか目が重くなってきてしまったので、そのまま目を閉じる。
(おやすみ……私だけの雨歌くん)
完全に意識を手放す前に何かが聞こえたような気がした。




