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39話 攻撃力1

自宅リビング

 リビングに降りてきたのはいいけど緋華さん以外から「なんで普通に制服?」と言いたそうな顔でこちらを見ている。伊月と緋華さん以外の全員は僕のことを女装させる気満々だったわけか。何か企んでいると思ったけど僕に女装をさせて二人を驚かせようとしていたんだろうが残念だったね。僕がそんな簡単な罠に引っかかるとでも思っていたの? いや、昨日買ったやつではなかったら着ていたかもしれないけど。


 僕は緋華さんの座っているソファーに行き右隣に座る。緋華さんと喋っていたら伊月と母さんが一緒に入って来た。母さんはシュンとしながらスマホを見ていて伊月はニコニコでこっちに来て僕の右隣に座る。緋華さんが「何があったの? 伊月があんなに笑顔なの初めて見た」と僕に聞いてけど、僕は「分かりません」と答えたが伊月が「教える訳ないだろ。アホ狼」と緋華さんを見ながらニヤニヤした顔で言う。


 緋華さんはその顔にムカついたのか立ち上がりアイアンクローを伊月にした。「いただだぁ」と伊月の声が右隣から聞こえるが無視をする。あんなことを緋華さんに言ったらそうなるって分かっている筈なのになんで言うかなぁ。僕がお茶を飲んでいると伊月が痛がりながらスマホを取り出し「コレを見ろ」と緋華さんに向かって何かを見せた。緋華さんは「羨まし過ぎる」と言ってきた。


 文章なのかな。写真を見せた可能性はないというよりかは撮っていなかったから写真を見せるのは無理だ。今の一瞬で文字を打ち込めるのかな? それか前もって準備していた文章を緋華さんに見せている可能性はあるけど伊月がそんなことをわざわざするかな。僕的にはしないような気がするな。


「私にも見せて欲しいなの笑顔」


 緋華さんはいつの間にか伊月を降ろしてスマホを奪っていた。画面に表示されている写真は僕は伊月に見せた笑顔だった。伊月はあの時スマホを持っていなかった筈なのになんで撮られて……母さんか。撮られた写真は僕の顔の距離が近いので母さんしかいないだろう。伊月と僕以外に居たのは母さんだけなんだから当たり前か。僕は母さんにどういうことかを聞くために周りを見渡すがいない。


「雨歌くん少しだけ二人で話そうか」

「あとでお願いしま—————分かりました」

「伊月、それ私にも送っておいて」

「分かった」


 僕は緋華さんに腕をガッツリと掴まれながらリビングを出た。リビングから出て二階へと上がる階段で二人で座る。僕は全部話したが緋華さんは何も反応はされていないのでどうしたらいいのかと悩んでいた緋華さんが口を開く。


「女装が見たいからしてくれる?」

「えぇ~」

「ならキス」

「分かりました。女装をしてきます」


 僕がそう言うと緋華さんはムスッとした顔でこちらを見ているが無視してリビングに入り母さんを見つけて小声で(女装をすることにしたから化粧お願いできる?)と聞いたら大声で「もちろん!!」と言ってきた。緋華さんは知らぬ間にリビングに入って来ており先ほどまで座っていたソファーに戻っているが……少し機嫌が悪いようで伊月が「なんとかしろよこれ」と言う顔で僕を見てくる。仕方ないからアレをするか。


 僕はソファーの背もたれまで来て緋華さんの左頬にキスをしてそのまま出来る限りの甘い声? でいいのかは分からないけど耳元で(今日1日いい子にしてたらちゃんとしてあげるからね)と囁く。なんだこれヤバイくらい恥ずかしくて体が熱いんだけど。


 僕は恥ずかしくてそこから動けないでいるのが、緋華さんは頭がショートしているかわかないけど何も言わなかったし微動だにしていない。緋華さんと人一人分も離れて座っている伊月には聞こえたのか「ずりぃ~」と言っているのが聞こえたので僕その場から逃げた。



―伊月視点―

 雨歌がリビングから急いで出て行きその後を追うように涼音さんが出て行った。俺は1つ空けて座っている茹でだこみたいに赤くなっている奴を見ながら、「アイツの攻撃力はえぐいな」と言う。するとさらに真っ赤になったので流石に俺もびっくりして座った状態から右横に飛んでしまった。爆発すんじゃねぇのかと思えるくらいに赤い。これどうしたらいい?


「だ、大丈夫か?」

「大丈夫に見えるのなら頭おめでたい。あ~雨歌くん好き」


 確かに見るからにヤバイだろうけど、殴りたくなるようなことを言わなくてもいいんじゃないか。心の声漏れてんぞ。知っていることだから別に漏れても問題はないだろうが……少しは隠せよ。空ちゃんとお前に兄貴の紫音が複雑そうな顔で見てるぞ。気にも留めていやがってないだろうがな。


 雨歌の時々する行動には本当にビビらせられるな。俺も心臓が破裂するかと思うくらいにはヤバかったから緋華さんはもっとヤバイだろうな。1年ぶりの雨歌からの攻撃は相当なダメージ入っただろうな。緋華は知らないだろうが中学の時、雨歌が教室で俺に似たようなことをした際には見ていた連中のほとんどが倒れたという事件を。ちなみに雨歌はそれを俺にした後、さっさと教室から出て行ったのでこのことを知らない。


「・・・まぁお互いに頑張ろうな」


 緋華に言ってみるが何も反応を寄越さないが何やらブツブツと何かを言っているのは聞こえる。小さすぎて聞き取れないので少しだけ耳を近づけると(雨歌くん雨歌くん雨歌くん雨歌くん雨歌くん雨歌くん雨歌くん雨歌くん雨歌くん雨歌くん雨歌くん雨歌くん雨歌くん雨歌くん雨歌くん)と言っているのが分かったのでそっと少しだけ距離を離した。この前は雨歌に耳を塞いで愛してるってずっと言っていたからな。聞かなかったことにしよう。


 コイツがなんとか我慢しているから問題はないだろうがそれが出来なくなった時が怖いな。その時どう止めるかを考えておかないといけないな。今のうちに雨歌の写真を撮り溜めしておくか。もちろん、許可を得てから撮るので安心して欲しい。・・・まだ言ってるんだけど、早く戻ってきてくれないかな。時間が掛かるかもしれないけど、出来るだけ早めでお願いいたします!! 雨歌、涼音さん。俺のHPがどんどん削られていくからさ。


 二人が戻ってくるまでの間、俺は緋華の呪いにも匹敵する「雨歌くん」呼びを聞き力尽きかけていたがなんとか耐えた。そして俺がまた雨歌の女装を見られて完全回復した。緋華と同時に「最高!!」と大声で言ってしまって雨歌から怒られてしまった。すいません。

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