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33話 デート?3

➖トッド寿司➖

―伊月視点―

 着るか分からないが女装用の服を1セットだけ買ってトッド寿司に来ていた。俺と雨歌でだけの時は必ずカウンターの席する。建前はこっちの方が喋りやすいという理由にしているが本音としては雨歌が食べているところを横で見たいという理由だ。二人だけの時なら緋華も何も言ってこないからなゆっくり眺められる。


「毎回食ってるけど、うまいか? それ」

「ほいひいひょ」

「パンパンになってるぞ口が」


 雨歌はトッド寿司名物ともいえる大きめ角切り握りのサーモンとオニオンのやつを毎回のように食べ、口をパンパンに膨らませてもきゅもきゅと咀嚼する。本当にここに来た時だけハムスターになるなコイツ。寿司が好きなのもあるが、コイツのコレを見るのも好きだからな毎度ここに来てしまう。・・・というかコレを頼んでいるのお前くらいじゃねえのか? 他の奴が頼んでいるの見たことがないぞ。食べ終わった雨歌が俺の方を見ながら「食べる?」と言いながら角切り握りサーモンを持ってくる。まあまあデカいな。


 2,3倍くらいはあるんじゃないのか? これだけ丸皿じゃなくて角皿で来るもんな。一口では入らんだろこれ。横幅が2.5貫で高さは3貫ほどか。どう食べれば正解なのかは分からないんだが、食べないといけないよな。雨歌のあ~んはされたことはあるがそれも5回程度だし、結構レアなんだ。俺は目を瞑り口を大きく開け食べようと口を閉じてもそこには何もなかった。目を開け雨歌の方も見ると、「イタズラ成功、ドヤァ」と顔に書きながらこちらを見ていた。頬が膨らんでいるので全くイラとは来ない。


「俺は別の食べるか」

「頼まないの?」

「お前の見てたら十分だわ」

「そっか。僕は追加で」


 本当によく食べるなそれ。腹は膨れるからいいんだろうけども偶には他のも食べたくならないのもかな。昔から同じものをよく食べる奴だったから変わってないだけか。雨歌をずっと見ていたら気付かれて小突かれてしまった。そのやり取りを見ていた男性従業員からの視線が鋭くなったのと4席離れている女性3人組が小声で「ブラックコーヒー頼みましょうか」や「口から砂糖が出そう」など言っていた。男性と女性の常連さん達は「またやってるよコイツら」という顔をしていた。いやなんでアンタら、雨歌のこと気付いてんだよ。女装しているんだぞ分かる訳ないだろと思ってその人達を見てみたら、角切り握りの皿を持ち上げて見せてきた。


「お前以外にも頼んでいるんだな」

「伊月が僕に進めてきたから今も食べてるんだけど」

「そうだっけ?」

「それ以外にもこれを好きになったって理由もあるけどね」


 俺が頼んだのを雨歌に進めたのか……え? 待ってくれ。今なんと申し上げられましたか。俺が進めたのだから今も食べているって言ったのか? 婚約のことに関してお前は何故受け入れているんだよ。俺のことが超好きなのは分かってはいたけど、この前言っていたことは全部マジだったのか。ヤバイ……本当に我慢が出来なくなりそうだわ。

・・・・・・考えながら食うもんではないな。腹がパンパン過ぎる。


「はぁ~僕はもうお腹いっぱいだよ」

「俺も無理だな」


 雨歌と俺は別々に会計してからトッド寿司を出る。あとは帰るだけなのだが今は家に行くのは嫌なんだよな。このまま二人でどこかに行くってのも手ではあるがそれをしたら緋華が「私も行く」ってすっ飛んで来そうだからな。少しだけ不安そうな顔をしている雨歌の頭を撫でながら「心配するな」と言ったら「婚約のことは別にどっちでもいい」と言われた。


「母さん達がそれよりも沼に入ってないかが心配なだけ」

「それはお前にも言えることだからな? 性別を変えるなよ」

「僕は伊月と緋華さんの為ならいくらでもそんなのは変えるし、在り方を壊すよ」


 何コイツ、俺らへの愛どんだけあるんだよ。俺がそんなことを思っていると雨歌が歩き始めていた。真っ直ぐ前を見ながら力強く歩いていた筈なのに道の段差に気が付かずこけた。俺は駆け寄って雨歌を立たせて隣を歩きながら家に向かう。


➖津堂家➖

 雨歌を家まで送り届けてから自分の家に帰った。帰る際に雨歌から「連絡入れていい?」と言われたので「いつでも連絡していいぞ。なんなら緋華よりもな」と言った。雨歌は嬉しそうにしながら家に入っていたのを見て俺は可愛すぎるだろアイツと思いながら家に向かった。家に着きてそのまま入ってお袋たちがいるであろうリビングに行く。


「帰ってきたか」

「どういう事が説明はできるんだよなクソ親父」

「まずは雨歌くんの母親の話からだ」


 リビングに入るとお袋と親父が座って俺を待っていた。顔を見るなり俺は親父に対してムカつきながら言うが無視して話始める。雨歌の母親ってアレか、産みの親である人のことか。親父は金曜日から今日までの出来事を話していった。金曜日の夜に雨歌の母親であるムアイは幻覚が見えており飛びおりてしまったのこと。奇跡的に命が助かり、目が覚めたのが月曜日の夜だったそうだ。


 眩寺さんと夕夏さんがお見舞いに行ったついでに色々と話したらしい。雨歌の男親の方は転生者だったそうで血の繋がりはないとのこと。俺は全く分からなかったがそれはどうでも良かったので深くは考えない。親父の話は続いた。眩寺さんたちが帰った後、病室に緋華が入って自分を秘密を話したと言われた時は驚いた。時間帯は分からないが、わざわざそれを言いに行くとは思えなかったからだ。アイツはバレるまでは絶対に黙っておくタイプだぞ。


「緋華は認めたのか?」

「認めなかったし、ムアイさんは亡くなったよ」

「はぁ?」

「一応ムアイさんには確認は取れた」


 親父はその時の状況を話してくれたがどういう事かさっぱりわからん。三家の親と緋華、ムアイがその病室に集まり話し合いをしたらしい。ムアイが昨日緋華と会って話したことをみんなに言ったが緋華は「ここには来てない」と言ったそうだ。ムアイは驚いていたが違和感に気が付いたらしく「雰囲気が昨日と全く違う」と言った。緋華の目には憎悪があり、今にでも殺してしまうのではないかと思えるくらい殺気立っていたようだ。


 ムアイは昨日いた緋華が別人と分かりみんなに伝え終わった後に急に苦しんでそのまま亡くなった。すぐにナースコール呼び医師たちが駆けつけてくれたが手遅れだった。ムアイは最後に何かを言おうとしていたみたいだったがその場にいた誰も分からなったらしい。その時の緋華は凄く驚いた様子で、「何があったの?」と言うぐらいには動揺していたみたいだ、


「なんでそこで婚約なんだよ」

「転生者ではあってタイムリープをしているみたいだからな」

「他の奴じゃダメだったのか」

「好きなんだろ?」


 俺が黙ったのを確認して緋華から聞いた話をそのまま俺に話してくれた。緋華に転生して、雨歌を救うために自分とは会わないようにしたら事故で自分が死んでしまったか。ゲーム通りにしたら今度は雨歌が死んだねぇ。雨歌と緋華のどちらかは必ず死ぬのか。それを回避するための鍵は俺と思い提案を緋華自身がした。なるほど、だからこの前俺に対して「雨歌と結婚したい?」って聞いて来たのか。


「俺はいいけど、肝心の雨歌は?」

「OKだそうだ」


 分かってはいたが嬉しすぎて親の前でガッツポーズをした。両親は呆れていたがそんなのは気にならないくらいには、嬉しくてこれで雨歌と堂々とイチャつけると舞い上がっていた。そんな俺にお袋があるものを渡してきた。


「指輪?」

「緋華ちゃんからアンタに」

「アイツがね」

「金曜日の夜はそれを買いに行っていたらしいよ」

「3人お揃いだって」


 今度何か3人用で買いに行かないとな。明日二人が付けてくるかは知らないが俺は付けて行こうっと。

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