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20話 かみ3

➖教室(1-1)➖

−伊月視点−

 今朝、雨歌が貧血で倒れてしまって今日は欠席だ。その際に不澤家は大騒ぎになったらしい。今日は緋華が迎えに行くと言っていたので俺は後で合流できるように家を出ようと思っていたら不澤長女から電話がありすぐに家まで行ったのはいいが緋華が学校をサボって雨歌のそばにいるって言った。なので俺が無理やり連れてきた。


 三時間目が終わり、今のところ何も問題はないんだが……普通だな。何事もなく平和って本当につまらないから何かおきないかな。狗谷と佐藤が喋りかけてくるのはくるが特に話す内容がないので適当に振られた話に返事をしたり、その会話を適当に広げたりはした。そういえば雨歌が休んだのって祖父母が亡くなった日と事件のあった日だけだったな。体調を壊して何度か早退はしてたが。

・・・心配だな。


「心配って顔しているね」

「古村か……消え失せろ」

「相変わらず辛辣だね」


 古村の奴が先よどまで話していたであろう女子三人を後ろに侍らせながら俺が座っている席まで来て話かけて来やがった。女子三人は俺と古村の会話を聞きながら睨んでくるし、その他はチラチラと見て来てやがる。なんで雨歌のいない日にこっちに関わってく……普通に考えれば雨歌がいないから関わろうとしているのか。しかもコイツ……遠回しに雨歌のことを悪く言ってきやがってやがる。


「君はいいのかい? 彼と関わっていて」

「いいんだよ」

「へえ、その理由は」

「言う訳ないだろ。お前に理由を喋ってもわからないだろうからな」


 古村は何かを言いかけていたが聞く気はなく席を立ち、そのまま狗谷と佐藤の所に向かうが、古村に肩を掴まれて耳元で「ボクと仲良くすればいいことがある」と言ってきた。振り返ると古村の後ろにいる女子三人は今度はニヤニヤしながらこっちを見ているので、俺は古村と女子三人に向かって大きな声で「それなら雨歌よりも俺を楽しませることをしろよ? 今すぐに」と言ってやった。四人は何も言わずに黙った。


 別に雨歌より楽しませてくれなくてもいいし、別に俺と雨歌の仲に関して色々と言ってもいい。俺も他人に対して言ったりはするからそれが返って来ているだけだから気にはしない。こんなことを言ったあとに悪いがコイツらに何かを期待している訳でもない。

黙っている四人から目線を外して狗谷と佐藤の方に向かう。


「助けた方がよかったか?」

「必要に見えたのか」

「いや」


 まだ学校生活は少ししか経っていないが狗谷とはウマが合うみたいだな。佐藤の方は最初は嫌いなタイプかと思ったが普通に話してみたら結構個性的な奴だったので少し好きになった。それに二人とも気配りができるみたいだから一緒に居て少し楽ではある。・・・無自覚にイチャイチャしていなければもっと良かったんだがな。


「そういえばお前ら、雨歌のお見舞いに来るか?」

「いってもいいなら行きます」

「行くに決まってるだろ」


 妖狐と森前先輩にもあとで連絡を入れておくか。ん? 教室の空気が何かおかしくないか? なんか少し嫌な気配がするんだが……気のせいかな。昨日のことで少し気を張り過ぎているのかもしれないな。周りを見渡して何もないから問題はないんだろうな。


➖自宅(部屋)➖

 ベッドで横になりながら暇すぎてどうしようかと考える。今朝、僕は貧血で倒れて病院にそのまま連れられて行って、気付いたら家にいた。倒れて病院まで行った記憶はあるんだけどその後が無くて多分気絶していたんだろう。昨日の晩、顔色が悪かったのって貧血気味だったからなんだろう。今日は安静にしておかなきゃいけないからベッドに寝転がっているけど、暇すぎる。


「何かすることないかなぁ」

「何か有ればいいんだけどね」

「確かにそれはそ……なんでいるですか?」


 緋華さんの姿をした禍神が僕のベッドの隣に立っていた。自然体すぎて驚いているのかいないのかがわからない感覚になっている。昨日の今日で現れるなんて思ってもみなかったから完全に油断していたどうしよう。父さん達はもちろん、母さんも買い物に出かけてしまったので今は家の中には僕だけになっている。窓から飛び降りるのは今は怪我する可能性があるからやめておかなきゃいけない。


「痛かった? ごめんね」

「2度と噛みつかないでください」

「分かった。君、重婚には興味はない?」


 そんなことを聞いて何がしたいのかが気になるけどここは何も答えないし聞かない方が良さそうな気がする。僕に向かって「私を見つけてくれた愛しい人」って言っていたけど、僕は何もしていないし何かを見つけた記憶は本当にない。この神様の妄言だと信じたいけど……嘘を言っているようには見えないんだよね。


「こういう時はやっぱり黙るんだ」


 確かに黙りはするけど、それは何か嫌な感じがしたらなだけで別にいつも黙るって訳ではない筈。まあそれはおいておくとしてなんであんな質問をしたかが気になった。僕に好意があるからなのだろうけどもそれなら緋華さんと別れるように言ってきてもいいのではないかと思う。それに僕には重婚をする勇気はない。


 あと僕は母親に似て不器用な愛の伝え方をするみたいで普通の人にはわかりずらいみたい。だから一人の惚れた人に向けてしか愛を伝えられないという意味で重婚はむかない。気は利かないし、察しも悪いし、愛の伝え方も下手で、力も弱い。そんな人を好きになる理由が全くわからない。緋華さんはおかしいから例外でお願いします。


「重婚はしないです」

「・・・そっか。答えてくれたお礼にあることを教えてあげよう」

「間に合ってます」


 禍神は「ならまた今度ってことで」と言って消えようとしていたので僕は次来るときは本当の姿でお願いしますと言っておいた。流石に紛らわしいのでやめてほしい気持ちと本当の姿に興味があると言う気持ちがあるので言ってみた。見たことはないから来られても分かるかわかないけどね。


「君のそういうところ結構好きだなぁ」


 そう言って消えていった。消える際に少しだけではあるが、腰まで伸びた翠緑(すいりょく)色の髪だけが見えた。他は全くわからなかった。会ったことがあるかを思い返してみるも全くわからないし、僕って記憶力よくないから覚えれないことの方が多かった。・・・ダメじゃん僕。


➖古びた祠➖

−禍神視点−

 祠のすぐ隣にある大きな岩に腰を掛け真っ白な巫女服を着て、長い翠緑の髪がそよ風に揺れる瞬間が1番心地がいい。やっと彼に昨日会えて嬉しすぎて噛んでしまって怪我をさせてしまったことに関しては反省はしているしちゃんと謝ったのでよしとしよう。


 それにしても私のことを覚えていないのはショックだなぁ。まあ今の姿を見せていないのでそれは仕方のないことだとは思うけどさぁ、ヒントをあげたんだからね思い出してほしかったんだけど。緋華の姿のままでもこの手提げバックを見せればすぐにわかると思うけどそれはしない。あの女が貰ったみたいで少しムカつくのでそれだけは絶対にしない。

本当の姿で見せればいいだけの話なんだけど、恥ずかしいからまだ先ってことで。


 バックの中身を見せたら思い出すかな? 手作りの絵本とか、帽子とか、初めてお母さんに貰ったハンカチとかを一つずつ見せたら流石に分かるよね。思い出さなかったらどうしようかなぁ、初めて会った場所に無理矢理連れて行くとかしようかな。そうなったらデートみたいな気分になるのかなぁ?

・・・大胆に動き過ぎたから警戒しているだろうなあの女。


 あの女だけは本当に警戒しておかなきゃ私まで殺される可能性があるから気を付けないといけないからここからは慎重に動かないといけなくなった。仕方ないよね、会いたくてたまらなかったんだもん。協力してくれた人がいたから助かったけど、あの転生者って何が一体目的だったんだろうね。


 私にもあの男の方にも興味がなくてあの女が目的ってこともなさそうだったからもしかして……彼を手に入れることが目的だったのかと思ったけど、はっきりと「・・・・。興味ないから好きにしていいよ」と言っていたのを思い出せたからよかった。妙な間はあったけど、信用はできそうだからこれからも協力してもらおうっと。前まではあの女が見張っていたから近づけなかったが協力者がいれば近づける。

狐の嫁入りはいつになるのかな?


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