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45話 嫉妬2

➖自宅(自室)➖

 お風呂から上がりリビングに置いていたスマホを取ってから部屋に入ったんだけど、伊月が緋華さんにアイアンクローをされていた。何をしたら15分くらいでこういう状況になるんだか。ドアの前で状況が分からないけども伊月が何かをやらかしたということは分かる。そういえば何か送られてきていたな。確認をしようとスマホを付けた瞬間、左手にあったスマホが目の前から消えた。左に少しだけ見えている狼の耳があるのでそちらに目を向けると僕のスマホを両手で包みながら、ジッとこっちを見ている緋華さんがいた。


「見た?」

「まだ何も見てないですけど」

「よかったぁ」


 何をそんなに安堵しているのかは分からないけど返してくれないのかな僕のスマホ。別に何かをするわけでもない訳だけど伊月から送られてきていた動画が気になるから早く見たい。面白いのだったらいいけど、たまにわけの分からない動画を送ってくるから迷惑な時もあるけどね。気になって見てしまうってものあるから怒ったりはできない。この前送られてきたのが人体模型が学校で歩きながら歌う動画が10分間続くという動画でホラーゲームの広告かと思ったら歩いているだけだし、ミュージックビデオでもなかったからなぁ本当に何だったんだろアレ。凄いことに1000万回以上は再生されていた。


 今はそれはいいとして緋華さんがまだ僕のスマホを包んでいるんだけどもどうしたらいいんだろか。伊月は痛みでダウンしているみたいだから使い物にはならない。とりあえず手を緋華さんに差し出してみるとお手をされたがそうじゃない。いやお手をしてくれるとは思っていなかったからびっくりはしてしまったけどさ、それをして欲しいわけではないのよ分かるかな? っていうか、なんで今持っているのは渡すって考えにならないってこともビックリだよ僕は。


「あの~僕のスマホを返してもらえますか」

「いやだ」

「そこをなんとか」

「・・・伊月から送られてきたのだけ消させて」

「分かりました」


 緋華さんの動画が送られてきたのか? 消したいって言わないと思うんだよね。緋華さんの性格的に「伊月ナイス」って言いながら自分でも送ってくる人だと思うけど、逆に消すってことはよっぽど恥ずかしいんだろうな。伊月がまだデータを持っているなら同じのを送ってきてもらうかな。バレたら流石にヤバイとは思うけど、攻撃されるのは伊月だろうし問題はないかな。緋華さんは一体、伊月に何を撮られたんだか。


「はい」

「伊月は何をやらかしたんですか」

「ノーコメント」


 緋華さんは伊月を起こしに行く。伊月は目を覚ました瞬間勢いよく起き上がったので緋華さんにぶつかってしまった。二人はデコを抑えながら痛がっている。僕はそれを見ていて何をやっているんだと思ったけど、僕の背中にも強い衝撃がきてそのまま倒れてしまった。倒れた状態で背中を抑えながら後ろを確認すると梨奈姉さんが部屋をドアノブに手を置きながら固まっていた。梨奈姉さんの目にはベッドの上と下で痛がっているのが二人居て、ドアの前に居たであろう僕が背中を抑えながら倒れている景色が見えているのだから状況が理解できないんだろう。


「お前ら何やっての?」

「兄さん……背中が痛い」

「あっそ、ドアの前にお前が居たんだから悪い」


 その通りだけどヒドイなこの人と思いながら痛みが引くのを待っていると先に痛みが引いたのか緋華さんと伊月が僕のところまで来て心配をしてくれた。梨奈姉さんは意識が戻ったのか僕に対して「ごめん、ノックし忘れた」と言った。それを聞いた兄さんが「お前の場合はノックするのが珍しいだろ」と言ったけど、こればかりは兄さんが正しいので何も言わなくなった。


「ふ、二人は怪我はない?」

「あるわけないだろ」

「大丈夫。雨歌くんは?」

「大丈夫です」


 三人が痛がるという事件から数分が経ち伊月はお風呂に入りに行き兄さんは自分の部屋に戻りはしたけど梨奈姉さんは「話があるから少しだけお邪魔するわね」と言って入ってきた。伊月の奴、絶対に面倒な雰囲気を梨奈姉さんから感じ取ってお風呂場に逃げたな。話を聞くために僕と緋華さんはベッドの上に座り、梨奈姉さんは向かい側に座った。


「弟とその婚約者に聞くことではないんだけど」


 梨奈姉さんはモジモジとしながらどうやったらある人の気を引けるかを聞いてきた。ある人って兄さんの事なのか? まずはその人のことをある程度知らないと何もアドバイスもできないから性格とかを教えてくれないかな。なんて考えていたら緋華さんが得意気に「婚約すればいいんですよ。あと、ストーキングもすれば問題なしです」と言い放った。いや、それをしたら普通は犯罪ですからね。僕だからよかっただけで他の人にしたら即通報です。


「・・・」


 梨奈姉さんは緋華さんが言った言葉を聞いて口を開けていた。そりゃあそうなるでしょ、婚約をするならまだしもストーキングをするって言ったら誰でもこうなるって。しかもそれが弟の婚約者からのアドバイスだったら、もう開いた口が塞がらない。伊月がこの場に居てくれたならこの発言の前に緋華さんを止めてくれるのにな。仕方ない僕の方からも何かアドバイスを出すかな。


「嫉妬させれば?」


 僕なら緋華さんか伊月が誰かと物凄く仲良く話しているのを見たら嫉妬はするからその方法でその人の気を引けるかも。梨奈姉さんは「婚約すればいいのか」と緋華さんが言ったことの方が気に入ったみたいでストーキングもしようと大きな声で言った為、母さんと父さんが慌てて入ってきてそのまま説教に入った。緋華さんのアドバイスだと梨奈姉さんが言ったが、「それは雨歌ちゃんを守る為にしていたことが私情に変わったから許せるだけなの」と母さんに言われてショボくれていた。


 うん、許さないでね。説教くらいはしてもいいとは思うんだけどそれは僕がズレているのかな? そういう事にしておくとしようか。僕が言った嫉妬をさせる方がよかったじゃん……多分だけど聞こえてなかったかもしれないけど。


(冗談で言ったのに……)


 隣で緋華さんが小声で漏らした声をバッチリと聞いてしまった僕は何も聞かなったことにして伊月がこの空気をぶち壊しに来てくれないかなと思った。コッテリと怒られた梨奈姉さんはショボーンとしながら母さん達と部屋を出て行った。その姿を見て僕は二人の気を引くときは嫉妬させようと心に決めた。

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