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61話 お家デート4

自宅リビング

 勝負の結果は僅差で僕の負けだった。あと1、2撃入れれば僕が勝っていたのに負けてしまったのが悔しい。負けてしまったので女装を明日一日中しないといけないのは流石に恥ずかしいかな。学校が許可を出すかによって内容は変えてもらおうか。流石に僕が1日女装するのは許可出来ないだろうから変えてもらうことになるとは思うけどなぁ。


「ただいまってお前ら何にしてんだよ」

「兄さん良いところに」

「質問に……はぁ、どうした?」


 偶々帰ってきた兄さんに罰ゲームの件を言って大丈夫を聞いたところ、「罰ゲームの命令は知らんがそんなのを許可するわけないだろ。あとお前らで確認を取れ」と言ってリビングから出て行った。正論だったので何も言えなかった。僕は学校に連絡を入れる為にスマホを取って電話を掛け始めようとしたら、緋華さんに奪われた。僕は先ほどまでスマホを持っていた手を見つめながら固まっていた。


「緋華、お前どこに行く気だ」


 と伊月がリビングから出て行く緋華さんに声を掛けるがそれを無視して出て行った。階段を上がる音が聞こえていたので2階に行ったのであろう。僕の部屋が2階なのでそこにスマホを隠しにでも行ったと予想は出来るけど、何故そんなことをするのかは予想が付かなかった。まぁ少しの間なくても問題はないだろうから別に隠されてもいいんだけどね。


「アイツは一体何がしたいんだ?」

「分からないかな」

「デートする予定だったんだろ」

「そうだけど」


 伊月は何かを言いたそうにしていたが僕は分からなかった。伊月は「邪魔だったろ、俺が」と言うが別に邪魔だと思っていないし、緋華さんと二人でゲームをしたらひどいことになっていたと思うんだけど。伊月は昨日僕と少しだけだけど二人だけでデートしたのに緋華さんはしなかったことについて負い目を感じているんだなぁ。僕が伊月の立場だったら気にするし、仕方ないことなのかな。


「僕は邪魔だとは思ってなかったよ」

「緋華は?」

「自分で聞けばいいじゃん」

「確かにそうだな」


 伊月は恥ずかしいのか後ろ髪をかきながら「確認するか」と言っていた。本当に嫌いなのかが分からないなぁ。それが良いバランスになっているのかもしれないから僕からは何も言わないでおこう。僕は伊月に「膝借りてもいい?」と聞いて「良いぞ」と返ってきたので頭の上に乗せて寝転んで少しだけ目を瞑る。


―伊月視点―

 雨歌が寝転んで数分経ったのだが寝たなコイツ。起こさないようにしないといけなのであまり動けなくなってしまったな。やることが特にないので雨歌の頭を撫でようとしたら、どこかに行っていた緋華が帰ってきた。緋華はソファーにあるクッションを手に取り俺に向けて全力で投げてきた。流石に防ぐか、避けないと雨歌が起きてしまうかもしれないからどうしたものか。どっちにするかを悩んでいたら顔にクッションが当たった。


「お前……しばくぞ」

「避けれたでしょ」

「まぁいい。どこに行ってたんだよ」

「ふふふっ」


 急に笑い始めた緋華に対して俺は引いた。引いている俺は無視して緋華は「許可を貰えた」とドヤ顔で言ったがよく分からなかった。許可を貰えたって一体なんのことだ……罰ゲームのことか。あぁ~許可を貰えたのかよかったな。罰ゲームなのだから許可を貰えないと思ったから採用したんだがまさかのだったな。何か条件とか付けられていないよな? 無条件で罰ゲームでの女子生徒の制服を着用を許可するわけがないからな。


「無条件って言うことはないよな?」

「うん。お義兄さんがお見合いするという条件で」

「良いのか? それで」

「お義兄さんに許可はとったから」


 俺は緋華から目を逸らしながら、碧さんが良いと言っているのであればいいかと思っていた。それよりもリビングから出て行って碧さんの部屋に行っていたのか。行動力あり過ぎるだろコイツ。そういえば雨歌のスマホをどこに持って行ったんだよ。雨歌はあまり使わないから問題はないだろけど無いのは流石に困るだろ。俺は緋華に「雨歌のスマホをどこにやったのか」を聞こうと思って緋華を見るが……息を荒げていた。


 少し目を離した間に雨歌の近くまで来ていてスマホを構えながら息を荒げていた。通報すべきかどうかがわからない状態だが……写真を撮りまくっているだけだからしなくてもいいか。雨歌が起きなければいいわけだしな。


「はぁはぁはぁ」

「だ、大丈夫か?」

「襲ってもいい」

「薬はどうした? 飲んだか?」


 緋華は「飲んだけど、雨歌くんの近くにいると……無理」と言ってきたが抑える薬はちゃんと効いているんだな。俺は緋華のことを抑えながら少しだけコイツのことを考える。紫藤家の種族は確か、(おおかみ)(ひと)だったよな? 紫音が前に俺に言ったのは恋を自覚したら発情を定期的にするってのは知っているが緋華が無理だという理由が分からない。薬の効果を調べようにも持っていないかもしれないので調べようはないな。


「はいこれ薬」

「うっす」


 緋華から飲んでいる薬を箱ごと貰ったのでそれを見る。発情を抑えるのはあるってことは分かったが他には……何もないな。一応緋華に紫音も服用しているのかを聞いたら「してる」と返ってきたので俺の方でも写真を撮って紫音に送る。その際、メッセージで「コレ使っているか?」と送り返信を待つ。緋華はとりあえずは落ち着いたみたいなので一安心だな。


 獣人は発情期ってのがあるのはしんどいだろうな。薬を飲んでも効果が出ない時も緋華を見ているとあるみたいだしな。なんて考えていたら紫音から返信がきたので内容を確認する。「使っているけど、緋華にはあまり効かないみたいだから気を付けろ」と送られてきていた。最初から言っておけよアホが。


 スマホから目を離し緋華を見ると雨歌に手を伸ばして固まっていた。何をしているのかと思った瞬間、素早く俺の膝から雨歌を奪い抱え込んでリビングを出ようとしたので大慌てで捕まえた。危なかったと思いつつ緋華から雨歌を奪い取り台所近くにある椅子に座らせて、雨歌はソファーに寝転がらせて俺も緋華の所まで行く。緋華の目の前で俺は立ちながら先ほどのことを問いただす。


「何をしようとした?」

「連れ去ろうと」

「何故?」

「我慢できなくなって」

「はぁ~」


 俺はため息を吐いてからスマホを取り出し紫音に電話を掛ける。紫音が出たので先ほどあったことを説明して、緋華に何が起きているかを聞いた。紫音は『医師でもしっかりとは分からないがおそらくは子を産めば落ち着くとのことだ』と言われた。それを聞いた俺は何も出来ないじゃねぇかよと思いながら電話を切る。切る際に紫音が『お前、緋華に手を出し』と言っていたがちゃんと聞いてはいない。


 思っていても口には出せないから今できる対策を考えるべきだな。緋華は「その……ダメ?」と聞いてきたので俺は「ダメに決まっているだろうが」と言いながらデコピンをくらわす。何故か緋華はデコピンをくらって少しだけ嬉しそうにしていた。ドⅯなのかと少しだけ引いていると「伊月ならこうして止めてくれるのが変わらないから」と緋華は言った。それを聞いた俺は驚いた。そんなことを言うとは思っていなかった。

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