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72話 隔離された空間?で、語るのは……2

➖???➖

 彼の胸倉を掴みながら僕はやってしまったと思いながら胸倉を掴んだまま、どうしようと悩んでいた。砂孤はそんな僕を見て「・・・悪かった。何もしないから放してくれ」と言ってきたので掴んでいた手を放した。後ろ向きで古村くんから少し距離を置いた瞬間、左肩に刺さりそうになっている剣先が見えヤバイと思い避けようとするがすでに遅かった。あぁ刺さるんだなぁと思いながら諦めていると後ろに乱暴に引っ張られた。


 おそらく背後にいる何かが助けてくれたと思ってもいいのかな? 左肩に剣は刺さりはしたが貫通はしていないので後遺症は残らないと思いたい。傷口は熱く、今にも叫びそうになるくらいに痛いのを我慢しながら……砂孤のことを睨む。そんな僕を見て彼は「本当にバカなんだな。ボクが何もしないと思っていたなんてな」と笑いながら言ってきた。はぁ……なんでこうさ、治りかけの左肩に怪我するかな。


「残念だ。せっかくの成功例なのに」

「思ってないでしょ。物凄く嬉しそうにしているのに」


 砂孤は自分が笑っているのに気が付いていなかったのか口を触っていた。彼は「目前だからか……」と言って僕の方にゆっくりと向かってくる。そんな彼を見た僕はゾっとしたので走って逃げることを選択した。直感だけども僕を殺したい本当の目的は『娘の生成』だろう。聞いた話を思い返してみたら生き返らせるって言っていたからな。たぶんだけど砂孤響は罪悪感っていうのは僕らに対しては感じていないだろう。前世の娘に対してだけ感じているような気がする。


 痛みのおかげで冷静に物事を考えられるっていいな。まぁ僕は全くもって頭がよくないのでそこまでのことは考えられないけど、少しなら考えられるかな。そんなことを考えながら走っていると4mほど前に剣を持っている砂孤がいた。止まって一瞬本来であれば彼がいるであろう後ろを振り返り見えなくなっていることを確認して、前に視線を戻すと目の前にいた。僕は驚いて目を見開くが彼は穏やかに笑って腹を殴ってきた。


「うっ」

「大人しくしておけよ」


 殴られた腹を抑えながら倒れ込む。砂孤はそんな僕の髪を掴み、首元に剣を付けつけながら「死んでから回収するつもりだったが」と言って、少し離れた。一体何が目的なのかと警戒するが……何をされても動けない気がする。左肩から血が出ているのを放置して走ったせいか、それとも単に僕が弱すぎたかは分からないが体に力があまり入らない。誰かに助けを求めれる訳でもないし助けられるだけを続けたくもない。それなら動けよ、体に力がある程度入るなら立てるだろ? 視界が歪むわけでもない。


「・・・動くのは勝手だが」

「なんだよ」

「娘の体の一部は返してもらう」

「もしかして……」

「あぁ入っている」


 砂孤の言葉を聞いて僕は立ち上がろうとしていたことを止めてしまった。体の中に入っているとしても流石に身体の一部分になっている訳が無い。そんな期待をしていたが「1部になっているぞ」と砂孤は僕の腹部を剣で刺しながら言ってきた。刺されたことを一瞬理解できなかったが痛みが襲ってきて声をあげた。


「あぁぁぁぁ」

「痛いだろ?」


 僕は刺さっている剣をこれ以上深く入れられないように刃を掴んで必死に止めるがそれを面白そうにしながら見ている砂孤に対して、絶対に一発殴ってやると心の中で誓った。ただ今の状態では逃げることも殴ることも出来ないからどうしようか。何かコイツの気を逸らせることができたらいいんだけど、なんでもいいから起きて欲しい。


「安心しろ。ちゃんと苦しませ———はぁ?」

「私の雨歌くんを傷つけたな」

「待って何故お———」


 聞き覚えがある声が聞こえたと思ったら砂孤の顔面に緋華さんが蹴りをくらわせていた。蹴られた事で剣が彼の手から離れたことで消えた。緋華さんがきたことで少しだけ余裕がうまれたのか、そういう仕組みなのかと思ってしまった。緋華さんは砂孤を蹴り飛ばしてこっちにくると思ったけど、来る気配が全くない。それどころか僕の方を向こうともせずに後ろ姿しか見せてくれない。


「雨歌、大丈夫か?」

「伊月……とみんなも」


 緋華さんが来た後に伊月と他の人達が来た。伊月は僕の怪我を見るなりアタフタとしながらどうしたらいいかを先生達に聞いていた。そんな伊月を見て慌てすぎでは? と思いつつも心配してくれているとこに嬉しくなった。緋華さんも心配で誰よりも速く来てくれた訳だし何かお礼しないと。それに他の人にもしないといけないなぁ。


「緋華、落ち着けよ」

「伊月だけは言われたくない」

「お前ら今は仲良くしろよ」


 緋華さんと伊月はこんな時でも相変わらず仲が良いようで安心した。少しだけ和んでいたら「顔を蹴ることはないだろ」と砂孤が言ってきた。蹴り飛ばされたことで倒れた際のままでこちらに話してきているのを見てどれだけ強い力で蹴ったのさ、緋華さん。殴るなら今がチャンスと思い立ち上がろうとするも足に力が入らなくなっていた。もし立ち上がれたりしても伊月達に止められていただろうから諦めるか。


「お互いに立てなくなったな」


 砂孤は悔しそうな悲しそうな声で言ってきた。僕は無理矢理立ち上がり、フラフラしながら砂孤の元に行く。伊月が僕のことを止めようとしたが緋華さんがそれをやめさせる。彼の下まで行くと僕は手を差し伸べた。


「同情のつもりか?」

「同情ですよ。アナタの娘さんに対しての」

「そうか」


 と言って彼は差し伸べていた手を叩いて「負けた、降参」と憑き物がまだ残っているような笑顔で言った。その後大の字になって目を閉じた。それを見た僕は後ろに倒れそうになったところを緋華さんが受け止めてくれた。

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