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27話 幻覚から現実へ1

➖火事現場?(廃墟?)➖

 目を覚ますとそこはニュースで報道されえていた火事現場? だった。ここは本当に火事現場なのかと思うほど、所々綺麗だった。手足は椅子に縛られていて動けないが全くもって痛くない。誰が私を連れてきたのかが全く覚えていないし、空はまだオレンジ色なので夕方? なのは分かる。17時までは仕事をして家に帰ってからの記憶はないが、そこからそんなに時間が経っていないようだ。それに私を誘拐する人物などはいない筈なのに私は誘拐された。


 恨まれることなんてしていないのに誘拐された。私は夫を亡くして錯乱状態になり交通事故に遭って入院していたし奴隷(むすこ)はあの一家に取られた私はこんなにも可哀そうなのにどうして……こんな所に誘拐されたの? 何が目的なのよ。


「目が覚めたようで何よりです。ムアイさん」


 後ろから声が聞こえてきたので顔をしてやろうと振り向くとそこには最も会いたくない女が微笑みながらこちらに近づいて来た。入院している時も今も夢に出てくる女で私から奴隷(むすこ)を遠ざけさせる為に殺そうとしたヤバイ奴だ。退院後はこの女に見つからないようにひっそりと生きてきたのに何故、ここにいる。


「そんなに怯えないでくださいよ」

「わ、私をどうする気」

「・・・どうされたいですか?」

助けて(解放して)


 私の目の前まで来ると考えるように顎に手を当ててう~んと言っている。何か条件を付けられて解放されるだろうからここは頷いて従うふりをして警察に助けを求めよう。それかアレを人質にしてこの女に命令をするかだ。今は怒らせないようにしないといけないから慎重に言葉を選らばないと。


「いいですよ」

「え?」

「逃がしてあげますよ」


 簡単に私を解放する意味なんてない筈なのに一体何が目的なの? 私を誘拐して誰かに見られるというリスクまであったというのに、そんな簡単に帰すことなんてない筈。私が考え事をしていると手足を縛っていたロープを外し始めた。本当に逃がしてくれるのねと安心した。


「これでどうぞ」

「何もしないの?」

「えぇ、もう何もしないですよ」


 その言葉を聞き急いで椅子から立ち上がりその場から逃げようとするも視界が歪み倒れる。体に力が入りにくくなっているのは何故? あの女は何もしないと言っていたから長い時間椅子に座っていたせいで……長い時間? なんで私は今そう思ったの。職場から家までの時間は30分程でそこからここまでなら2時間は掛かる筈なのにまだ夕方はおかしい。


「服用している睡眠薬強すぎませんか?」

「睡眠薬……」

「おそらく2日半ほど、眠っていたかと」


 2日半経っているなら捜索届を誰かが出してくれている可能性もでてこのまま這いずって行けば助かるかもしれない。なんとしても部屋から出る。私の後ろで見下しているであろう女が楽しんでいるような声で「そっちは危ないですよ」と言ってきたが無視して進む。そんな嘘に騙される訳がない何故ならここは私の家のなのだから。あの塀を超えれば外に行けるので私は最後の力を振り絞り立ち上がり、手すりに掴まり塀を超え下へと降りる。


「そっか」


 超えた瞬間、現実に戻され後悔した。あぁあの子に―――息子にちゃんと接してあげればよかった。私がしっかりとしておけばあの子があんな風に怯えずに済んだのに、自分がしたことに対しての罪から逃げないで受け入れていれば今よりもっと自分(子供)を愛せたのかな? 後悔しても遅いのは分かっているのに私はダメなんでしょうね。


 あの人をちゃんと信じるべきだったのに……子供達を守るべきだったのに私が傷つけて、それから目を逸らして酷いことをあの子にしてきた。両親は私に対して「今なら一緒に背負ってあげれる」「あの子はアンタ似なだけでアンタじゃないよ。だからあの子にあたるのはやめなさい」と言ってくれたのに私はいつも「うるさい」の一言で終わらせた。


 今思うと相当酷い母親だったなぁ。あの子を産んだ時は愛おしかったのに段々と私に似てきてそれが憎くなっていってあたるようになっていった。それでもあの子は私への愛情を両親が亡くなるまでは見せてくれていた。それ以降は押し殺すように私への愛情を見せなくなった。知らない間に支えになってくれていた子まで私から離れていった。まだ私には共犯者(あの男)がいたから心を保てた。


 その男はあろうことか私との(宝物)を焼き殺そうとした。それは失敗に終わっていたので良かったが、その数日後に焼き死んだ。その知らせを聞き泣き崩れたがあの子の為に今度は生きて自分がしてきたことへの罰を受けることに決めた。私の子を預かってくれている場所へと素足で走って辿り着いたがそこには私への憎悪を宿した目をしている女の子と光のない目をしてこっちを見ているあの子がいた。


 私の中にあった決意が壊れた。それほどまでに私は追い込んでいたのかと思いその場から消えた。あの子には私は写っていなかったように見えたのだ。母親らしいことはできたのかと考えながら歩いていると後ろから押された感覚がして振り向こうとした瞬間に車に轢かれて意識がなくなった。


 そこからは本当に色々とあった。怪我が治ると精神科へと無理矢理連れて行かれて薬を処方されたと思ったら、鬼族の元夫が居て私からあの子を救うと言ってきた。私は猛反対したが「今のお前では無理だろ。そんなにボロボロなのに」と言われたので渋々承諾した。あの子が今どうしているかを時々写真を送って来てくれるが話し合いの時以降は怖くて一切見ていない。


「もうあの子は高校生になっているのかな。近くで見たかったなぁ」


 酒に溺れて眠れない時は睡眠薬を飲んであの子の為に生きようと決めたのにすぐに折れて最後は自分で見た幻覚で死ぬって笑えるわね。

・・・母さん父さんを頼れなくてごめん。眩寺さん、夕夏、梨奈、碧…………ごめんなさい。涼音さん、眩寺さんを助けてくれてありがとうございます。空ちゃんと海兎くん、あの子と仲よくしてくれてありがとう。




 雨歌、ちゃんと愛せなくてごめんね? 母さん、星になれるかわからないけど見守ることだけは許して。

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