38話 ご褒美? 2
➖自宅(部屋)➖
学校から帰って来た後、何故か家族が全員集合と柴藤家、津堂家の人達まで居た。全く状況が分からなかった僕ら3人は部屋に行って何がどうなっているのかを話し合う。緋華さんは「これって多分アレだよね」と言い伊月も「アレだな。それしかないだろ」と言う。えぇ~アレってなんだよ。全然何か分からないんだけど、なんで二人は分かるんだよ。
「ちゃんと婚約したからだよ」
「それでこの騒ぎなんですね」
「今ちゃんとって言わなかったか?」
なるほど僕ら3人が婚約をしたのでそのお祝いしようとしてあの騒ぎになっていたんだ。そういえば僕と緋華さんが先に婚約して伊月とも婚約しているだよね? 伊月と緋華さんって間接的に婚約しているんじゃ……これは言わない方がいいかな。二人が面倒な感じになられても困るし。仲がいいのか悪いのか、いまいち分からないよなこの2人。
僕が思ったことを誰かが言わないといいんだけどなぁ。いやそれはさておいて今日する必要あるのかな。土日とかでもいいような気がするんだけど。何か予定があるから今日しか無理なんだよね? 何か企んでいそうで怖いんだよな。僕らの親が手を組んだら厄介なことになるのは確定なんだよ。
「心配しなくても大丈夫だろ」
「雨歌くんは私が守るから」
「お前は何と戦うつもりだよ」
二人がワイワイと騒いでいると空が呼びに来てくれたので僕らはリビングに行こうとしたら僕だけが止められた。空は「雨歌兄さんには着替えてもらおうかと」と言われたのでそのまま僕は一人で部屋で一人いることになった。着替えるって部屋着じゃあダメなのかな? それか今着てる制服のままでもいいのよね。二人だって制服のままな訳だし。
一人で悩んでいると母さんと夕夏姉さんが入って来た。見覚えがある服と化粧品道具を持って来て。それが目に入った瞬間に、あっコレ女装させられるやつだと思いすぐに逃げようとするも正座をしていたので足が痺れて動けなった。夕夏姉さんから「何やってんの」と言われた。ごもっともです。
「さて着替えましょうか」
「母さん、今日はやめてくれませんかね?」
「問題はないでしょ。土日のどちらかは着てもらう訳だし」
着ないといけないのか確定なんだ。そんなことより今なんとおしゃりましたか? 母上様よ。僕の聞き間違いでなければ「土日のどちらかは着てもらう訳だし」と言いましたよね。女装するでしょみたいな顔をされても困るんですが。それを着る時は伊月とのデートの時だけでお願いします。恥ずかし過ぎて死んじゃうので。
「そんなに嫌なの?」
「その……それは恥ずかしいでの別のでお願いします」
「コレと昨日のしかないけど」
拒否権はないだろうし着るけどさ、伊月は選んだやつな訳でそれをしれっと選んで買った僕はすっごく恥ずかしい思いしますのでお願いですからおやめください。僕がそれを着るのでだけは絶対に無理だと言っているので母さんが「雨歌ちゃん、それなら理由を言って」と言われて黙るしかなかった。流石に言えないでしょ。
夕夏姉さんが何故か部屋から出て行き、僕と母さんはギャーギャーと二人で近所迷惑にならない程度に騒いでいたら「雨歌、夕夏さんに呼ばれてきたけど何の用だ」と伊月が登場した。僕は固まり母さんは味方がきたと喜びながら「せっかくだから雨歌ちゃんにコレを着てもらおうかなって」と言いながら持っている服を見せる。僕は恥ずかしさのあまり速攻で布団に入り込み、立てこもる。
「コレ……俺が選んだやつじゃないですか」
「雨歌ちゃんが持って帰ってきたのコレだけど」
「雨歌、お前」
「雨歌ちゃん……」
「絶対にここから動かないよ僕は」
昨日は変なテンションだったから考えていなかったけど、相当恥ずかしいことをしていたんだなと思ってしまって密かに昨日布団の中で反省していたのに。伊月が容赦なく布団を引っぺがしてくるので僕は殴ろうと起き上がるも両手首を掴まれてそのままベッドの上に押し倒された。母さんはスマホで撮影を開始し始めた。もしかしてそれって写真ではなく動画では?
押し倒している伊月のことなんて無視して横目で母さんの行動を見ていると何故か息苦しくなったと思って視線を戻すがどうなっているかが分からなかった。おそらく伊月にキスされていることはわかったけどなんで今ここでなのかが分からなかった。人の親が見ているところでよくできるよね。僕なら恥ずかしくて絶対に出来ないな。
「悪い、したくな――ごふ」
「殴るよ?」
「もう殴っているだろ」
満足したのか伊月が離れて手首が開放されたので起き上がる時の勢いを乗せてアッパーをくらわせた。別に過度にしないのであれば僕だって何もしないけど今日はし過ぎなのでお灸をすえる。学校でもやられておいて学習していないのは流石にどうかと思うけどなぁ。僕の上に座っている伊月を退かして母さんの所まで行き、服を取りそれをクローゼットにしまう。
「母さん、今撮ったの全部消してね」
「でも……」
「母さん?」
「はい」
笑顔で圧をかけながら言うもんだね。母さんは少し凹みながら先ほど撮ったであろう動画を消していた。伊月は「・・・着ないのか」と言っていたから僕は近づいて唇――ではなくデコにキスをして耳元で「何かを頑張ればご褒美にキスをあげるよ」と言った。緋華さんには効果抜群のモノではあるだろうけど伊月にはどうかな?
「・・・本当に?」
「うん。もしかしていらなかった?」
「いる。1週間キスは我慢する」
僕は伊月から離れてドアに向かう。1週間かぁ短いような気がするんだけど、伊月がやる気だし別にいいか。緋華さんにも今度やってみるか。緋華さんなら「伊月だけにそんなことしないで私にもして」と言ってくるだろうし早めにしておいた方がいいかもしれないな。その前に最後の仕上げとしてしておくことがあるな。部屋を少し出た所で振り返り伊月に対して、とびっきりいい笑顔で言う。
「僕は伊月とキス出来ること楽しみにしているからね」
「ふへぁ」
伊月が変な声を出したのを聞いてからリビングに向かうが母さんが顔を真っ赤にして「どこでそんな表情覚えたの!?」と言ってきたのは無視する。別に普通に笑顔を見せただけなのになんでそんな感じでとらえられるんだよ。




