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19話 秘密1

➖自宅(部屋)➖

 緋華さんではなく何故か伊月に起こされて少し困惑しながら体を起こすと緋華さんは僕と逆向きに寝ていた。お互いに疲れが溜まっていたのかもしれないのでもう少ししてから緋華さんを起こすことにした。伊月が部長さんを部屋まで連れて来た。話し合っていたことを僕に伝える為に家まで付いて来たらしい。


「それでどうするの」

「オカルト研究部の実績を全てまとめて理事長に叩きつける」

「いやそれだけじゃ弱いでしょ」


 理事長は実績を全て知っていてもおかしくはないだろうから「それで?」と言われてしまったらそれで終わりだ。それなら理事長と賛成している教師勢を納得させる材料がなければ無理でしょ。それを分からない訳ではないだろうから実績だけでどうにかしようと思っているんだろうな。もし僕らが入部したとしても次の入部希望者がいなければ、廃部になるだけだからどうしようか。


 退部した人達って今どうしているのかを知りたいんだけど知る方法って何かないかな? 碧兄さんに頼ってみるのもいいけど、他の誰かを今回は頼りたい。そういうのが得意な人っていないかなぁ。一人だけなら出来そうな人を思い出したけど協力してくれるかどうか。


 適任ではあるけど緋華さんと伊月は嫌がりそうだからどうしたもんか。何もしないでいるよりかはマシだしとりあえず聞くだけ聞いてみるかな。


「古村くんに協力してもらおうとおもんだけど」

「いやだ」


 予想通りだけどそれをしなきゃいけないと思うんだけど? 伊月にしてもらってもいいけどさ、人付き合いとかはうまいから適任だとは思うよ。伊月が嫌っているのは分かってはいるし、危険を避けているもの理解はしてる。古村くんの方が人脈は広い筈だからそっちの方がいいでしょ。古村くんだけと話した場合は断られると思うけどね。


「あの狐の人がいる」

「あ~妖狐さんですね。明日にでも聞いてみましょう」

「俺が連絡入れておこう」


 伊月って妖狐さんといつの間に連絡先を交換していたんだろうな。まあそれは別にいいとしてそろそろ三人は帰らないといけないだろうから緋華さんを起こすか。伊月は僕が緋華さんを起こそうとしたのを何故か止めた。いや、起こさないと帰れないでしょ。


「森前先輩は俺が送って行くとしてコイツは誰が送っていくんだ?」

「僕だけど」

「紫音に連絡を入れておくからそれまでここで大人しくしておけ」


 僕が頷くと伊月は部長さんと部屋から出て行った。時間を確認すると19時24分だった。1時間くらいは寝ていたのかな? まさか緋華さんまで寝てしまっていたとは僕は驚きだよ。疲れが溜まっていたんだろうけどさ、膝枕しながら寝落ちするってよっぽどでは。


 無茶させないようにしないといけないかと思いながら緋華さんの頭を撫でる。そういえば僕が寝る前に緋華さんって何か言ってなかった? 思い出せないんだけど、大事なことを言ったような気がするんだよね。緋華さんに聞けばいいだけの話なんだけど、おそらく秘密にしていることだろうから聞けないんだよ。今日のことで聞きたい事ができた。


「雨歌くん?」

「あっおはようございます」

「おはよう。それでこの手は?」


 頭を撫でているだけですよと言ったら飛び起きた。何故か顔を真っ赤にしている緋華さんが可愛かったのでまた頭を撫でたら意外な言葉が出てきた。「やめて」と言われたので頭に手を置いている状態で固まってしまった。拒絶されたことにショックを受けてしまった。


 この前も髪を撫でたけどいやだったのか。緋華さんがショックを受けている僕を見て慌てて「撫でられるのがいやなわけじゃないよ」と言ってくれたので僕は安心した。じゃあ何が嫌だったのかを聞く勇気はないので僕の部屋は静かになる。


「耳に手が当たらないよう撫でてくれると」

「頭は撫でませんよ」


 次は緋華さんがショックを受けてしまった。僕たちは言葉が足りなすぎるのかもしれないので、その辺はちゃんと今度話し合う事にしよう。緋華さんに「聞きたいことがあるので後でします」と言ったらホッとした。背筋を伸ばして僕の話を聞く体制になった緋華さんに対して僕は疑問に思っていたことを聞くことにした。


 僕が疑問に思っていたことは緋華さんと初めて出会った時のことだ。今思い出せば不自然過ぎることがいくつかある。伊月が言うのは緋華さんは小さい頃から頭がよく一度通った場所でも覚えていると言っていた。それに今日の部長さんとの言い合い? では緋華さんが隠していたことを口に出して怒っていたと落ち着かせる時に聞いた。


「緋華さんの“願い”って何ですか」

「君といることだけど」

「それは“カミサマ”に祈ったんですか」

「君といることは私が果たしたいの」

「初めて出会った時に名前を呼べたんですか」


 黙ってしまった。伊月の話で僕の名前が出てきたって言うなら分かるけど、当時はそんなに仲良くはなったので出てきてはいない筈なのになんで知っている? おばさんも僕のことを知らなかったみたいだったので知らないのは当たり前。どう知ったかは別に興味はないしそんなことは重要ではない。


 知られたくない秘密って言うのはおそらく僕に関係することだろうからここは聞いておいた方があとで緋華さんを落ち着かせる時に楽になる。普段の僕なら話したないのなら話さなくてもいいですよと言っていたんだろうけど、聞いておかなきゃいけないと僕の勘も言っている。


「それは……」

「聞いても引かないですよ」

「本当に?」

「本当です」


 緋華さんは深呼吸を一回して「その前から出会ってストーカーしてました」と言ってきた。僕は引かないって言ってしまったから引いてはダメだと理解はしているけども無理だった。え? いつ出会っていたのか全く分からないんだけど、どうしたらいいのかな。僕を見かけて一目惚れしましたって言うのなら分かるよ。


「覚えてないの?」


 覚えていないから今思い出そうと頑張っているんじゃないですか。何かヒントをくださいよヒントを。思い出そうと唸っていると緋華さんが「車に乗っている時に赤信号で止まっていたら君を見つけたの」って言ってきたので僕は質問するのをやめた。これ以上すると精神的にしんどくなるし緋華さんのヤバさをもっと知ることになる。


 これ以上知るのは流石に怖いからやめておく。質問に答えてくれたので頭を撫でる。耳に手が当たらないように気を付けながら撫でるのって少し難しいんだなと思った。


自宅リビング

 緋華さんの頭を撫で続けていたらご飯ができたらしく、リビングに降りてご飯を食べて今はリビングでゆっくりしている。緋華さんは紫音さんが迎えに来てそのまま帰って行った。濃かったような濃くなかったような気がする1日だったな。


「ただいま」

「父さんおかえり」

「・・・肩は大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ」


 痛みにはなれたので大丈夫かと聞かれれば大丈夫と答える。慣れればどうってことはないからね痛みはってのは強がりで慣れても痛いものは痛い。何もしていなくても血は出るし、少しでも動かせば激痛で涙が出そうになるしで大変ではある。


 正直言ってこの後のお風呂が凄く怖い。病院に連れて行かれそうになった時に行っておけばよかったと後悔を今しているくらいには。痛み止めが確かあった筈だから飲んでおこうかな。明日酷かったら病院に絶対に行こう。まあ僕が行かないって言っても無理にでも連れて行かれるなら自分から行こう。


「本当に大丈夫か? 顔色が悪いぞ」

「大丈夫なんだけど、お風呂に入るのが怖い」


 父さんと母さんに笑われた。父さんが笑いながら「風呂に入るのが怖いなら一緒に入ってやろうか」と言ってきたので丁重にお断りしたと同時にリビングのドアが勢いよく開けられてお風呂上がりの空が入って来て大きな声で言い放った。


「私と一緒に入ろ!!」

「アホか」


 僕はそう返してお風呂場に向かう。中学生になった妹と入るわけないじゃんか。妹と入らなきゃいけなくなるくらい怖いわけではないのでさっさと入りに行く。


➖???➖

―???視点―

 やっとここまで来た。彼が高校生になるまでは本当に油断ができずに気を張っていたけど、これから少しだけ楽にはなる。本来なら出会えていなかったのに会えて喋って生きていることを実感して想いが溢れてしまった。書いた小説では監禁をしたり束縛したりしていたけど、そんなことしたら即バレして終わりだ。彼を自分だけのモノにしたいのは本当だけど。


 それよりもライバルが増えてきたことが心配。今までは二人だけだったのに四人になってしまった。最後に私を選んでくれたらいいけど、流石に今のままでは選ばれない可能性もある。これからもっと増えてくるだろうしこの辺で対処をしておくべきかな。


 対処するにしても慎重にしないといけない。大胆に動けば彼を守っている人たちが出てくるから害を出さずに敗北させる必要がある。重婚が可能なので提案してみるのも手ではある。受け入れてくれるかは分からないけど、どうしても彼と結ばれたい。


 彼に気になり始めたのはお姉ちゃんがやっていたゲームを偶々見たことがきっかけだった。ゲーム画面では彼が燃える家の中で笑みを浮かべて立ち尽くしていたのが見えて衝撃を受けた。私に対して愛していると言っているような気がして体に電撃が走った。何度か告白された中に愛していると言われた時があったが不快にしか感じなかったのに彼の言葉だと心が躍るような気がした。

私の勢いに引き気味のお姉ちゃんにゲームのタイトルを聞き出して彼に関わるストーリーは全てクリアした。彼は私達と似たような環境に居たことが分かりますます彼に興味が出てきた。


 1番のライバルである紫藤緋華は彼の手帳を持っていた。緋華は彼から手帳を渡されたと言っていたが捨てたのを拾って持っているだけで預かったわけではなかった。手帳の中の内容は今とほとんど変わらないが1つだけ違うのは彼の手帳の中に“紫藤緋華”の名前がなかったということだけだ。大勢のプレイヤーが知らないことを知っている私がこの世界では有利だと思った。ちなみにお姉ちゃんは知っていた。

何故なら彼女の好感度を上げるイベントの時は1度もミスは許されないのだ。


 バッドエンドしか用意されていないのでは? と思われるくらいには難しい。1度でも選択肢を間違えると幼馴染で婚約者である筈の伊月までも簡単に殺してしまうくらいに危ない。私も何度も殺されたので半分諦めていた。彼の為と思い頑張って折れかけていた心を立て直し彼女のストーリーをクリアさせたと思っていた。


 最後の最後で罠があった。彼女の日記で最大の秘密を知ってしまった主人公は殺された。秘密というのは彼の家に火をつけたのが緋華だった。


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