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30話 運がない? 2

➖理事長室➖

 僕が理事長室に着いてすぐに中へ入るように言われた。中に居たのは女性の理事長と凄く面倒くさそうにソファーに座っている兄さんがいた。なんでいるの? 呼ばれたのは僕だけの筈なのに……そしてなんでそうな面倒くさそうな顔をしているのさ。どういう関係でここにいるのかを聞きたかったが理事長から椅子に座るように言われた。


「まずは自己紹介からだ。このアスノファル学校の理事長を務めているスイ・ファングだ」

「不澤雨歌です」

「スイちゃんとでも呼んでくれ」

「ファングさん」


 そういうと少しだけ残念そうにしながら呼ばれた理由を話してくれた。オカルト研究部のことについての説明と先週の出来事についてだった。まずはオカルト研究部の廃部の話は元々部全体に問題が発生していた為、一度廃部をすると伝えることでその問題を解決させるのが目的だった。部長さん以外の部員には全員に話しているのがマズかったみたく解決に全く向かっておらず、部員たちは問題を解決させる派と退部して関わることをやめる派で別れたらしい。


「私も反省をしている」

「原因を辿れば、この女が悪いからな」

「どういう事?」


 兄さんが神明さんに調べてもらっていたのは過去にオカルト研究部が受賞したレポートのことに関してだった。そのレポートの半分以上の書き方が同じだった。この書き方をするのはあの部活内では部長さんだけらしく、このことに気がついた兄さんが理事長室に突撃したらしい。理事長から聞き取り調査の許可を貰い、すでに部活をやめている元部員に話を聞いて最後に言った言葉が「森前って心が読めるから代わりに書いて貰ったわけ。使えるものは使わないとね」と笑いながら言っていたので殴り飛ばしたとのこと。


「あの子にも話を聞いたことがあったんだけどね」


 理事長は後悔をしているような顔で「大丈夫って言うから信じた結果がこれなのよ」と言っていた。兄さんは本気で怒った顔で理事長を睨み付けていた。今の状況を整理すると、廃部は嘘? であって問題を解決する為だけのものだったが解決に向かっていない。何も変わっていないのではと思えるくらいには解決出来ると思えない。


「雨歌と愉快な仲間は手を引け」

「いやだよ」

「何が出来る?」

「僕には何も出来ないよ」

「なら引け」

「やだ」


 兄さんは僕にもイラついたらしくソファーの前にあるテーブルの上にボロボロの見慣れていた手帳を出した。なんで兄さんがこれを持っているのかを考える前に無意識に椅子から立ち上がり兄さんの顔を蹴ろうとしていた。兄さんに余裕な表情で手で止められて「お前としては見られたくないものなのか」と言って口角を上げた。僕が足から力を抜くと兄さんは手を離してくれて「安心しろこれはちゃんと燃やす」と言ってくれ手帳をしまってくれた。


「先週の件は怪我の治療費とかの話だから俺が聞いておく」

「分かった」

「手を引けよ」

「ちゃんと僕は引くよ」


 理事長室から出て教室に向かう。僕はこの件に関して直接かかわることやめた。元々そんなに多くのことが出来ない訳だし大人しく引いた方がいいだろう。兄さんも僕が言った言葉で満足しているみたいだし問題はない筈。伊月達に頑張ってもらわないといけなくなったけどそれは仕方ないかな。兄さんは絶対に引き下がらないのでこちらが折れるしかないし、僕が折れなかった時の最悪の場合は監視を付けられるかもしれないから、妨害される可能性がある。行動が出来なくなるのでそれは避けたかった。伊月達に謝らないとなぁ。


―碧視点―

 雨歌が出て行ったのを確認してから大きなため息を吐く。アホからは「若いのにそんな大きなため息を吐いてかわいそうだね」と笑いながら言ってきやがった。誰のせいだと思っているんだよ。アンタの娘のせいで生徒会に入ってこき使われて、仕事を終わらせても次から次へと出てきやがる。しかも今回は結構前から続く問題ときたもんだ。最悪過ぎるだろ。


「何もしないんじゃないのかな?」

「雨歌が関わるくらいなら俺がやる」

「私の娘は信用できないのかな? 優秀だよ?」

「出来る訳ないだろ」


 今回は何もしないでおこうと思った理由は2つある。まずは理事長であるスイ・ファングの尻拭いをする形になるのと梨奈とコイツの娘のアインが動くので手を出さないと決めていた。ただ二人だけではキツイだろうからアドバイスやら、手助けはするつもりだった。雨歌に関しては津堂と一緒に色々としているのは分かっていたし、アイツらならやるだろうとは思っていたが、まさかの雨歌が本格的に考えていると情報が入ったので止めるしかなかった。


 梨奈とアインのペアは焦って状況を悪化させそうになり慌てて五三郎が止めに入ったと聞いたから二人を落ち着かせる為に一旦この件はおいておくように言ったら、何を考えたのか雨歌を生徒会室に連れて行き、断られたから軽い洗脳をしようとしたと夢藍に聞いた時は流石にキレそうだった。しかも返り討ちにあったとかマジで何をやってんだ? と本気で思った。


 家に帰ってから梨奈を部屋に呼び雨歌をどうして危険な目に合わせたのかを聞きてから後日四人を学校へ呼び出して説教をした。まあ雨歌をこの件から離すのは俺も賛成だったからいいがやり方をもう少し考えてくれないか。俺も人のことは言えた立場ではないがな。


「そういえばさっきの手帳はなんだい?」

「母親の所に居た時の奴だ」

「なるほど、通りで見るなり表情が曇るわけだ」


 手帳を出す時、罵倒される覚悟はしていたが蹴られる準備はしていなかったなぁ。迷いなく顔に蹴りを入れようとしてきたのは凄くびっくりした。止めてから雨歌の顔を見ると辛そうにしていたので蹴られても良かったかもしれないと思った。あの時は何もしてやれなかったし、正直に言って雨歌のことなんて半分血が繋がっているただの他人にしか感じてなかったが今では大切な弟になったからなぁ。


「君、弟に嫌われるよ」

「・・・それで生きられるならいいのでは?」

「この学校を潰すのだけはやめてくれよ」


 流石に学校を潰しはしないけど、ワザと色々と問題を放置するのはやめてくれないか? この理事長は最悪なことに教え子を殺した教師を学校に残しており、しかもそれが雨歌の担任で俺は不安しかないのに「心配ないさ、彼は頼りになるから。君と一緒でね」と言った。そういう事を心配しているわけではなかったがあの時助けてくれたと雨歌に聞いたので今は少しは安心できる。


「それで動いてくれるのかな?」

「動くよ」

「ならいつ結婚してくれるのかな?」

「しねぇよ」


 親子揃ってどうしてこうも結婚してくれと言ってくるんだよ。理事長は夫と離婚しているとはいえ生徒に対してプロポーズをするのはどうかと思うぞ。また俺がため息を吐いていると「冗談ではないからな。娘も一緒にどうだい?」と言ってきたので凄く頭が痛くなった。「どうだい?」じゃあねぇだろうが。何親子で重婚させようとしていやがるこのアホは。


「仕方ない。後輩ちゃんと梨奈ちゃんとも一緒でいいから」

「よくねぇよ。一人は姉弟だわ」

「問題はないな? 姉弟でも結婚する時はあるぞ」


 それはあるが……そういうことを言っているのではなくてだなと言いたいがしんどすぎるので何も言わずに頭を抱えてどう逃げるかと考える。何も言わないでいると「承諾してくれたということでいいんだな? よし卒業したら籍を入れに行こう」と勝手に決めてきやがったので「してねえし、入れに行くわけないだろが!!」と言いながらソファーにあったクッションを投げてから、この人マジでしんどいと小声で言った。


「痛いなぁ。怪我したから責任を取ってもらうしかないな」

「ヴァンパイアだから大丈夫でしょ。それにいや」

「恥ずかしがってからこのツンデレさんめ」

「最強なの?」

「えっ? 結婚してくれるのやった」


 これは何を言っても無理だわぁ。俺ってなんでこんなに運が無いわけ? 何をしたって言うんだよ俺が!! モテなくていいからせめて普通な子に好かれたい。こんな最強で面倒な人に好意を寄せられたないよ。誰か変わってくれませんか?

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