56話 役割3
➖公園➖
―伊月視点―
古村が立ったままで動かなくなってしまったんだがどうすればいい? このまま放置して帰るのは少しだけ可哀そうな気もするんだが、動かなければ帰るか。雨歌がいる方へに向くとすべり台の上に羽先の青いカラスが1羽が止まっていた。雨歌が見つけたカラスと似ているから多分だが同じカラスだろうが何故そこにいる。俺が近づくとカラスは『がぁあ』と鳴いたと同時に悪寒がして後ろを振り向くと古村の右手に剣を握ってこちらを睨んでいる。
「何故だ」
「何がだよ」
「ボクは散々努力してきて今があるのに何故」
「知らんわ」
「ソイツのせいだからお前も協力してくれないんだろ」
ここは現実であったゲームの世界ではないんだぞ。その証拠に雨歌は生きているし、お前ら転生者が知らないことが起きている。まぁ今のコイツに言っても何も意味がないだろうから言わないがもう1発くらいは殴ってもいいだろう。結構な距離を離れてしまっているから近づくのに苦労しだし一旦アイツの情報を整理しよう。今持っている剣は斬撃を飛ばせれるが生きている者に対して有効かは分からないがアイツの言い方的には有効だろう。瞬間移動らしきものも使えるので距離を離しても意味がなく、範囲が全く分からない。1番厄介なのは剣だが、その次は催眠? を使えることだろう。古村自体は別にそんなに脅威ではない。
「何故ソイツを守る? 転生者なのに」
「証拠がないから信用できん」
「証拠を教えてやるよ。好感度ゲージがソイツにはない」
はぁ? 好感度ゲージがないから転生者だと……それよりも好感度なんて見れるのか。冗談ではなさそうだから困るんだよな。雨歌の好感度ゲージが見えないので転生者というのは無理矢理なような気がするし何か条件とかはないのか? 古村に聞いても素直に答えてくれるとは思えないからどうしたものか。コイツだけの能力なのか、他の転生者も見えているのかも分からないからな。
「もしかして洗脳されているのではないか?」
「されてるわけないだろ」
「なら味方する理由なんてない筈」
味方する理由か……好きな奴だし親友だとも思っているし、婚約者でもある。雨歌は別に何か悪いことをしたわけでもないから味方するのは同然だと思う。雨歌に味方する理由はたくさんあるから俺は「お前みたいな主人公には分からなくても仕方ないな」と言ってやった。その言葉を聞いた古村は剣を構えた。脇構えという剣道の構えをとり俺の方へと距離を一気に詰めてきた。
剣の長さは60㎝以上だったが長さを変えれるかもしれないので避けるのは難しいと思うから俺は古村が構えていない左側に向かい振り上げるのを俺の左肘でアイツの手首にぶつけて阻止することにしたけど出来る可能性は低いだろう。俺と古村の距離は徐々に近づいて行きお互いに攻撃が出来る範囲まで来た。古村の方がリーチが長いので有利であるので俺は一か八かの賭けである。俺と古村がぶつかる直前にタバコの匂いがした。
「お前ら、やめろ」
「っ!?」
「なんで先生がここに」
「そんなことはどうでもいいんだよ」
突然現れたショケイくん先生により俺と古村の動きは止まったというよりかは先生に止められてしまった。古村の剣は先生の腰にさしている刀で止められて、俺の肘は右手で止められていた。確かにショケイくん先生が現れたのには驚くが古村の反応は驚くというよりかは恐怖している感情に近いだろう。そういえばこの先生って噂があったがそのことで怯えているのか?
「津堂は不澤を連れて帰れ」
「分かりました」
「・・・お前ら覚えてろよ」
「古村暴れ足りないのであれば相手してやろうか」
その言葉を聞いた古村は何も言わなくなった。あの先生がいれば古村も大人しくなるのか、覚えていた方がいいな。俺はそんなことを考えながら雨歌を回収して家に向かう。回収する際、先ほどのカラスが居なくなっていたが、先生の肩に移動しただけみたいだった。
―カミサマ視点―
八咫くんに私に会いたい人がいることを伝えられた為、現世の公園に来ていたがそこには私が会いたくない奴がいた。私は人違いであって欲しいと思ったが八咫くんの使い魔である青烏が彼の肩に乗っているのでその想いは簡単に消え去った。私はアイツが嫌いなのでさっさと済ませて帰りますか。
「レン、処刑時以来か」
「要件は?」
「久しぶりだというのに世間話もしないのか」
「出来れば君とは会いたくないからね」
とある翡翠の髪を持つ女性を処刑される時にコイツと会ったがそれ以来は全く会ってもいないし会いたくもないこんな奴。その女性がコイツに処刑されたことにより子供達……子孫は代々生贄で使われるようになった。彼女は何も悪いことをしていないのに神との子を授かっただけで裁かれた。いや今はそれよりも他のことが優先だ。私情を挟んでいいことではない。
「古村匡介をなんで転生させた?」
「それは私ではなく他の神だよ」
「ただの大神ごときが複数の“願い”を与えれるとは思えないが」
大神が転生させる者につける“願い”……能力は必ず二つ決められている。二つ以上をつけれるのは私か老神共くらいなので私を呼んだわけか。老神共は転生に関わっていないらしい。裏では関わっているとは思うのだがその痕跡が残っていないので何も出来ずにいた。長く生きていただけあってなかなかにズル賢い。
「協力してやろうか?」
「私の部下は優秀だからそれはいらない」
「そうか……今更過ぎるがすまなかったな」
「君の役割だから仕方がないが許さないよ」
「それでいい」
君に与えられた役割は相当辛いものだろうし君は嫌いだろうね、本名を隠して処刑なんて名乗るくらいには。




